第85話【底力】
「ぐう!! き、貴様……」
オルトが振り返るとザックは四つん這いで右手を突き出し、不敵な笑みを浮かべていた。
「くっくっく……軽くて良いナイフだろ? 殺傷能力こそ低いが、気付かれずに攻撃するにはもってこいだ、気を抜いてアークを解いたのがまずかったなぁ」
ザックの投げたナイフはアミの使っていたナイフであった。
「くう……」
オルトに刺さったナイフから大量の血が噴き出した。
「へっへっへっ……形勢逆転だなあ、それじゃあ一気に止めといくかあ」
するとザックは先程までとは比べ物にならない、浮かび上がる程のアークを放出すると、オルトへ突撃した。
「くうっ!!」
そしてオルトもアークを放出して応戦した。
二人は剣撃戦を繰り広げると、今度はザックが圧している。
「ひゃははは!! どうした隊長さんよ!! 随分と動きが鈍いじゃねえか!? なんかあったか?! ひゃははは!!」
「くうっ!!」
するとその時、オルトの傷から更に血が噴き出し、動きが鈍ったところでザックはオルトを蹴り飛ばした。
「ぐうっ!!」
オルトは飛ばされながらも体勢を立て直し着地したが、正面を向くとザックが再び襲い掛かってきていた。
「うをおおおお!!!!」
オルトはアークを高め、ザックへと剣からアークを放った。
「むっ!? かあああ……はああああ!!!!」
するとザックは大量のアークを放出してオルトのアークを反らせた。
「なに!?」
「へっ、恐れ入るぜ……その身体でまだそんな攻撃が打てるとはな、だが……だいぶ威力が落ちてるじゃねえか、くっくっく……」
「くっ!!」
するとザックはおもむろに剣を振り、小さいながらもアークを放った。
「!!?? 速い!!」
ザックの放ったアークはオルトの膝当てに当たり、オルトは体勢を崩した。
ザックはその隙に上部へ跳躍すると、オルトの後頭部に膝を落とした。
「ぐあああああ!!」
オルトの傷口から更に血が飛び散った。そしてオルトが剣を振ると、ザックはすぐさま距離を取った。
「へへ!! 大丈夫かー? 傷口が広がっちまったかい?」
「くっ、ぐううぅ……」
オルトは自身に刺さっているナイフを掴んだ。
「おっと、抜かない方が良いんじゃねえか? 血が飛び出すぜ?」
するとオルトは流れ出る血ごとナイフを凍らせた。
「ぐぐぐぅ…………」
「おいおい、無茶するねえ……でも嫌いじゃねえぜ」
ザックは不敵に笑った。
「そういう根性あるやついたぷるの……」
ザックはオルトへと突撃し殴りつけた。
「ぐうっ!!」
そしてザックはその後も短剣は使わず、殴る蹴るでオルトを痛めつけた。
「ひゃはははははー!!!!」
オルトの顔は次第に腫れ上がり、口や鼻から血が飛び散った。
「どうした!? 手も足も出ねえじゃねえか!? 天下のガルイードの軍隊長が聞いて呆れるぜー!! ひゃはははははー!!」
「ぐぬうう!!」
「!!??」
その時、オルトがザックの拳を右腕で受け止め、左拳をザックの腹部に叩き込んだ。
「ぐふうう!!」
そして腹を抑えて膝を落とすザックに剣を振った。
「ぐっ!!」
ザックは急いで後方に飛び避け、転がりながら距離を取った。
「くはっ、……へっ……そうそう遊ばせてくれるそうなタマじゃねえか……」
ザックは立ち上がり再びアークを放出した。
「遊ばせてくれねえってんなら、そろそろ終わりにさせてもらうぜぇ」
「はあはあはあ……」
オルトもアークを放出させた。
そして二人は飛び出し、再び激しい剣激戦を始めた。
「はああああ!!」
「うをおおお!!」
互いに一歩も引かずに攻撃を出し続けるも、次第にオルトの手数が上回り始めた。
「うをおおおおああああ!!」
オルトは鬼の形相で剣撃を繰り出し、ザックはその一撃一撃で身体を大きく揺さぶられ、一手一手が後手になってきていた。
「くっ!! ぐうっ!! この!! 馬鹿力があ!!」
そしてオルトの剣を受けたザックはその力を利用して回転すると、ザックの顔に蹴りを当てた。
「ぐっ!!」
そしてその衝撃で後ろへ後退したオルトへ向けザックは剣を振り、高速のアークを二発放った。
「ぐあああ!!」
オルトはアークをモロに受け、飛ばされ地面に倒れた。
するとオルトに刺さったナイフの氷が割れ、再び血が吹き出した。
「うがあああああ!!!!」
それを見たザックは少しホッとしたような笑顔を見せた。
「へっ、へへっ!! たいちょー……流石にもう限界だろう?」
「……ぐぐぅ……はあはあはあ……」
オルトは立ち上がった。
「……ちいっ、無理すんなって」
「はあはあはあ……う、うをおおおおお!!!!」
するとオルトは再びアークを放出させた。
「なっ!? ……てめえ……まだそんな力が……」
ザックは短剣を握る手に力を入れるとアークを放出させた。
「へっ!! いいぜぇ……そんなに死にてえってなら……お望み通り、殺してやるよ……」
「はあはあはあ……」
二人は構えた。
「…………」
「…………」
「はあああああああ!!!!」
「うをおおおおおお!!!!」
そして互いに飛び出し、二人の剣が重なったその瞬間。
晴天の空から雨が降り始めた。




