第81話【良き友】
「はああああああ!!」
「!!」
その時、ゼレルがアークを放出させサムに切りかかった。
「くうっ!!」
サムはなんとかギリギリで剣を避けると後方へ大きく飛んだ。
するとサムの胸部の服が切れ血が滲んだ。
「ちいっ!!」
「……」
そしてサムは自身の足を確認した。
(これは、マディーリング!?)
ゼレルは笑みを浮かべた。
「はあはあ……ははっ! マディーリングを嵌められた者は体内でアークを燃やせなくなる、つまり自身でアークを増幅させる事が出来なくなるということ! これでもう戦闘用アークは使えまい!」
「くっ! はあ!」
サムは嵌められたマディーリングを剣の柄で叩き始めた。
「無駄だ! マディーリングはアークの力で無ければ破壊できない! 物理的な力では絶対にな! アークの使えないお前になら勝機はある!」
ゼレルは構えた。
「ほざけ! その傷と双剣を失った状態で私に勝てるか!」
「うをおおおお!!」
ゼレルはアークを放出させながらサムへと突っ込んだ。
ゼレルの一撃はサムの態勢を大きく崩し、二撃三撃と攻撃を続けた。サムは防御に手一杯の中、一瞬の隙を見つけ剣を振った。
「はあっ!!」
しかしゼレルはそれを躱すと瞬時に回り込み、サムの側面へと剣を振った。
「ぐあっ!!」
サムはなんとか剣で受けるも吹き飛ばされてしまった。
「うをおおお!!」
ゼレルはサムを追撃した。サムはなんとか致命傷こそ避けるも、一方的な展開になってきた。
そしてサムの身体には切り傷が増えてきた。
「はあはあはあ、くそっ!」
しかしゼレルは浮かない顔をしている。
「…………笑うか……?」
「……む?」
「笑うかと聞いている……」
「なんだ? どういう事だ? なにを言っている?」
「マディーリングを嵌められ、私を姑息な男と笑うかと聞いている!!」
サムは少し驚いた顔をしていた。
「愚問を……」
「なに!?」
「この足にマディーリングを嵌められたのは、私の驕りが招いた結果だ。命を懸けた戦いに卑怯もへったくれもないだろう。お前はただ、兵士としての責務を全うしている……ただそれだけの事だ、笑うどころか、驕りという自分の欠点に気が付けた、むしろ感謝している」
「…………お前……お前まさか、元兵士か!?」
「…………古い話だ」
「そうか……もし……もしも貴様と同じ王国に生まれ、同じ軍に入っていたならば 、良き友となれていたかもな……」
サムは少しはにかんだ。
そしてゼレルは構えた。
「名を、聞いておこう……」
そしてサムも構えた。
「サム・シャモット、お前の名は?」
「ゼレル・タイルド」
「……いざ……」
「勝負!!」
二人は飛び出した。
サムとゼレルの剣がぶつかり合うとやはりサムが圧されてしまう、しかしサムは地面に背中から転がり、ゼレルを上に蹴り上げた。
「はああ!!」
サムはゼレルを追い、空中のゼレルに双剣を連撃した。
「ぐをおお!!」
ゼレルは何発か食らうも、アークで守られている為、致命傷にはなっていない。
ゼレルは一回転して着地するとサムへと飛び出し剣を振った。サムは剣で防ぐも吹き飛ばされ、家屋へと突っ込んだ。
しかしすぐさま家屋から飛び出しゼレルへ向かうと、一本の剣をゼレルへと投げた。
「くう!」
ゼレルは驚くも剣を弾くと前にはサムの姿がなかった。
「はああああ!!」
サムはゼレルの上部へ飛んでいた。そして剣を両手で掴み振り落とした。
「ぐあああああ!!」
サムの剣はゼレルの肩口へと入ったが、深くは切れずに止まってしまった。
「うがあ!!」
そしてゼレルが剣を振るとうまく躱し、ゼレルを蹴り飛ばした。そしてその隙に落ちた剣を拾うとすぐさまゼレルを追い、双剣を連撃した。
「ぐおあああ!!」
ゼレルは攻撃を受けながらも強引に剣を振った。サムはその剣を受けると吹き飛ばされるが 一回転してうまく着地した。
「はあはあはあ……アーク無しでここまで戦えるとは、さすがだ」
「はあはあはあ……お前こそ、そろそろ限界なんじゃないか? 随分と動きが鈍っている」
「ふっ、そうだな、この出血……もうそう長くは持つまい……そろそろ勝負を決めさせてもらうぞ!!」
ゼレルは再びアークを放出させて飛び出した。サムが構えるとゼレルは直前で方向を変え、側面から剣撃を放った。
「ぐあっ!!」
サムは吹き飛ばされるもすぐに体勢を立て直した。しかしゼレルがすぐさま飛び込み再び剣を振った。
「うをおおお!!」
サムは両剣を重ねてゼレルの剣を受けた。剣の衝撃に今度は踏みとどまり、その場で激しい剣撃戦が始まった。
ゼレルは胸部からの出血でだいぶアークが弱まり始めていた。
(くっ……出血が酷い……アークに集中が……)
その時、一瞬だがゼレルのアークが途切れた。
「はあああ!!」
サムはそれを見逃さず、その一瞬でゼレルの剣を片方の剣で弾くと、もう一方の剣で切りつけた。
「ぐはあああ!!」
「うをおおお!!」
サムは更に追撃で剣を振った。
しかしゼレルは意識を保ち、アークを放出させるとサムの剣を弾いた。
「おおおおお!!」
そして態勢を崩されたサムへと剣を振り落とすと、サムは剣を弾かれた勢いを利用し一回転して迎え撃った。互いの剣が弾けるとゼレルはすぐさま次の攻撃に移ったが、サムは体勢を崩されていた。
ゼレルが剣を振り落とすとサムは崩れた態勢のまま剣を振った。そしてサムの剣が弾かれ飛んだ。
「これで!!」
ゼレルは横に一回転すると剣を水平に振った。
「終わりだあ!!」
剣はサムへと迫るが、もう片方の剣で迎え撃つには間に合わない。
「!!!!」
パキッ!!
「なにっ!?」
その時、マディーリングが破壊された。
サムは足に嵌められたマディーリングでゼレルのアークを纏った剣を受けたのだった。
「はあああああ!!」
その瞬間、サムから大量のアークが放出された。
「うがあああ!!」
ゼレルはアークの圧力によって吹き飛ばされた。
「うぐぐぅ……ま、まさか、マディーリングで私の剣を受けるとは……」
「はあはあはあ……うぐっ!!」
サムはマディーリングの取れた足に激痛を感じた。
(折れたか……)
ゼレルは剣を使い辛くも立ち上がった。
「はあはあはあ……」
「もう諦めろ、勝負は着いた、アークを解放した俺に勝つすべはもうお前にはない」
「はあはあはあ……ふっ……そうかもな……だが、私に与えられた任務はお前達を倒すこと、逃げることなど、任務には入っていない……私は、どんな状況に立たされようとも、私の責務を全うする」
「ゼレル……」
「お前ならわかるだろう……兵士として生まれ、兵士として生きるものが、死の間際に、兵士でなくなることなどあってはならぬ」
「…………」
「サム・シャモット、相手がお前で良かった……これが私の最後の攻撃だ、手加減は無用、全力で迎え撃て」
ゼレルは構えた。
そしてサムも構えた。
「うおおおお!!」
ゼレルはアークを放出させてサムへと突撃した。
そして渾身の力で剣を振り落とした。
「おおおおおお!!」
サムがそれを剣で弾いた時、ゼレルの剣は折れた。
「はああああああ!!」
そしてサムは剣を返しゼレルへと振り切った。
「ぐあああああ!!!!」
ゼレルは血しぶきを上げて倒れた。
「はあはあはあ……」
サムは倒れたゼレルを見た後、空を見上げた。
「……良き友、か……」




