第80話【双剣】
――サムVSゼレル
サムとゼレルは互いに剣を構え、摺り足でジリジリと距離を詰めていた。
そしてサムが足の親指分ほど足を前に出した瞬間、ゼレルが飛び出した。
「きええええぃぃい!!」
ゼレルが縦横無尽に剣撃を放つとサムは全て打ち払い、二人は弾ける様に距離を取った後、互いに渾身の一撃を放ち、鍔迫り合いで止まった。
するとゼレルはサムの剣を受け流し、サムは前方向に体勢を崩した。ゼレルはサムの背中に剣を振ったが、サムは深くしゃがみ込み躱すと、そのまま回転してゼレルの足へと剣を振った。
ゼレルが飛び上がって剣を避けると、落下の力を利用してサムへ剣を振り落とした。
サムはそれを剣の腹で受けると、足を突き出しゼレルの腹部を蹴った。
「ぐうっ!!」
ゼレルは後方へ飛ばされるも足を引きずりながらこらえた。
「!!」
そして顔を上げ正面を見ると眼前にサムが迫ってきており、剣撃が放たれようとしていた。
「くうっ!!」
ゼレルは何とか剣で受けるも、その後主導権を握られ防戦一方になってしまう。
そしてサムの剣がゼレルの肩あてに当たると、肩あては弾け飛んだ。するとゼレルは後方へ大きく距離を取り、サムはそれを追うことはしなかった。
サムは首を回し、ゼレルへ声を掛けた。
「そろそろその腰にあるもう一つの剣を抜いたらどうだ? 双剣使い、なんだろ? 出し惜しみをしていると、本気を出す前に死ぬことになるぞ」
「……どうやらそのようだな、だが、双剣はお前もなんだろう? 俺が抜くならお前も抜け」
ゼレルは剣を抜き、双剣に構えた。
「ふっ……抜かせて見るんだな」
サムは抜かずに構えた。
「なめるなああ!!」
ゼレルは突っ込み双剣を振った。
ゼレルの双剣はあまりの速さに剣が四本にも八本にも見えるようであった。しかしサムはその攻撃をも剣で弾き、剣で捌き切れない攻撃は身体を捻り避けた。
「うをおおお!!」
ゼレルは手を止めることなく攻め続けた。次第にサムは後方へと押され始めたが、それでもゼレルの猛攻をすべて捌ききっている。
そしてゼレルは剣を重ねてサムへと振り落とした。サムはそれを剣の腹で受けるも、今度は蹴り返す余裕がない。
「ぐぐぐうう……」
「はあああああ!!」
ゼレルが剣に力を込めるとサムは咄嗟に横へと受け流し、身体を横に回転させながらゼレルへと剣を振った。ゼレルは顔を引きそれを躱し、サムへと剣を振った。
サムはそれを大きく後方へ飛び避けた。するとゼレルの頬から血が流れ、ゼレルはその血をぬぐった。
「ちぃっ……」
「双剣になった途端に動きがよくなったが、それでもなんとか互角ってところか、同じ双剣使いということもあり、興味本位で対戦してみたは良いがこんなものか……」
ゼレルはサムの強さに驚きを隠せずにいた。
(強い……身体の動きや剣捌きはもちろん、なにより場馴れしている……)
「あまりここに長居するつもりもない、そろそろ終わりにさせてもらうぞ」
そう言うとサムは剣を構えた。
「くっ、やってみろ!!」
ゼレルは飛び出すとまたも双剣を振い、激しい剣撃戦が始まった。ゼレルが片手で振る剣に対し、サムは両手で剣を握りはじき返していた。
その為、サムが剣を弾く度にゼレルの剣は大きく弾かれ、その隙にサムは身体の回転等をうまく利用しながらゼレルの双剣を裁いていたのだった。
「くをおおお!!」
「ふんっ!!」
そしてゼレルが右手の剣をサムへと振り、サムがそれを迎え撃った瞬間、ゼレルの身体からアークが放出された。
するとサムはゼレルの剣を弾くことが出来ず、むしろ剣の圧力により態勢を崩されてしまった。
「なにっ!!」
「うおおおお!!」
ゼレルがすかさず左手の剣を振るとサムも急いでむかえ討つが、その衝撃はすさまじく、なんとか受け止めたがはじき返すことは出来なかった。
「はああ!!」
そしてゼレルはもう片方の剣をサムへと振った。
「くっ!!」
するとサムはもう一本の剣を抜きそれを防いだ。
そしてサムもアークを放出させるとゼレルの双剣をはじき返した。剣を弾かれたゼレルは距離を取りニヤリと笑った。
「やっと、その気になったか」
「……私を双剣にさせたことは誉めてやろう、アークの質も良い、隊長各だけのことはある」
「ずいぶんと……上から言ってくれるじゃないか」
「……ふっ、上なんだよ、途方もなくな……」
「なんだと?」
するとサムは腰を深く落とし構え、アークを放出させた。
「はあああああ!!」
「なにっ!?」
サムが放出したアークは凄まじく、辺りの家や瓦礫を吹き飛ばすほどであった。
「な、なんてアークだ…」
ゼレルは生唾を飲んだ。
サムはアークを解くとゼレルに言い放った。
「わかったか、お前には到底出し得るアークではない」
「くっ、お前はいったい…… いったいどれ程の修練を積んだというのだ!!」
「修練……? 強い兇獣と戦い、勝ち続けてきただけだ。お前らのような温室育ちとは違う」
「ぐうぅぅ……」
「これでわかっただろう、無駄な事はやめて黙ってサオという女を引き渡せ、お前も悪い兵士ではない、殺すには惜しい」
「ぐううぅ……そ、そんな、そんなわけにいくかあ!!」
ゼレルは再びアークを放出させてサムへと飛び掛かった。
サムもアークを放出させるとゼレルの攻撃をすべて避けた。
「なに?!」
そしてサムが左の剣を振るとゼレルは剣を重ねて両剣で受けた、しかし剣圧に圧され吹き飛ばされてしまった。
「ぐっ!! くそ!!」
ゼレルが体勢を立て直してサムの方を見るとサムは剣からアークを放っていた。
「う、うをおおおあああ!!」
ゼレルは迫りくるアークを両剣で受けるが吹き飛ばされ、家屋に突っ込んだ。サムがゆっくり近付くと、ゼレルは家屋から飛び出し再び剣を振るった。
しかしゼレルの剣は全く当たらず、サムは剣を軽く一振りし、またもゼレルを吹き飛ばした。
「くっ! くそおお!!」
ゼレルはすぐに立ち上がり、再び剣を振るがやはり当たらない。そしてサムは剣を握る手に力を入れ、ゼレルの剣を弾いた。
するとゼレルの剣は吹き飛び、地面へと刺さった。
「なっ!! っくそお!!」
ゼレルは残るもう一本の剣を両手で持つと渾身の力で振った。しかしそのひと振りも片手で弾かれ、サムはもう片方の剣でゼレルを切りつけた。
「ぐあああああ!!」
するとゼレルの胸から血しぶきが飛び、ゼレルはサムの足元へ前のめりに倒れた。
「そこまで深くは切っていない、お前なら一命は取り留めるだろう」
「ううぅぐ、ぐうう……」
かろうじてゼレルの意識は保たれていた。
「サオという女を引き渡す気がないならそこで大人しくしていろ、あとはこっちで勝手に探す」
そう言うとサムは双剣を鞘に納めた。
「く、くそう……」
そしてサムがその場を去ろうとしたその時。
カシャン。
サムの足首に何かが嵌られた。




