第79話【居場所】
カラは無数の切り傷を負ったが、致命傷にはなっていなかった。
カレットはそんなカラを見て不敵な笑みを浮かべていた。
「く、くうぅ……」
カラはなんとか立ち上がると棒を構えた。
「はあはあはあ……」
そして棒を振り上げカレットへ落とした。しかしカレットには当たらず、何度も何度もカレットへと棒を振り落とすがことごとく避けられた。
「はあはあ! はあはあ!」
「お、お母さん! もう、もういいよ! 逃げよう!」
「はあはあ! はあはあ!」
するとカラは腕に巻き付けていたロープを口でちぎって解いた。
「ラリィ! あなた一人で逃げなさい!! ここは母さんがなんとしてでも食い止める!!」
「そ、そんな!! いやだよ!! 行くなら母さんも一緒に!!」
「いいから行きなさい!!」
「いやだ!!」
そんな言い合いをしている二人にカレットは飛び掛かった。
「!!」
カラは咄嗟にラリィを手で押した。
バチンッ!!
二人は弾け、カレットの攻撃は避けたが、カラの手は焼けただれた。
「くうっ!!」
「母さん!!」
するとカラに近付こうとしたラリィにカレットが襲い掛かった。
「くっ!」
カラは棒をカレットに投げつけた。
カレットは前のめりに倒れるがすぐに起き上がり、怒りの形相でカラを見た。
そしてカラへと襲い掛かった。
「グルアアア!!」
「ああああっ!!」
カラは身体を切り刻まれ地面に倒れた。
「お母さん!!」
そしてカレットは大きな牙をむき出し、カラへと迫った。
「ぐうっ!!」
カラはなんとかカレットの牙を掴み止めたが圧されている。
「ぐうううう……!!」
その時、ラリィがカレットへ突進した。
「うああああ!!!!」
バチバチン!!
「ギャラオ!!」
「うわあ!!」
ラリィとカレットは弾け飛んだ。
「ラリィ!!」
カレットはすぐさま起き上がり、今度はラリィに向かい飛び出した。
ラリィが起き上がり顔を上げると、すぐ目の前には爪を振り下ろそうとするカレットがいた。
「う! うわああ!!」
そしてカレットの爪が振り下ろされたその瞬間、カラがカレットを押した。
バチンッ!
そしてカレットの爪は深々とカラの胸を切り裂いた。
「くはあああ!!」
カラは胸から血しぶきをあげ倒れた。
「!!!! お母さぁぁああんんん!!!!」
そしてカレットの二撃が更に振り落とされんとしていた。
「うあああああ!!」
ラリィは飛び出し、カラットへ抱きつき押し倒した。
バチバチ!! バチバチ!!
「ギギャアアア!!」
カレットの全身に電撃が走り、それでもなおラリィはカレットを離さなかった。
「うあああああああ!!!!」
そして更に大きな電撃を発すると、ついにカレットは倒れた。
「はあはあはあ……」
ラリィは多くのアークを消費した為、その場に倒れこんだ。
「はあはあ……お、お母さん……」
ラリィは朦朧とする中、身体を引きずりながらカラの元へと向かった。
「はあはあはあ……」
カラの前までたどり着くと、カラの胸からは大量の血が流れ、カラは動かなかった。
「あ、ああ……お、お母さん、お母さん!!」
ラリィはカラへ叫んだ。
すると意識を何とか保っていたのか、カラはラリィを呼んだ。
「ラ、ラリィ……」
「お母さん!! よかった!! しっかりして!! 今誰か呼んでくるよ!!」
「ラリィ……王国を、出るのよ……」
「うん、そうだね! 二人で、二人で一緒に出よう! だからしっかりして!!」
「ラリィ、この世界はね……あなたの見てきた世界だけが、この王国だけが全て、
じゃないの……」
「う、うん、わかったよお母さん、もう喋らないで!」
「あ、あなたが、あなたが大きくなるまでは、私があなたの世界になってあげていたかった……」
「お、おかあさん……?」
「でもごめんなさい、母さん、もう……かはっ!」
カラは口から血を吐いた。
「お母さん!!」
「ラ、ラリィ……この世界は広いわ……か、必ず、必ずあなたを受け入れてくれる世界はある……王国を出て、あなたは……あなた自身で、居場所を見つけて……大丈夫……あなたなら出来るわ、絶対に、絶対に……」
「あああ……お母さん……いやだ、いやだよ……」
「ラリィ……あなたを、あなたをこんな身体に生んでしまって、本当にごめんなさい……触れてあげられなくて……抱きしめてあげられなくてごめんなさい……どうか、どうかあなたの世界が見つかることを、母さんは願ってる……あなたの心の中には、いつも母さんはいるから……ラリィ…………大好きよ…………」
そしてカラは目を閉じ息絶えた。
「あ、あああ…………そんな……い、いやだ、いやだあああ!!!! お母さあああん!!!! うわああああ!!!!」
ラリィは横たわるカラの身体に振れた。
パチ、パチパチ。
そしてカラの身体を起こすと、強く抱きしめた。
「うあああああぁぁぁああああああ!!!!」
ラリィが初めて母を抱きしめたのは、残酷にも母の亡骸であった。
―――― 現在
リシャルドはラリィの放った無数の電撃を飛び避けた。
ラリィはリシャルドを追うと剣撃を連打した。
「俺にそんな過去はない!! いい加減黙れええ!!」
リシャルドはラリィの剣激をすべて躱し、逆に隙を突き剣を振った。
剣はラリィの頬を掠り、ラリィは距離を取った。
「自分の過去を否定するか、器が知れたな……戦闘における能力こそ常人を超えるが、結局中身は子供、母を亡くしたあの頃と、なにも変わっていないという事か」
「う!! うるさあああい!!」
ラリィは再び飛び掛かるが、冷静さを失った状態であるがゆえに、剣筋は全て読まれ躱された。
そしてリシャルドはラリィの剣を躱しながら、勝機を確信していた。
(いくら身体能力やアークが高かろうがやはり子供は子供、精神はまだまだ未成熟だ、このまま動揺をさせ続ければ勝機は生まれる!!)
そしてリシャルドはまたも隙を突き、ラリィの意識の外から蹴りを当て吹き飛ばした。
「ぐあ!! くそおお!!」
「君の母上も選択を誤ったな、あのままアダプター王国で監視させておけば良いものを、こんな怪物を世に解き放つとは……」
「なに!? きっ!! 貴様ぁああ!! 母さんを!! 母さんを侮辱するなあああ!!」
ラリィは大量の電撃を自身に纏い、リシャルドに飛び掛かった。
リシャルドは剣を構えた。
(うまくいってくれよ!!)
ラリィは剣をリシャルドへと振り落とした。
するとリシャルドはラリィの剣を受けた。
「なにい?!」
「はああ!!」
リシャルドは剣を返し、ラリィの腹部へ横なぎに剣を振った。
「くうっ!!」
ラリィはそれをギリギリ躱すが擦っており、腹部から鮮血が飛んだ。
「な、なぜ電撃が流れない!?」
リシャルドは剣先をラリィに向け答えた。
「知らなかったのか? 氷は電撃を通し辛いんだ」
「なにぃ?!」
ラリィに向けられた剣は氷で覆われていた。
「これで、君の剣を受けることが出来るよ、もちろん、まだ多少の痺れはあるがね」
「くうっ!! そ、そのくらいで、 調子に乗るなああ!!」
ラリィが再び飛び出し剣撃を乱打するが、リシャルドは全てはじき返し、ラリィを逆に切りつけた。
「ぐはっ!! くうっ!! はあはあ!!」
ラリィは地面に片膝をついた。
「得意の電撃も通用しない今、君に勝機はない、君の母上の為にも、これ以上罪を大きくするな」
「か、母さん……」
ラリィは手で胸を掴んだ。
「こ、この力は……」
「むっ……?」
バチッ! バチバチッ!!
ラリィの全身から再び電撃が流れ始めた。
「この力は母さんが僕に与えてくれたものだ!! この力は、僕と母さんの繋がり……たとへ通用しなくても、僕はこの力で戦う!! 母さんと、母さんと共に戦い続ける!! そして僕は僕の居場所を守る!! うをおおおお!!」
ラリィの全身からは大量の電撃が放出され、その電撃は渦となってリシャルドへと迫った。
「な、なに!! くううう!! フリズヘルム!!」
リシャルドは剣を手放すと両手を地面に当て、氷の壁で電撃から自身を守った。
電撃は氷の壁に当たったが、勢いは止まらなかった。
「うをおおおおおお!!!!」
ラリィは更に電撃を強めた。
「くっ!! ぐううっ!!」
リシャルドも必死に氷の壁にアークを流し続けた。
「うをあああああああ!!!!」
「ぐうううあああああ!!!!」
ピキンッ!
その時、氷の壁にヒビが入った。
「な!?」
「うわあああああ!!!!」
そしてラリィは渾身の力で電撃を強めた。
するとついには氷が砕かれた。
「なにいいい!!」
その瞬間、ラリィは意識を失った。
「うぎゃあああああ!!!!」
そしてリシャルドは電撃を受けた。
「が、あががあ……」
リシャルドは全身焼けただれ、 前のめりに倒れた。




