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インヘリテンス2  作者: 梅太ろう
77/85

第77話【心と心】

 ――アダプター王国西部

 

 ラリィとその母親カラは、小さなボロ屋で暮らしていた。


「ほらラリィ、出来たわよ、お食べ」


「うわぁ、おいしそう! いただきまーす!」


 ラリィはカラの作った料理をおいしそうに食べていた。


 カラはそんなラリィの顔を少し悲しそうな目で見ていた。


「ラリィ……もうこれからはあまり家の周りを離れちゃだめよ……」


「う、うん……」


 ラリィの顔や腕には傷がついていた、カラの帰りが遅かった為、カラを探して王国中部へと行った際に、王国民に石を投げつけられたからである。


「ラリィ……」


 カラはラリィの傷ついた顔にそっと手を当てようとした。


「あっ……」


 しかしラリィは咄嗟にその手を避けた。


「お、お母さん、明日もお仕事?」


「……うん、でも明日はなるべく早く帰るから、心配しないで待っててね」


「わかった、頑張ってね!」


 カラは微笑んだ。


 翌日、ラリィは母親の留守中、家の裏に流れる川のほとりで石を投げていた。そんな中、ラリィは自分を忌み嫌う王国民たちの罵声を思い出した。








 ――――


「うわ! 痛え! なんだこのガキは!? 気味が悪いぞ!」


「ほら! あの子には近付いちゃ駄目よ!」


「悪魔だ! 悪魔の子なんだ!」


「悪魔の子はこの王国から出ていけ!!」


 ――――







「うぅ……」


 ラリィは石を川に向かって思い切り投げた。


「!!!!」

「!!!!」


 そんな時、どこからか悲鳴が聞こえてきた。


「え?」


 ラリィが悲鳴のした方へと向かうと、そこには野良犬に襲われている小さな女の子がいた。


「いやああああ!! あっちいってええええ!!」


「ヴヴヴゥゥゥウウ!!」


 野良犬は腹を空かせているのか、よだれを垂らし今にも飛び掛かりそうな勢いであった。


「あ、ああああ……」


 ラリィはその状況を見ると足を震わせた。


「ヴガアア!!」


「いやあああ!!」


 その時、野良犬は女の子に飛び掛かった。女の子はなんとか横に避けたが転んでしまった。


「あぐう!!」


「ヴグゥゥゥ……」


 野良犬は再び構えた。


「う、ううう……うわああああ!!!!」


 その時、ラリィが声を上げて野良犬へと向かっていった。


「!!??  ガウアア!!」


 野良犬はラリィの突進を躱すと、ラリィに飛び掛かった。


「うわああ!!」


 ラリィが咄嗟に腕で自身を守ると野良犬はラリィの腕に噛みついた。


 バチバチ!!


「ギャウウンン!!」


 すると野良犬が噛みついた瞬間に電撃が走り、野良犬はその場に気絶した。


「はぁはぁはぁ……」


 呆然とするラリィに女の子は声を上げた。


「……すごおい!!」


「え?」


「こんな怖い動物倒しちゃった!!」


「え、あ、ああ……」


「あ、腕、怪我してる……」


 女の子がラリィの腕の怪我に触れようとすると、ラリィは咄嗟に腕を引き、女の子からも距離を取った。


「へ、平気だよこれくらい……」


「本当に……?」


「うん……」


「そっか、助けてくれてありがとう! 私はフリル! えーと……六歳!」


「……ぼ、僕はラリィ、八歳」


「八歳……お兄ちゃんだね! お兄ちゃんはここでなにしてたの?」


「なにって……川に石投げてた……」


「川に? それって面白い……?」


「別に、面白いからやってたわけじゃなくて……」


「ふーん……」


 するとフリルはおもむろに石を手に取り川へと投げた。フリルの投げた石は弧を描き、川の手前へと落ちた。


「あれ? えへへ、届かなかった」


 するとラリィも石を取って川へ投げた。すると石は三回跳ねた後、川へ沈んだ。


「うわああ!! すごいすごい!! 石が跳ねたあ!!」


 フリルは目を丸くして飛び跳ねた。ラリィは少し戸惑いながらも、フリルの笑顔を見て少し心が軽くなったのを感じた。


「……跳ねやすい形の石があるんだ」


 そういうとラリィは指を差した。


「その石とか……」


「え? どれ? これ? これ?」


「うん、それ」


「これね! いよーし! えい!」


 するとフリルの投げた石はまたも弧を描き、川の手前で落ちた。


「あれ?」


「……こうやって投げるんだよ」


 ラリィは石を投げて見せた、すると石はまたも川を跳ねた。


「わあー! すごーい!」


 そして二人は暫く川に石を投げて遊んだ。






 ――――


「……フリルはどうしてこんなところに一人でいたの?」


「うーんとね……あっちに学校っていうところがあって、ママと二人でそこの偉い人と話に来たの! ママがその偉い人と二人で話をするからって、だから待ってたら、川が見えたから来たの!」


「そうなんだ……じゃあ、お母さん心配してるんじゃ?」


「あ!! そうだ!! 帰らなきゃ!!」


 フリルは急いで立ち上がると走り出そうとしたが、動きを止めラリィの方を振り向いた。


「あのね、私その学校ってところに通うの! お兄ちゃんも一緒に通おうよ!」


 フリルは手を差し出した。


「…………」


 しかしラリィはその手から目線を外し俯いた。


「僕は……いいよ……」


「え? なんで? 一緒に通おうよ! きっと楽しいよ! お友達もいっぱい出来るってよ! ねえ! 一緒に行こうよ!」


「僕は学校なんか通わない! 友達もいらない!」


 ラリィが声を荒げるとフリルは少し驚いた。


「あ、ご、ごめん……」


「う、ううん……」


「本当に……ごめん……」


「うん、大丈夫……」


「……ほら、お母さん心配してるだろうから、早く、戻りな……」


「うん……」


 フリルは駆けだした。


「!?」


 するとフリルは再び足を止め、ラリィの方へ振り向いた。


「お兄ちゃん! また、来て良い? また、遊んでくれる?」


 ラリィは少し驚いた表情を浮かべながらも返事をした。


「う、うん、うん……」


 フリルはニッコリと笑った。


「じゃあラリィお兄ちゃんまたねえ!!」


 フリルは手を振りながら駆けていった。






 ――――





 その日の夜、ラリィは上機嫌でカラに女の子の話をした。


「そう、そんなことがあったの? よかったわね、初めてのお友達ね!」


「うん! 友達……」


 ラリィは照れ臭そうに笑った。


「でね、フリルはあっちにある学校に春から通うんだって!」


「そっかー、じゃあフリルちゃんは学校に通うのを楽しみにしてるんじゃない?」


「うん、楽しみだって、言ってた……」


 ラリィはふと悲しげな表情を見せた。カラはその表情に気付いた。


「……ラリィも、通いたいよね、学校……」


 ラリィは再び自分の体質に向けられる罵声を思い出した。


「…………ううん、僕はいいよ、学校なんて通いたくない……」


「ラリィ……」


 カラは強がるラリィを見て、思わずラリィの頭に手を伸ばした。


 パチンッ!


 するとカラの手に電撃が走った。


「つつっ!!」


「お、お母さん!!」


「だ、大丈夫よ、気にしないで!」


「ああぁぁ……」


 ラリィは心配そうにカラを見つめていた。


「ごめんね……」


「え?」


「あなたを……あなたをこんな体質に生んでしまって……本当にごめんなさい……」


「お、お母さん、そ、そんな、僕は大丈夫だよ! 別に友達なんていらないし、僕にはお母さんがいれば……」


 ラリィは言葉に詰まった。


「……ラリィ……」


「でも……でも、出来ることなら、お母さんを……お母さんを触りたい……お母さんの手を握りたい、お母さんを抱きしめたい、お母さんと……お母さんともっと……」


 ラリィは俯き拳を握りしめた。


「ラリィ……」


 カラはラリィの目をやさしく見つめた。


「ラリィとお母さんはもう触れ合っているわ……」


「え?」


「人と触れ合うって言うのはね、なにも手を繋ぐことや、抱きしめることだけじゃないの」


 カラは自分の胸に手を当てた。


「人と人はね、心と心で触合うの」


「心と心?」


「そう、それは身体を触れ合わせる事よりも、うんと大事な事でね、いくら身体を触れ合わせても、心で触れ合っていなければ、それはただの動作や行為でしかないの」


「……」


「ラリィと母さんは他の誰よりも、心と心で触れ合っているわ、あなたの心のそばには、いつだって母さんがいるのよ」


「お母さん……うん!」


 ラリィは笑顔で頷いた。





 ――数日後 


 ラリィとカラが家にいると、突然外から大きな音が聞こえてきた。


「!!??」


「お母さん今のは!?」


「ラリィ!! じっとしていて!!」


 カラは窓からそっと外を見た。


「!! あ、あれは!!」


 すると王国に無数の兇獣きょじゅうが攻め込んで来ていた。


「お、お母さん……?」


 ラリィは不安そうにカラを見つめた。


「ラリィ……大丈夫、大丈夫よ」

(ここから北へ走ればいざという時の避難所がある、急いでそこまで逃げないと!)


 カラは引き出しからロープを取り出した。


「ラリィ! これを腕に巻き付けて!」


 そう言うと、そのロープの片側を自身の腕に巻き付けた。


「よし……」


 カラはラリィのの目を見た。


「良い? 今からお母さんと一緒に全力で走るわよ、途中何があってもよそ見をしないで、とにかく、とにかく全力で走るの! わかった!?」


「う、うん!」


 カラは深呼吸をして心を落ち着かせると、扉に手を掛けた。


「……よし、行くわよ!!」


 そして二人は避難所へと走り出した。

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