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インヘリテンス2  作者: 梅太ろう
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第75話【ティショップ】

 ハリスは地上に降りた。


「やりすぎましたかねぇ、まあ、回復魔法には長けているので大丈夫でしょう、しばらくそこで大人しくしておいてもらいますよ」


 そしてハリスがその場をさろうとしたその時、巨大な氷の塊が割れた。


「なっ!?」


 割れた氷の中には立ち上がったリラの姿があった。


「はあはあはあはあ……」


「な、なんと……随分しつこいお方だ、しかし、いい加減アークも少なくなって来たでしょう? 悪いことは言わない、大人しくしていてください」


「はあはあはあ……ティショップ……」


「!!??」


 その時、リラはハリスの前から消えた。


 そして突如背後に現れると杖で後頭部を殴りつけた。


「ぐああ!!」


 ハリスは前のめりに倒れ、リラはすかさずハリスの背中へ杖を叩き落とした。


「うぐああ!!」


 そしてリラが杖を振り上げ再び振り落とそうとした時、ハリスは身体を振り向かせてリラへと炎を放った。


「うわっ!!」


 リラは咄嗟に身体を反らせて避けると、しりもちをついた。そしてハリスはその隙に飛び跳ね距離を取った。


「ぐうう……」

(な、なんだ今のは? 完全に姿を消したぞ!? 魔法なのか? 超高速移動??)


 そうこう考えていると再びリラは姿を消した。


「!? また!?  後ろか!!」


 ハリスが後ろを振り返ると、さらにその後ろ、つまりは元々向いていた方面に現れ、今度は腹に杖を突いた。


「うぐああ!!」


「えい!!」


 そしてハリスの頭の下がったところで顔を蹴り上げた。


「がはああ!!」


 蹴り飛ばされたハリスは地面に倒れた。リラは間髪入れずに飛び掛かると、立ち上がろうとするハリスにハヴィングを唱えた。


「ぐっ!!」


 ハリスは身体の重さで動きが止まった。そこヘリラは杖を振り上げた。


「ここざかしいわああ!!」


「!!!!」


 するとハリスは高圧の風を発生させ、リラを吹き飛ばした。


「きゃあ!!」


 リラは地面へ倒れた。


「ぐううう……くそアマがぁ……」

(くそが、どうなっていやがる? 気配どころか、アークまで完全に消えていやがる……高速移動とかいう話じゃねえ!)


 その時、ハリスは何かに気着いた。


(!! アークが……消える……? まさか!!  この女!! アーク孔を強制的に!?)


「はあはあはあはあ……」


 リラは立ち上がった。そしてハリスはその場で落ち着き考えた。


(本来アーク孔は少し開いていることで微量のアークを常に放出している。故に我々は相手の動きを追う時には動きそのものだけではなく、アークの流れや気配などを読み取り感じることで高速移動にも反応出来ている。レベルの高い者であればあるほどだ)


 ハリスは口から垂れる血をぬぐった。


(アークと気配を完全に消したとなると、目だけで動きを捉えなければならない……アークの流れを掴む事に慣れすぎてしまっている事に加え、奴自身の鍛え上げられた移動速度が、消えたと錯覚させた……)


 ハリスはリラに問いかけた。


「その技は、お前が編み出したのか?」


「……ええ、そうよ」


「そうか……大したものだ……」


 ハリスは構えた。


(しかしアーク孔を強制的に閉じるということは、体内のアークの逃げ場が無くなるという事、体内で膨張するアークは内側から身体を破壊する、つまり、あの女の自動超高速回復があるからこそ成立し得た技……認めざるを得ない……この女は上級魔法士だ)


 その時、リラは再び姿を消した。


「!!!!」


そしてハリスの側面へと現れたリラはハリスの脇腹へと杖を振り当てた。


「うぐぅ!!」


 ハリスの口から再び血が噴き出した。


 しかしその瞬間、ハリスがリラの手首を掴んだ。


「くっ!?」


 リラが振り解こうとするも全く振り解けず、ハリスはリラの手首を締めあげた。


「くくくっ……たしかに、大した技ではあるが、来ると分かっている貴様のへたれた攻撃など、覚悟を決めれば耐えられるわ!!!!」


 ハリスはリラを殴りつけた。


「ぐは!!」


「散々調子に乗りやがってこのクソアマ!! 只で済まされると思うなよ!!」


 ハリスはリラの手首を掴んだまま執拗に何度もリラを殴りつけた。


「ひゃははは!! どうした!? 得意の高速回復ももう追いつかねえか!? それとも、もうアークの底切れかぁ!?」


 そして遂にリラの膝が折れ、リラは前のめりに倒れた。


「けっ! やっとくたばりやがったか」


 その時、リラはハリスの右足にそっと手を置いた。


「ん?」


「ティ、ティショップ……」


「お? おおおああああ!!」


 するとハリスの右足は膨れ上がり、所々が避け、アーク孔と一緒に血しぶきが舞った。


「ぎゃああぁぁぁああああ!!!! あ!! 足がああああ!!!!」


 ハリスは悶え苦しんだ。


「はあはあはあはあ……」


 リラは満身創ではあったが、意を決してハリスへと突っ込んだ。


 すると転げまわっていたハリスはリラに気付き、咄嗟にリラへと炎を放った。


「うをおおおお!!!!」


「!! わあああああ!!!!」


 リラは両手を前に交差し、迫りくる炎へと突っ込んだ。それを見たハリスは驚いた。


「!!??」


 なんと炎を防ぐリラの両腕は焼き付く度に回復を繰り返していた。


「なにいい!? 回復しながら防ぐだとおおおお!?」


「うああああああ!!!!」


 リラはついに炎を抜け、ハリスへ迫ると杖を振りかぶり顎を突き上げた。


「はべえっ!!」


 ハリスは自身の歯を数本飛ばしながら後ろへ吹き飛んだ。


「はあああ!!!!」


 そしてリラはそれを追い杖を振り上げた。


「ハヴィング!!」


 リラが魔法を唱えると振り上げた杖が光った。するとその後振り落とした杖の勢いに重力が加算され、杖は物凄い勢いでハリスの顔面に振り落とされた。


「ぼげえええ!!!!」


 ハリスの顔面は地面にめり込んだ。


 リラはその勢いで数回転げ、地面へと突っ伏した。


「くはっ!! はあはあっ!!」


 そしてすぐさま顔を上げハリスを見ると、ハリスは気絶していた。


「はあはあ、はあはあ、や、やった……うううん……」


 リラは身体を仰向けにすると空を見上げて大の字になった。


「はあはあっ……つ、疲れたー! もうアークなーい……みんなー、お願いだから怪我しないでねー!!」

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