第73話【相性】
サムとラリィは様子を見ながら話していた。
「なんか……次々と始まりましたね、僕らどうします? あの新人くんじゃあ心許ないし、僕らも城へ行きますか?」
「うん、そうだな……ガルイードの兵士達がどれ程の兵力なのか少し興味はあるが、
任務が先決だ、我々は城へ向かおう」
「はーい」
そう言うと二人は歩き出した、しかし、その前に数人の兵士を引き連れたゼレル隊長が立ち塞がった。
「なぜ兇獣側に付く? お前達は一体何者だ?」
それを聞いたラリィは一瞬驚き、その後笑った。
「ぷははははっ!! サムさん!! なんか僕たち兇獣の味方になってますよ!! あははははっ!!」
「うん……なにか誤解があるようだな……」
「隊長さん、逆ですよ、逆、僕達はヴィルヘルム、兇獣を倒す者、兇兇獣の味方なわけないじゃないですか、あはははっ!!」
それを聞いたゼレルは再び問いかけた。
「ヴィルヘルム……ではなぜティグ・ミナルクを助ける?」
サムが答えた。
「あの少年が目的では無い、我々の目的はあの子の母親だ」
「サオ・ミナルク……では、そのサオ・ミナルクになんの用があり、なぜ助けようとするのだ?」
「それ以上は、答えることは出来ないな」
「……そうか……なら仕方がないな……」
するとゼレルは兵士達に合図を出した。それを見たラリィは反応た。
「お! やりますか?!」
兵士達は剣を抜き二人に襲い掛かってきた。
パチッ! パチパチッ!
その瞬間、ラリィの髪が逆立った。
「うぎゃあ!!」
「ぐわあ!!」
「があああ!!」
すると兵士達は一斉に倒れ痙攣し、それを見たゼレル隊長は驚いた。
(なんだ今のは? 魔法……? それにしても予備動作がまったく見られなかったぞ……?)
ゼレルは剣を抜いた。
「どうやら、おとなしく捕まってくれそうには無いようだな……」
ラリィは嬉しそうに肩を回した。
「ようし! サムさん、この人僕やっていいですよね?」
するとサムが一歩ラリィの前に出た。
「いや、私がやろう」
「え? ちょっとサムさん?! ずるいじゃないですか!! 僕にやらせてくださいよー!!」
「この男は、私との方が相性が良い……」
そういうとサムはゼレルの腰に差さっているもう一本の剣に目を向けた。
「えー……そんなあ……」
ラリィはへそを曲げ、その場を離れた。
「もう……じゃあ僕一人で城かぁ……一人で行くのはなんか寂しいなー、あのティグって子とも話した事ないし……嫌な子だったら嫌だしなぁ……」
ラリィはそう言いながら辺りを見回した。
「ん?」
すると倒れた兵士達を見て回るリシャルド隊長を見つけた。
「まだみんな息がある!! 急いで医療室へ運ぶんだ!! 回復魔法の使える者は重傷者を優先に治療に当たれ!!」
そんなリシャルドを見てラリィは笑顔になった。
(あの人、高いアークを秘めてる! きっとあの人も隊長さんだな!)
ラリィはリシャルドへと近付いた。
「おーじさん!!」
「ん?」
リシャルドはラリィに気付き立ち上がった。
「君は……」
「おじさん隊長さんでしょ? 他の人はみんなは相手が決まっちゃって……良かったら僕の相手してくれません?」
リシャルドは他のヴィルヘルム達を見回した後、ラリィを見た。
「君たちは一体何者だ? なぜ兇獣の味方に付く?」
「いやいや、だからぁ……僕たちは兇獣を倒す者であって、兇獣の味方じゃないですって、 あえて言うなら……正義の味方?」
「正義の味方だと? その正義の味方がなぜ我々王国民に危害を加える?」
「それはぁ……あなた達がなんもわかってないから……」
「どういうことだ!? 我々が何をわかっていないというのだ!?」
「うーん、自分達の実力と情勢? そのサオ・ミナルクさんを黙って僕らに引き渡してくれれば、別に僕らもあなた達に危害を加えるつもりはないですよ」
「どこそのわけのわからん輩共に 王国民を引き渡すなど出来るわけないだろう!!」
「わけのわからん輩って……ひどいなぁ、まあ、易々と引き渡してくれるわけはないとは最初から分かっていたけどね、ということで、こっちの方は交渉成立ってことで」
ラリィは剣を抜いた。
「剣を抜くか……見る分に、まだ随分と若いようだが、剣を抜くからには容赦は出来んぞ……」
リシャルドも剣を抜いた。
「んふふふ……もちろん」
パチパチパチッ!
再びラリィの髪が逆立ち始めた。




