第72話【様子見】
オルトはそんな二人のやり取りを見て呟いた。
「あーやだやだ……なんとも血の気の多い若者達だねー……」
そんなオルトの背後に一人の男が現れた。
「へへっ、久しぶりだなぁ、隊長さん……」
「ん? 誰? お前?」
そこに現れたのはザックであった。
「そういやぁ、あん時は特に挨拶もしなかったけな……タミルでの件……て言やあ、分かるかな?」
「タミル……」
「あん時は感心したぜ、なんせ……たかが一国の隊長程度がスクラードをあれ程一方的に追い詰めちまうんだもんなぁ……」
オルトの顔色が変わった。
「お前……なぜそれを?」
「いやな、たまたまあそこに居合わせて見させてもらっていたんだよ、あれ以来、すっかりオタクのファンになっちまってよ、いつかまた会えないかと思っていたら、まさかこんな早く会えるとはな……」
「……その俺のファンがなんの用だ? サインでも貰いに来たか?」
「へへっ、それもいいなぁ、まあその前にだ……あのティグってガキの母親、お前さんのところで引き取っているんだろう? 俺達もその女に用が会ってな、どうだい? 譲ってくれやしないかい?」
「サオ・ミナルクか……引き渡しは無理だ、と言ったら……?」
「そらまあそうだよなあ、まあ、そうだなー、無理ってんなら仕方ねえなぁ……強引にでも奪うしかねえか」
ザックは腰に着けているナイフに手を添えた。
「タミルでの……俺の戦闘を見たうえで、言っているのか?」
そしてオルトも剣を抜いた。
「ああ……タミルでのお前さんの戦いを見た上で言ってるぜ……なんせ、スクラードなら……俺も倒してる」
ザックは不敵に笑った。
「?? なにを言っている? スクラードを倒したのは我々だ」
「くっくっくっ……やっぱり……なんにも知らねえんだなぁ」
「……どういう事だ?」
「スクラードってのは、奴個人の名前じゃねえ、種の名前だよ、言ってる意味がわかるかい?」
「……スクラードは、一体ではない……?」
「くっくっくっ……ご名答、奴はマグベシノからなる兇獣だ、つまり……奴らはマグベシノがいる限り、スクラードを作り出せる、そう言う事だ……」
「……なるほど、そう言う事か……どうやら、お前にも色々と聞かなければならない事がありそうだな……」
オルトは剣を構えた。
「へっへっへ……いいぜぇ……色々と教えてやるさ、例えば……そのスクラードが……他所の兇帝軍じゃあせいぜい三獣兵扱いだって事もなあ!」
ザックはナイフを振り上げオルトへ迫った。
――――
一方で、サルバ隊トール副隊長は、城へと駆けていくティグとコールを見て兵士達に声を掛けた。
「おい、あの二人を追え、捕らえるんだ」
「ははっ!!」
兵士達はティグを追い始めた。
「!!!!」
「ぐわぁ!!」
「ぎゃあ!!」
その時、ティグを追った兵士達全員にナイフが刺さり倒れた。
「む……?」
トールが振り向くと、そこにはアミが立っていた。
「悪いけど、あんたは少し、わたしの相手をしてもらうわよ」
「ふむ……君達は一体なにものなんだ?」
「ヴィルヘルム! 兇獣を倒す者よ!」
アミはカッコ良くポーズを決めた。
「……そうか、せっかくの可愛らしいお嬢さんからのお誘いだ、無下にはしたくないのだが……」
「え? 可愛らしい? このおじ様、よくわかってらっしゃるわね! これが世に言う、紳士!?」
「はっはっはっ、しかし私にも立場、というものがある……王国の秩序を乱す輩を、野放しにする訳にはいかんのでな……」
「輩……ふーん……やっぱ紳士は撤回! 予定通り! しばらく寝ていてもらう事にするわ!」
そういうとアミは右手からナイフを三本回し出した。そしてそれを見ていたトールは何かを考えていた。
「ふむ……」
(ナイフ使いか……それにしても……あのお嬢さん……どこかでみたような……?)
「じゃあ手始めに!!」
アミは三本のナイフをトールへと投げた。ナイフはもの凄い速さでトールへと迫った。
「むっ……」
トールは一本目のナイフを剣の柄で弾くと二本目は首を捻り避け、三本目は指で止めた。
「ふむ……ほんのりとナイフにアークを乗せた、良い投てきだ」
「へえ、なかなか目が良いじゃない! これならどう?!」
アミはまたナイフを三本投げた。トールは掴んだナイフで三本のナイフを全て弾いた。
「!!」
と同時にアミはトールへと飛び出しており、トールの懐へと入ると右拳を突いた。
トールがそれを横に避けるとアミは身体を回転させて蹴りを放ったが、トールはそれも後ろへ軽く飛び躱した。
そして体勢の崩れたアミにトールがナイフを横薙ぎに振ると、アミは身体を反らして避け、そのまま後転しながら距離を取り、飛び跳ねた瞬間にナイフを一本トールへ投げた。
「むん!」
トールはそのナイフに持っていたナイフを投げ当てた。
「……へえ、おじさんやるじゃない!」
「……君こそ、若いのに、大した動きだ……」
するとアミは右足の爪先で地面を数回叩いた。
「ふふっ、まだまだ本気は出してないけどね!」
「……そうか……こちらも、締めてかからなくてはならぬようだな……」
そう言うとトールは剣を抜いた。
「ふふっ、上等……」
アミも両手にナイフを出した。
次回第73話【相性】




