表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インヘリテンス2  作者: 梅太ろう
71/85

第71話【揃い踏み】

「ヴィルヘルム……」

(聞いたことがある……大陸中で兇獣きょじゅうを倒して回っている集団がいると……)


 フィルはクムルに問いかけた。


「その、兇獣きょじゅうを倒す者達が……この人間の王国に一体何の用だ……?」


 するとクムルは答えた。


「お前にそこで物騒なもんを突き付けられているその小僧の母親に用があってな」


 フィルは顔色を変えた。


「サオ・ミナルクに……?」

(こいつらもこいつの母親に……やはりあの女はなにか重要な鍵を握っている……)


 ティグもまた意外そうな顔をしていた。そしてフィルは更に続けた。


「残念だがそれは無理な話だな、サオ・ミナルクは今我が軍で投獄している、おいそれと、特に部外者なんそがが会える状況ではない」


「へえ、投獄ねえ……その状況といい、一般人幽閉といい、ガルイードの軍てのは随分と傲慢な連中らしい」


 フィルは睨みをきかせた。


「どういう意味だ?」


「合うのが無理かどうかは……お前らが決めることじゃねえ……って意味だよ」


 クムルは両手の指を鳴らした。


「…………」


「…………」


「うをおおおお!!」


 その時、クレアルを飲み干したティグが両腕からアークを放出させ、フィルにサガネを構なぎに振った。


「!?」


 フィルは後方に大きく飛び距離を取った。


「くそっ!!」


 それを見たアミがティグに声を掛けた。


「ティグ! あんたまだ回復しきれてないんだから、無理しちゃだめよ!」


 そしてそれを見ていたラリィがサムに声を掛けた。


「あれが噂の新人くんですかね?」


「そうみたいだな、うん、良い目をしている」


「そうですか? あの子の母親が兇獣きょじゅうと、かあ……どうします? 投獄されてるって、助けに行きます? 多分、ていうか絶対に全面戦争になりますけど」


「うーん……そうだなぁ……出来れば隠密に行きたかったけど、もうクムルがやる気になってしまているからなあ」


 そして更にその後ろではザックがフィルに気付いた。


「おっ……あいつはこないだの、へへっ、さっそく会えるとはなあ」

(あいつはうまいことこっちに引き込んでやる……)


 するとクムルはリラに声を掛けた。


「母さん、ティグを回復してやってくれ」


「ええ、わかった」


 リラがティグの方へと駆け寄ろうとすると、その近くには数人の兵士がいた。しかし兵士は若干戸惑っていた。


「お、おい……」


「ああ……」


 フィルはそんな兵士に声を上げた。


「おい、こいつらは手配犯の仲間だぞ、ボケっとしていないで捕えろ!」


「は、はい!」


 すると数人の兵士がリラに迫った。


「あら……ふふっ」


 リラは足を止めると少し笑った。


「ティショップ……」


「!? な!? 消えた!?」


 兵士達は突然消えたリラに驚いていた。


「ティグ」


「え?」


 リラはいつの間にかにティグの側に来ており、ティグもまた驚いていた。


「リラ、今どうやって?」


「ふふふ……」


 リラは何も言わずティグの胸に手を当てた。


「リスナ……」


 するとティグの傷はたちまち癒え、体力も全快した。


「はい、これで大丈夫」


 リラはティグの頭に手を当て撫でた。


「ちょ、や、やめてよ」


 ティグは照れながら頭を避けた。


「あら、うふふ……」


 そしてそれを見ていたフィルも驚きを隠せずにいた。


(なんだ今のは……? 速いだとかそういう問題じゃない…… 一瞬、完全に姿も気配も完全に消えた……あの女……)


 ティグの回復を見たクムルはティグに声を掛けた。


「おいティグ! ここは俺達に任せてお前はお袋さんを探しに行け!」


「クムル……わかった! ありがとうクムル!」


「へっ」


 ティグはコイルに声を掛け走り出した。


「コイル! 行くぞ!」


「え!? あ、ああ! わかった!」


 それを見たフィルはサガネを構えた。


「そうやすやすと……行かせるか!!」


 フィルはアークを放出させ、すごい速さでティグに迫った。


「!!!!」


 するとフィルとティグの間にクムルが割って入り、クムルがフィルの右側頭部へ蹴りを放つと、フィルはそれを右腕で防いだ。


「それがやすやすと行かせちゃうのが俺等なんだよ」


「貴様……」


 ティグとコイルは走り去っていった。


 クムルが足を引くとフィルの右腕には痺れた感覚があった。


(この男……強い……)


 フィルは持っていたサガネを捨てると、近くにいた兵士の腰から剣を抜いた。


「ガルイード国民ではない部外者だ、悪いが遠慮はせんぞ……」


「へっ! どうでもいいけど、ここにいる兵士で、まともにやり合えんのはお前だけだろ? お前一人で俺達を相手にする気かい? 俺たちが正々堂々一対一でお相手をする、そんなお行儀の良い集団に見えるのかい?」


「ふんっ、知った事か、好きにすれば良い。俺はただ、ガルイード兵としての責務を全うするだけだ、それ以上でも以下でもない」


 フィルは剣を構えた。


「へぇ……良いねえ、嫌いじゃねえよ……そういうやつ」


 クムルもまた腰を落とし両手の指を鳴らした。


 二人はジリジリと間合いを詰めた。



「おいフィルー、ドリルから聞いたぞー、お前駄目じゃないか、勝手に試験放りだしちゃぁ」


「!?」


 そこに現れたのはオルト隊長であった。


「オルト隊長……」


(隊長……?)


 クムルは突然現れたオルト隊長の底知れない力に気付いた。


「突然飛び出して行ったって言うから来てみたら、お前って本当に争いごと好きね」


 すると更にまた何者かがオルトへ声を掛けた。


「まあまあオルトくん、フィルは昔から正義感が強くてね、こういう騒ぎがあるといてもたってもいられない子なんだよ」


「正義感って言うんですか? それ?」


 フィルは驚いた。


「トール副隊長!?」


 そして更に数人の兵士を引き連れ、ガルイード四大隊長の一人ゼレル隊長、同じく四大隊長のもう一人、リシャルド隊長が現れた。


「すごいアークを感じたから来てみたら、なるほど、強者揃いだ!」


「だれか倒れている兵士の手当てをしてやってくれ!」


 更には魔法士ハリス隊長も現れた。


「現れたのは手配犯と聞いていたが、侵入者か……」


 それを見た兵士は一様に驚いていた。


「お、おい……ガルイード四大隊長のうち、オルト、ゼレル、リシャルド隊長の三人が集またぞ……しかもあのサルバ隊でサルバ隊長が一目置いているといわれるトール副隊長まで……」


 現れた各隊長たちを見たクムルは呟いた。


「ぞろぞろお出ましになったなあ……」


 その時、クムルの目の前に剣が迫ってきていた。


「!!」


 クムルは咄嗟に身体を後ろに反らし避けると、そのまま数回転して距離を取った。


「よそ見をしている場合か……?」


 剣を繰り出したのはフィルであった。


「……へっ!」


 クムルは切れた頬から出た血を指で取るとそれを舐めた。

次回第72話【様子見】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ