第70話【再決】
「お、お前は、フィル!」
フィルは辺りの状況を見回すとティグを見た。
「貴様…… 一体今までどこで何をしていた?」
ティグは立ち上がった。
「うるさい! お前に関係あるか!」
「大いにある、お前ら親子には兇獣きょじゅうとの暗躍の容疑が掛かっているのだ、馬鹿なことをしてないで大人しく事情聴取を受けろ」
「誰が兇獣きょじゅうなんかと暗躍なんかするもんか! お前らこそ母さんを返せ!」
「……はぁ……」
フィルは額に手を当て溜息を吐いた。
「貴様がいくら馬鹿だとはいえ、兇獣きょじゅうと手を組む事など無いのはなんとなくわかる。だからこそ、大人しく事情聴取を受けろと言っているんだ。そうやって暴れ回れば回るほど、やはりなにか裏で繋がりがあるのかと疑うが人間の心理だ。貴様も母親も、何もやましい事がないってなら、だんまりを決め込んだり、暴れ回ったりせずに、堂々と出てきて無実を主張すればいいんだ」
ティグは少し腑に落ちた顔を見せた。
「か、母さんに合わせてくれるか……?」
「……それは無理だ」
「な、なんでだよ!?」
「サオ・ミナルクは不慮の事故により今医務室で治療中だ、状態が落ち着くまでは合わせることは出来ない……」
「な!? なに!? どういうことだ!? お前ら母さんに何をした!? 取り調べだけでなんで怪我をするんだ!?」
「違う! 我々がやったことではない!」
「じゃあ誰がやってっていうんだ!!」
「……それは秘匿な情報だ。外部には漏らせん……」
「 お前、さっき言ったよな……何もないってなら、だんまりを決め込んだりしないで、堂々と無実を主張すればいいんだって……」
「それは!」
「やっぱりお前らは信用できない!! 俺がお前らから母さんを助ける!!」
ティグはサガネを構えた。
「……ちっ! わからん奴が……」
するとフィルはサガネをティグの前に突き出した。
「いいか、勘違いするなよ? これはお願いしているんじゃない、命令しているんだ ……別に、お前を連行するのに、お前の意識が有る無しは関係ないんだぞ……」
フィルはアークを滲ませてティグに詰め寄った。
「くっ……」
ティグはその圧力に少し後ずさった。
「おいてめえ!!」
「!?」
「!?」
その時、一人の兵士が二人の元へ駆けつけてきた。
「てめえ!! いきなり逃げ出してんじゃねえぞ!! さっきはよくも水を差してくれたなあ!!」
現れたのはジーブであった。ジープはフィルを追って来ていた。
フィルは現れたジープを白けた目でみた。
「代わりにてめえを……ん?」
ジープは状況に気付き、辺りを見回した。
「なんだこれ? 一体何が……!?」
するとジープはティグに気付いた。
「んあ!? あのガキ……!! あれは手配犯のティグ・ミナルクじゃねえか!!」
ジープは不敵な笑みを浮かべた。
「うへへへぇぁ……」
(おいおい、こんなところで手配犯とは……周りの兵士も雑魚ばっかじゃねえか……くっくっくっ)
ジープはフィルを押しのけ前へと出た。
「おい、あいつは俺が召し捕る。てめえは手をを出すなよ、それでさっきの事はチャラにしてやる」
「…………」
フィルは特に反対はぜずに黙っていた。ティグは急に出てきたジープに警戒している。
「な、なんだお前は?」
ジープは辺りの兵士を見回した。
(くっくっく……剣を、抜いているな……抵抗したか……)
するとジープは近くの兵士から剣を奪った。
(くははあっ!! こんな堂々と人間を斬れるなんてなあ!! しかも相手はガキ!! ひひゃはは!! たまんねえ!! 運が良いぜえ!!)
ティグはサガネを構えた。
(ひゃはははは!! サガネで剣とやりあおうってかあ!? やっぱりガキだあ!!)
そしてジープも構えた。
「おいガキ……悪く思うなよ……ふへへっ……」
「…………」
フィルはその場で腕を組み目を瞑っていた。
(行くぞー、行くぞー)
そして、ジープは飛び出した。
「ひゃはー!!」
ジープは右手で剣を振り上げると、左手から炎を出した。
「!!」
ティグはあっという間に炎に包まれた。
それを見たコイルは思わず声を上げた。
「ティグ!!」
「ふははははは!! 死ねええ!!」
ジープは更に振り上げた剣を炎に包まれたティグへと振り落とした。
「!!??」
しかし剣はなにか硬いものに当たり止まった。
「な、なんだ!?」
すると炎の中からサガネでジープの剣を受けるティグの姿が見えた、ティグは全身に薄っすらとアークを纏っていた。
「なにい!?」
「こんな質のアークで出した炎なんか効くもんか!」
ティグのサガネがアークで輝いた。
「うをおおおお!! お前はどいてろー!!」
「ぐをあああああ!!」
ティグがサガネを振り切ると、ジープはフィルの足元へと吹き飛ばされた。
フィルはゆっくりと目を開けティグを見た。
「うっうぅぐぅ……」
その時、かろうじて意識を保ったジープが地面を這いつくばりながらフィルに声を掛けた。
「うぐぅ……あ、あのガキぃぃ……お、おい! お前、クレアルは持っていないか?
持っていたらよこせ!」
「…………」
「お、おい! き、聞いてんのか? なんとかいいやがへっえ!!」
フィルはジープをサガネで叩き飛ばした。
「お前はどいてろと、言われたろ?」
そしてフィルは再びティグに目を向けた。
「少しは……アークの使い方を覚えたみたいだな……」
「へんっ! 今ならお前にだって負けやしないぞ!!」
しかしコイルはそんな二人を見て焦りを感じていた。
(確かにティグは強くなった。しかし、さっきクレアルを飲んだとはいえ、まだ体力を回復しきれていない。あんな状態じゃ……)
フィルは組んでいた腕を解くと、サガネを下段に構えティグに歩み寄った。
「なら見せてみろ、お前の……力を」
ティグもまたサガネを構えた。
「…………」
「…………」
異様な緊張感に、兵士達は固唾を飲んだ。
「…………」
「…………」
そしてティグが飛び出した。
「うをおおおお!!」
ティグは正面からサガネをフィルに振り落とした。フェルがそれを受け止めると、ティグは更にサガネをいろんな角度から振り、フィルは全て弾き返した。
「ふんっ! 馬鹿の一つ覚えが! 何も変わっとらん!」
フィルが強くティグのサガネを弾くと、ティグは回転しながら後ろへ飛び、再び正面から突っ込み、サガネを振った。
しかし何度サガネを振っても全て返され、今度はフィルがサガネを受けざまにティグへと蹴りを入れた。
ティグはなんとか腕でガードするも後方へ飛ばされたが、またすぐにフィルへと突っ込んだ。
「うをおおおお!!」
フィルは強めにサガネを握った。
「少し期待していた俺が馬鹿だった、もう終わらせるぞ!」
そしてフィルは正面から突っ込んでくるティグへと、物凄い速度でサガネを横薙ぎに振った。
「!!??」
その時、フィルの眼前からティグが消え、フィルのサガネが空を切った。
「うをおおおお!!」
「なに!?」
ティグは瞬時にフィルの横へと飛んでいた、そしてティグの両足にはアーク光が輝いていた。
(馬鹿の一つ覚えのようにしつこく正面から来ていたのは、前からの攻撃に目を慣らせる為か!?)
ティグは両足からアークを放出しながら物凄い速度でフィルへと突っ込んみサガネを振り落とした。
「くっ!!」
フィルは間一髪ティグのサガネを受けるもその勢いで後退している。
「おおおおお!!!!」
そしてティグは更に両腕からもアークを放出させた。
「うう!! ぐをおお!!」
フィルはどんどん後退させられ、受けているティグのサガネが徐々に顔に近づいてきた。
「ぬぐぐぅぅ……ち、調子に……乗るなああああ!!!!」
するとフィルの全身からアークが放出され、フィルは受けていたティグのサガネを押し払った。
「うわあああ!!」
ティグは吹き飛ばされ、地面にバウンドしながら三回転して倒れた。
「はあはあ…………ふんっ」
フィルからアーク光が消えた。
「うぐぐぅぅ……くそぉぉ……」
ティグはダメージが大きく、立ち上がれずにいた。
そしてフィルはティグの前に立った。
「多少アークを使える様になったくらいで、俺に勝てると思うなよ」
「くっそ……」
「うをおおおおおお!! ティグううう!!」
「!?」
その時、コイルが拳を上げ、フィルに飛びかかった。
「ぐああああ!!」
しかし、フィルは振り返ることもせずにサガネを振り当て、コイルを吹き飛ばした。
「コ、コイル!」
「う、ううぅ……ティ、ティグ……」
「貴様は一新生の身でありながら手配犯に手を貸した……決して軽い罰では済まんぞ、覚悟しておくんだな……」
そう言うとフィルは兵士に声を掛けた。
「おい、そいつも連行しろ」
「は、はい!」
ティグはフィルの足を掴んだ。
「や、やめろ! コ、コイルは関係ない!」
「……それはお前が決める事ではない」
「く、くっそおおお……」
ティグは両手にアークを滲ませた。
「ふんっ、まだそんな元気があるのか、貴様は何かと面倒だ、悪いが一旦眠ってもらうぞ」
そう言うとフィルはサガネを構えた。
「ぐ、ぐぅぅ……」
その時、どこからか声が聞こえた。
「おいおいティグ、お前って奴ははどこにいても問題児なんだなあ!」
「!!??」
ティグが声のした方へと顔を上げると、そこにはクムルが立っていた。
「クムル!?」
「ティグ!!」
そしてアミがティグに何かを投げた、ティグがそれを受け取ると、それはクレアルであった。
「アミ!!」
「へへー!」
そしてその後ろには更に、リラ、サム、ラリィ、ザックの姿があった。
「…………」
フィルはクムル達を鋭い眼光で睨みつけた。
「貴様ら……何者だ?」
クムルが答えた。
「俺達か? 俺たちは、ヴィルヘルム……兇獣きょじゅうを倒す者だ!」
次回第71話【【揃い踏み】】




