第67話【正々堂々】
「始め!!」
審判の合図と共にラゼルは勢いよくジープへと飛び出した。
「はあああ!!」
ラゼルは鋭い連撃をジープへと放つが、ジープはそれを難なく捌いている。
「ふふふっ……」
そんな中、ジープは何やら不敵な笑みを浮かべていた。
「?! なにが可笑しい!?」
ラゼルは攻撃を続けながらもジープへ問いかけた。
するとジープは攻撃を受け流しながら答えた。
「へへ……いやな……素晴らしいなぁって思ってな……」
「なにぃ? 何がだ!?」
「いやぁ、さすがは天下のサルバ隊隊士、素晴らしい剣の腕前だよ」
「おだてて油断でも誘う気かあ!!」
ラゼルが横なぎにサガネを振ると、ジープはそれを大きく後方に飛び避けた。
「そんなんじゃねえって、本当に心から感心してんだ」
「貴様に感心などされる筋合いはない!!」
再びラゼルはジープへと飛び掛かり、二人はまたも激しい攻防を繰り広げた。
そんな中、ジープはまたもラゼルへ語り掛けた。
「最近の若え兵士を見てるとな、魔法だアークだって、どうも派手な事ばかりしたがるだろ?」
「貴様!! だまって戦え!!」
「お前さんだってそう思うだろう? 戦闘の本質はあくまで剣だ、それを疎かにしちゃあいけねえ……」
「はあっ!!」
ラゼルは高く飛び上がり、サガネをジープの頭上へ振り落とした。ジープはそれを軽々と受けた。
「俺は嬉しいんだよ、ここまで武骨に剣技を極めてるお前さんを見てるとよぉ」
ジープが横なぎにサガネを振ると、ラゼルは後方に避けた。
「お前さんみてえな素晴らしい剣士と試合が出来て、俺は光栄に思ってるんだ」
「だったら黙って戦え!!」
ラゼルが再びサガネを振り上げ飛び込むと、ジープはその攻撃を受け、鍔迫り合いの形となった。
「そこで一つ提案があるんだがな……」
「提案だと!?」
「ああ、せっかく生粋の剣士とやり合えるんだ、この勝負を魔法だアークだで濁したくねえ……」
「……どういう意味だ?」
「この試合、お互い魔法やアークは無しで、純粋な剣での勝負にしやしねえか?」
ラゼルはサガネを弾き後方へ飛んだ。
「いいだろう、そこまで言うならこの勝負、正々堂々剣のみで決着を着けてやろう!」
「……へへへっ、流石はサルバ隊の剣士さんだ、漢だねえ……」
ジープは不敵な笑みを浮かべるとサガネを構えた。
そしてラゼルもサガネを構えた。
「いざ尋常に……」
「勝負!!」
二人は互いに飛び出した、マスの中央で激しい剣撃戦を繰り広げ、それを見守る兵士達は一様に息を飲んだ。
そんな中、ドリルがフィルへ声を掛けた。
「ラゼルの奴なかなかやるじゃない、良い勝負してるよ」
「は、はい……」
しかし、フィルの中にある、そこはかとない不安が消えることはなかった。
そしてマス上ではラゼルの攻撃が圧し始め、少しずつジープが後退し始めていた。
「ぐっ、はっ、 がっ」
「どうしたジープ!? 散々偉そうな事を言っておいてそんなものか!?」
「くうっ! はあっ! さ、さすがだ! こ、このままでは受けきれない!!」
ジープは逃げるようにラゼルの頭上高く飛び上がった。
「逃がすかあ!!」
ラゼルはジープを追って跳躍した。
「へへっ……」
その時、ジーブは不敵な笑みを浮かべて左手をラゼルの前へ差し出した。
「うをおおおお!!」
ラゼルはお構いなしに突っ込んで行った。
その時、フィルが声を上げた。
(ジープの左手にアークが集中してる!! なのにラゼルさんは無防備!?)
「ラゼルさん!! 魔法が来るぞ!! アークを燃やすんだ!!」」
「ハヴィング……」
「!!??」
その時、ラゼルの身体が急激に重くなり、マス上へと勢いよく叩き落とされた。
「ぐはあっ!!」
「ひゃははははあ!!」
そしてジープはラゼルへ向かい急降下した。
「こ、この……!?」
ラゼルが右手のサガネを構えようとしたが、ハヴィングの効果で重くて動かない。
「おらあああ!!」
「がはあ!!!!」
ジープはラゼルの腹部に膝を突き落とした。
「うぐあああぁぁぁ!!!!」
ラゼルはお腹を押さえながら転げまわっている。
「ラゼルさん!!」
フィルが一歩前へと進むと、ドリルがフィルを止め首を振った。
「ひゃはははは!! 馬鹿が!! ざまあねえな!! ひゃはははは!!」
「ぐっ、くそっ、き、貴様! 卑怯だぞ……」
「思った通り、おめでてえ奴だったなあ!! 卑怯もへったくれもねえ!! なにが正々堂々だあ!! 勝てば!! 生き残ればいいんだ!! 戦場ってのはそんなもんだ!! そんなに正々堂々とした試合がしたけりゃあ!! 兵士じゃなくって武道家にでもなりなあ!! ひゃはははは!!」
「ぐ、ぐうううぅ……」
「ほら立てよ、気を失わない程度に加減してやったんだ、もう少し楽しませてもらうぜえ」
「ぐうう……」
ラゼルは辛くも立ち上がった。
「ひゃはは!! さすがはサルバ隊!! そうこなくっちゃ!!」
ジープはラゼルへと突っ込んで行った。ラゼルもなんとかサガネを構えた。
「おらああ!!」
「ぐっ! があ! ぐわあ!!」
しかしジープははこれまでに無い程の連撃をラゼルへと放ち、ラゼルはそれをまともに受け続けた。
それを見たフィルはたまらず叫んだ。
「ラゼルさん!! 降参するんだ!!」
「むう……」
(これまでか……?)
審判もまた試合を止めようかと、足を一歩前へと踏み出した。
そしてラゼルの腰が落ち、倒れそうになったその瞬間、ジープはラゼルの胸ぐらを掴んだ。
「くっくっくっ……そう簡単にくたばっちまったらつまらねえだろう、もう少し楽しませてくれよ」
するとジープはラゼルを自身に引き寄せると炎を起こし、ラゼルを放り投げると同時に自分も吹き飛んだ。
「ぐわあああ!!」
それを見た審判はラゼルの攻撃と勘違いし、試合を止める素振りをやめた。
「…………」
フィルは審判へ叫んだ。
「審判!! 今のはラゼルさんの攻撃じゃない!! 早く試合を止めるんだ!!」
審判が一瞬フィルを見たその時、ジープは倒れているラゼルに飛び掛かり、突き上げるようにサガネを打ち当てラゼルを起こした。
「ひゃはははあ!! 興奮してきたああ!!」
ジープは必要に剣撃をラゼルに打ち当てるとラゼルは吹き飛んだ。
(ひっひっひっ……いかんいかん、そろそろ限界か? このままじゃ勝っちまう……適当に負けとかねえと……ん?」
すると吹き飛ばされたラゼルは瀕死ながらも立ち上がっていた。
「ひひっ!! ふふっ!!」
それを見たジープは再び不敵な笑みを浮かべた。そしてフィルはラゼルへ叫んだ。
「ラゼルさん! もういい! 立つな!!」
(いいねえ、いいねえ……たまんねえよ、殺っちまうか? 殺っちまうか? 公の試合だ、きっと不幸な事故で片付けてくれるよなぁ、そうすりゃあきっと反則負けで済む! 殺っちまうか? 殺っちまおうよ!!)
ジープはサガネを握る手に力を入れた。
「ふふふ……はは、ひゃははははああ!!!!」
ジープはラゼルへと向かい、サガネにアークを纏い突っ込んだ。
それを見たドリルは焦った表情で呟いた。
「お、おい……ラゼルはアークを纏ってねえ、生身であれを受けんのはまずいぞ!」
ラゼルはほぼ意識を失いかけている為、アークを纏う事など出来なかった。
「ひゃははははは!!!!」
そして興奮したジープの非情な一撃が、ラゼルへと振り落とされた。
「!!!!」
「!!!!」
ラゼルはうつ伏せに倒れた。
「なっ!? て、てめえ!?」
ジープの攻撃をフィルが受けていた。
「てめえ!! どういうつもりだ!? 試合中だぞ!!」
フィルはジープのサガネを弾いた。
「こんなものは試合でもなんでもない、ただの殺戮だ、これ以上やるなら、この俺が試合ではなく、決闘として受けて立つ!!」
「て、てんめえぇ……」
ジープは全身からアークを滲ませた。
そしてフィルもサガネを構えた。
「!!!!」
「!!??」
その時、闘技場の外からなにやら騒がしい声が聞こえた。
「急げー! 城下東に手配犯ティグ・ミナルクが現れたぞ! 急いで城下に兵を集めろ!」
フィルはその声に反応した。
「なに!? ティグ・ミナルクだと!?」
次回第68話【事実】




