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インヘリテンス2  作者: 梅太ろう
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第66話【予感】

 両者は中段に構え向かい合った。


(フィルは攻守共に正確無比で動きを最小限にして立ち回る……それ故に戦術はどちらかというとけんだ、だから必ず最初は様子を見る……)


 ピークが少し間を詰めた。


(ならばこの半年でのお互いの成長度合いが分からぬ今、様子を見る奴にいきなり全開で行く!! 俺がどれ程腕を上げたか、様子を見る間もなく叩き伏せる!!)

 

 ピークは強く踏み込み、フィルへと迫った。


「うをおおお!!」


 ピークが鋭い連撃をフィルへと放つと、フィルはその場から一歩も動かずにすべて防いだ。


「なに?! うをおおお!!」


「…………」


 ピークは更に左右に動きながら剣撃を放つも、フィルは落ち着いて全てを払い除けて見せた。


「くっ!!」


 ピークは距離を取った。


(な、なんだこいつのこの落ち着き様は……? 以前なら手数でせば下がらせる事は出来たのに……全く動じないぞ……それどころか、まるで全ての攻撃を見透かされているようだ……くうぅ、フィル……お前に一体、この半年でなにが……)


 フィルもまた、ピークの攻撃を受けた自分に少し戸惑いを感じていた。


(不思議だ……自分でも不思議なくらい落ち着いている……ピークさんの剣撃は素晴らしくレベルが上がっている、重さ、角度、タイミング、どれをとっても一級品だ、しかし、スピードが、無い……? 以前に比べて落ちているような……先が見て取れる……)


 考え込み動かない両者に、審判が声を上げた。


「両者共に動け!」


(ピークさんがまだまだ本気を出していないだけか……? いや、そんな感じはしなかった……ならなぜ……?)


 ピークは迷いを払い、作戦を変えた。


(剣だけでは俺は倒せんぞ!!)


 再びピークがフィルへと飛び出した。


 しかしフィルはまだ考えていた。


(そうか……兇獣きょじゅうとの実戦を経て俺のレベルが飛躍的に上ったのか、特にあの強大なオームを間近で感じ、戦っていた事で、相手の動きを目で追うだけでなく、気配や殺気、エネルギーを感じながら戦う能力が身についたんだ、だからピークさんの動きが手に取るようにわかったんだ……)


 するとピークが剣を右手で持ち、振りかざしてきた。


「…………」


 しかしフィルはピークの左手にアークが集中していることに気付いていた。


「うをおおお!! バニング!!」


 ピークの前手にあった左手から炎が放たれた。


 フィルはそれを高く飛び上がり避けた。


「上か!! はぁぁぁああ、フリズグロウ!!」


 ピークは両腕を広げて魔法を放った。


 すると八本の氷の柱がフィルを囲むようにして上へと伸びていった。


「!!」


「これで逃れられんぞ!! バニング!!」


 そしてピークは更に下からフィルに炎を放った。フィルは空中で氷の柱に囲まれていて逃げ場がない。


 しかしフィルはサガネを一振りし、氷の柱を破壊した。


「なに!?」


 そして砕けた氷を蹴り、炎を避けた。


「くそっ! ハイウィンド!!」


 ピークは風を起こすとフィルの元へと飛び、両腕とサガネにアークを纏いながらサガネを突き付けた。


「…………」


 フィルは空中でサガネを構えた。


 それを見ていたドリルは少し慌てた様子で呟いた。


「お、おい アーク纏わねえのかよ……」


 ピークはお構いなしに突っ込んで来ている。


「どういうつもりだ!? 場外負けどころでは済まなくなるぞ!!」


 そしてピークがサガネを突いたその時、フィルのサガネが折れて飛んだ。


「!!!!」


「!!!!」


「!!??」


「なっ!? 消えた!?」


 フィルはピークの突きをサガネで受けたその瞬間、受けた反動を利用し前転をするようにピークの頭上を回り後ろを取っていた。


「ぐわあ!!」


 そしてフィルはピークをそのまま場外へと蹴り飛ばした。


 それを見た審判はフィルに勝ち名乗りを上げた。


「勝者フィル・ダラグレット!!」


 闘技場の兵士達が沸く中、フィルは倒れているピークの元へと駆け寄った。


「ピークさん!!」


「いててて、ったく、 魔法もアークも使わせずにやられちまうとはな……」


「いや……でも、ピークさんも、あのころに比べて格段に強くなっていて驚きました」


「よせやい……まあ、俺に勝ったんだ、優勝してくれなきゃ困るぜ」


「ピークさん……はい!」


 フィルはピークに手を差し出した、そしてピークがその手を掴むとフィルはピークを起こした。


 すると二人の元ヘとラゼルがやってきた。


「フィルの勝ちか、しかしお前、とんでもなく強くなっていやがんなぁ」


「ラゼルさん」


「だが言っとくがフィル、俺はピークよりも階級は上だ、ピークに勝ったからって簡単に俺に勝てるとは思うなよ!」


「は、はい、でも、俺なんかよりもラゼルさんは次の……」


「あん? ああ……ジープか? 大丈夫だって、次の試合でこの俺もこの半年でうんと強くなってるってとこを見せてやるよ」


「はい、しかし……決して油断はしないでください」


「わかったよ!」


 そういうとラゼルは自隊の陣営へと戻って行った。


 そしてフィルも戻るとドリルが声を掛けた。


「お疲れさん」


「…………」


「どうした? 勝ったってのに浮かない顔して」


「いえ……ラゼルさんの次の相手……」


「……ああ、ジープか、まあ、残念ながらジープの勝ちだろうな、秘めているアーク量が違う……んまあそりゃあ、本来なら純兵三騎じゅんぺいさんきくらいであってもおかしくはない実力者だからな」


「…………」


「素行の悪さが目立つとはいえ、なんであいつが未だに一等穂兵いっとうほへいにとどまっているかが不思議なくらいだよ、決勝はまず間違いなく奴と当たるだろう、お前も気を引き締めて行くんだぞ」


「…………」


 フィルは嫌な予感を感じていた。





 ――トルド隊陣営


 ジープは不敵な笑みを浮かべていた。


(くっくっくっ……馬鹿共が……純兵じゅんぺいなんぞ損な役回りの為に必死こきやがって、指揮なんて任されたらどうやって強え兇獣きょじゅうから逃げるってんだ、現場じゃあ責任の無い兵士の方がよっぽど生き残れる……)


ジープはサルバ隊陣営にいるラゼルを見た。


(俺ぁひよっこ共をこうして公の場で堂々ととボコボコに出来りゃあそれで良いんだ、適当にボコしたら良いとこで場外負けしてやるさ、準決で奴を、更に三位決定戦でさっきの奴を、思う存分なぶってやる……くっくっくっ……)


そして審判がマスの中央へ上がると、二人を呼び込んだ。


「サルバ隊、 ラゼル・トラスト! トルド隊、ジープ・ミラガネス! 前へ!」

次回第67話【正々堂々】

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