第63話【伝書鳩】
ウィザードを含むアミ、クムル、リラはカナッツへとたどり着いていた。
クムルがウィザードへ声を掛けた。
「サム達はまだ着いてないんですかね?」
「……いや」
そういうとウィザードは歩き出し、とあるボロ小屋の前で足を止めた。
そして小屋の扉を開けると中に入った。
「あ、隊長!」
すると中にはサムとラリィがいた、サムはウィザードに歩み寄った。
「どうでした? グレイブは?」
「……ああ、倒したよ」
「さすが! じゃあ次はスクラードですね! 情報はいろいろ集めてあるので、とりあえず今スクラードはモラルにいますよ」
「そうか」
するとラリィもウィザードへ声を掛けた。
「お疲れ様です、スクラードはバルザ、ブルーム、ドロウルの三体を従えています、こちらもそれなりの戦力をそろえないと苦戦するやもしれません」
それを聞いたクムルは驚いた。
「おいおい、二獣兵を三体も従えてるのかよ? 相変わらず臆病な野郎だな」
サムが答えた。
「スクラードの元はマグベシノだからな、臆病なのはその名残だろう」
するとウィザードはあることに気付いた。
「……ザックは?」
ラリィが少し怒った様子で話し出した。
「それがぁ、聞いてくださいよー、またザックさんが勝手な行動取り始めて!」
「どういうことだ?」
「なんかぁ、ナイフを無くしたっていって途中でどっかいなくなっちゃったんです、かれこれ丸一日は経つから、絶対違う理由ですよ!」
「そうか……なにか、他に変わったことはなかったのか?」
サムが答えた。
「それが、俺たちがモラル周辺を詮索している最中、ガルイードの兵士達を見つけたんです」
ウィザードの顔色が変わった。
「ガルイードの?」
「はい、二十人程度の兵を成してモラルへと向かっていました。恐らく、キリザミアの国王の救出に向かったのかと……」
「キリザミアの?」
「ええ、モラルには王国を追われたキリザミアの国王が潜伏しています、恐らくその中の兵士の一人がガルイードへ応援を依頼したのでしょう」
するとラリィが声を上げた。
「ああー!! もしかしてザックさん! それを見に行ったんじゃ!?」
クムルが笑った。
「そうだろうな、へっ、あのおっさん相変わらずだなぁ」
ウィザードがサムに問いかけた。
「戦力は……?」
「そうですね……それなりにアークを秘めているものも多くいましたが、相手がスカールだけでなく、バルザ達までいるとなると、かなり厳しいでしょうね、余程良い指揮官と作戦があれば話は別ですが、恐らく、スクラードにたどり着くまでもなく全滅……でしょうね」
「……そうか」
するとその時、部屋の隅から声が聞こえた。
「スクラードはやられたよ」
「!!??」
サムが声を上げた。
「ザック!! お前いつの間に!? どこ行っていたんだ!?」
「へへっ」
ザックは薄ら笑いを浮かべながらアミへと近づいた。
「よおーアミー、どうしたぁ? なんか随分と元気無えじゃねえか、腹でも下したかぁ?」
ザックはアミの頭を掴むと髪をくしゃくしゃにした。
「ちょっとやめてよザック!」
「へへっ!」
すると今度はリラの元へ寄り、リラを舐め回すように見た。
「よう、リラァ……相変わらず色っぺえなあ、なあどうだぁ? 俺と一緒になる決心はついたかぁ?」
「い、いや、それは……」
するとクムルがザックの肩を掴んだ.
「おい……」
「へっ!」
ザックはクムルの手を振り解きリラから離れた、そしてウィザードがザックへ問いかけた。
「スクラードがやられたとは? どういうことだ?」
「へへっ、そのまんまの意味だよ、スクラードの奴らはガルイード軍の兵士達によって全滅させられた、この目で見たからな、間違いねえよ」
するとラリィが声を上げた。
「ええ? あの兵力で? そんなわけないじゃないですか、ザックさん加勢したんですか?」
「へっ、俺がそんな事するわけがねえじゃねえかよ、正真正銘、スクラードはガルイードの兵士達によって倒されたよ」
「そ、そんな……まさか?」
今度はまたウィザードが問いかけた。
「軍の中に、余程の手練れがいた、ということか?」
「……ああ、サムとラリィが見た最初の隊の中にはいなかったがな、後から来た一人の男……相当な手練れだ、奴は一人でスクラードを圧倒していたよ、きっとあの隊の隊長だろう」
アミは驚いていた。
「スクラードを一人で……」
「他にも隊の中に一人良い指揮官がいてな、スクラード達を逃がさずに全滅させられたのはそいつの作戦があったからだ、なかなか良い作戦だったぜ、まだ若いが、あいつは良い兵士になる、うちにスカウトしてえくれえだよ」
サムは話を聞くとウィザードに問いかけた。
「隊長、どうします?」
「特に問題はない、むしろ手間が省けた、グレイブもスクラードも倒された今、残るはスカール、ただそれだけの事だ」
するとアミの顔に緊張が走った。
「スカール……」
それを見たザックはアミの肩を抱き込み、またアミに絡んだ。
「どうしたアミー……緊張してんのかぁ? スカールはおめえの親父の仇だもんなあ? 安心しろよう、俺が倒して止めはしっかりおめえにやらしてやっからよう」
「ちょっと!」
それを見たクムルが再びザックの腕を掴み上げた。
「おいザック、いい加減にしろよ……」
「おー怖え……へっ」
するとウィザードが全員に声を掛けた。
「これよりスカールの討伐に移行する、スクラードとグレイブのいない今、敵の戦力は激減している、だが決して油断をするな、今ウォルとローガンがスカールのアジトであろうカーガモゥを調査中だ、合流し作戦を立て、全員でスカールを倒し、郡獣軍をつぶす」
それを聞いた全員が反応し、ザックも口を鳴らした。
「ヒュウ! ここにいる全員とウォルにローガンなんて、随分と豪勢だねぇ、俺の出番ねえんじゃねえの?」
その時、サムが何かに気付いた。
「ん? 鳩だ、ローガンからか?」
するとサムは扉を開け外に出ると伝書鳩を迎え、足に付いていた手紙を取った。
「隊長、ローガン達からです」
サムが手紙を渡すとウィザードは読み始めた.
すると、みるみるうちにウィザードの表情が変わっていった。それを見たザックはウィザードに問いかけた。
「なんでえ? どうした? なんかあったってか?」
ウィザードは顔を上げ、口を開いた。
「スカールはカーガモゥにはいない」
ザックは頭を抱え背中を沿った。
「なんでえい! せっかくここまで来たってのに、もう手掛かりが無えじゃねえかよ!」
「…………」
神妙な顔立ちのウィザードにサムが問いかけた。
「隊長、他には?」
「…………」
ローガン達の手紙にはティグがガルイードへ向かった事、そしてティグの母親が重要人物である事や大兇帝の他にも兇獣を生み出すことのできるものがいること等、ウォルがクラーケルから聞き出した情報が書かれていた。
ウィザードはそれらを隊員達に話すと、隊員たちは皆一様に言葉を失った。
そしてアミは心配そうに呟いた。
「ティグ……」
それを聞いたザックが口を開いた。
「てかそのティグって小僧は何者よ? ヴィルヘルムに入ったってことか? 俺はなにも聞かされてねえぞ?」
するとクムルが話した。
「ティグは兇獣を倒すために国を出た男、我々の目的と同じ、あいつの目的はこの世から兇獣を殲滅させることだ、腕はまだいまイチだが信用は置ける、入隊にはなんら問題はない」
アミはクムルを見た。
「クムル……」
「信用は置けるって? じゃあなんでローガン達を置いて勝手にガルイードへ行っちまったんだよ、俺はそんな奴信用出来ねえなあ、その母親のサオってのも含めて兇獣側のスパイなんじゃねえのか?」
クムルはザックを睨みつけた。
「ああん? なんだお前さっきから、しばらく合わねえうちに随分と生意気になったなぁ」
ザックがクムルへ迫るとその場の空気が重くなった。
次回第64話【昇進試験】




