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インヘリテンス2  作者: 梅太ろう
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第62話【許可】

 テツは城を出ると上空へ上がった。


「なにはともあれ、これでガルイードは攻めて良いね。バジムにこのことを伝えてあげなくちゃ、えっと……」


 テツは辺りを見回した。


「あっちか、オームが強いと探しやすくて良いね!」


 テツはバジムのいるクラスティック城へと飛び立っていった。





 ――クレルの泉


 そのころスカールは自らヴィルヘルムを探すべく、クラスティック王国西部にあるクレルの泉を探索していた。


「おい! チェダー居たか!?」


「い、いえ……ヴィルヘルムはおろか、人間一人見つかりません……」

(だ、第一……顔もわからん連中をどうやって……)


「グヌヌヌィィ……ガアアアア!!」


 スカールが近くの大木を殴りつけると、大木は折れ大きな音とともに倒れた。


「ヒイィ!!」


 チェダーを始めとする兇獣きょじゅう兵達はスカールの苛立ちに恐れを成していた。そんな中、一体の兇獣きょじゅうがスカールへ話しかけた。


「スカール様……」


「なんだマベル!? 俺様は今機嫌が悪い!! 下らん事ならただじゃ置かんぞ!!」


【マベル】

全身が黒い羽で覆われている鳥型の兇獣きょじゅう、頭がよく、強い者の懐に入り込むのがうまい。


 スカールはオームを滲ませ禍々しい目でマベルを睨みつけた。しかし他の兇獣きょじゅうが恐れている中、マベルは顔色一つ変えずにスカールへと話を続けた。


「このままやみくもに探していても切りがありません、どうでしょう? どこかで町を見つけ、町を襲撃してみては?」


「そんな暇があるかあ!! そんなことよりも先ずはヴィルヘルムだ!!」


「ええ、だからですよ、奴らはこの大陸の正義の味方を気取っている、なら派手に暴れ、町が襲われていれば……ねぇ?」


 スカールは落ち着き考えた、そんなスカールに更にマベルは続けた。


「探しても出てこないなら、おびき出す……馬鹿な人間共にはそれが一番効果的です」


「……クククッ……確かにそうだな、おいチェダー!! 大至急町を見つけろ!!」


「は、はい!! かしこまりました!!」


「クククッ!」


「さすがだマベルよ、その頭脳といい、力といい、二獣兵にじゅうへいにしておくのが惜しい、なぜ統獣兵とうじゅうへいの話を断った?」


「……わたしは、部下を従え統率するのは性に合いません、スカール様のお側でスカール様にお仕えするのが一番性に合っております」


「クックックッ……なるほどなぁ、変わったやつだがまあ良い、お前程の兇獣きょじゅうが常に側いるなら、それはそれで俺も助かる」


「ありがたきお言葉……」


 その時、スカールは何かに気付き空を見上げた。


「!!?? あ、あれは!?」


 スカールが見つけたのはバジムの元へと向かうテツであった。


「な、なんだあいつは!? とんでもない速さだぞ、向かっているのは……まさか、 バジム様の……?」


 するとマベルが声を掛けた。


「捕えますか?」


「いや待て!!」

(オームを感じられない……? いや、逆だ……あまりの途方もないオームに感覚がバグってる……そ、それにこのどこか懐かしい感覚……)


 マベルはスカールを覗き込んだ。


「スカール様……?」


 スカールは少し口を震わせながら声をだした。


「だ、大兇帝だいきょうてい様だ……」


「は?」


 するとスカールはマベルへと叫んだ。


「マベル!! 俺はバジム様の所へ行ってくる!! ヴィルヘルムの件はお前に任せるぞ!!」


 そういうとスカールは走り去って行ってしまった。そしてその間にもテツはクラスティック城の上空へと着いていた。


「ここがバジムのいる城かー、中々良い城じゃない!」


 テツはクラスティック城へと降りた。そして中へ入るとそこにはサグアが膝をつき、待ち構えていた。


「……君は?」


「お初にお目に掛かります、わたくしはサグアと申します。バジム様よりスクリアの欠片を授かり、微力ながらこの城でバジム様の大陸支配へ向けるお力添えをさせていただいております」


「へー、スクリアの欠片を? そんなことも出来たんだ? じゃあサグアも自分でオームを生み出せるんだ?」


「はい」


兇獣きょじゅうも?」


「はい」


「へー、じゃあ兇承獣きょせいじゅうと変わらないね! サグアもバジムくらい強いの?」


「いえ、滅相もございません、わたくしはバジム様のスクリアのほんの欠片をいただいたに過ぎません、バジム様の足元にも及びません」


「そうなんだ?」


「はい、以前アンジ様がお見えになった際、わたし達のような、スクリアの欠片を授かった兇獣きょじゅうのことを、兇欠獣きょかくじゅうとおっしゃっておりました」


兇欠獣きょかくじゅう……わたくし達って、他にもいるの? 兇欠獣きょかくじゅう


「はい、この大陸に存在する五つの大陸のうち、ここクラスティック王国にはわたくし、それとアダプター王国、キリザミア王国、フィルスター王国にそれぞれ一体ずつ存在し、各国を支配下に置いております」


「へー、じゃあ全部で四体いるんだね」


「はい」


「てかアンジ来るんだ? ここ」


「はい、たまにおいでになられます」


「ヘー」


 すると奥の扉からバジムが現れた。


「テツ様、やはりテツ様でしたか」


「やあバジム!」


「わざわざこのような場所までご足労いただかなくても、命を出していただければ、わたしがお伺い致しましたのに」


「ああ、いいよ、ちょと他に用もあったからさ」


「そうですか……」


「それよりバジム、兇欠獣きょかくじゅう? だっけ? 良い部下を持ったじゃない」


「恐縮です……」


「そんなこと出来るなんて知らなかったよ、さては隠してたな?」


「滅相もございません、兇欠獣きょかくじゅうに関しましては、わたしが発見したわけではなく、アンジ殿が……」


「アンジが?」


「はい、大陸全土を支配するにあたり、コツコツを兇獣きょじゅうを増やしていたわたしを見かねて……兇欠獣きょかくじゅうを各地に置けば、より効率的に支配を進められるからと……」


「へー、アンジの奴、そんなこと僕に一言も言ってなかったよ、アンジの悪い癖だなー」


「テツ様は、ご存じと思われたのでは?」


「それはない! だって僕なんも知らないもん! 全部アンジに教わってるから! アンジが言わなきゃ僕が知るわけないもん! アンジめ! 帰ったらしっかり言っておかなきゃだな!」


「はあ……」


 その時、王室の扉の向こう側にスカールが身を潜め、耳を立ててテツ達の話を盗み聴きしていた。


「ところでテツ様、ここへはいったいどのような御用で?」


「あ、そうそう、ガルイード、もう落としていいよ!」


「は?」


「だから、ガルイードはもう落としていいよって」


「そうですか……一体どのようなご心境の変化で?」


「ちょっと気になる人がいたんだけどさ、でもさっき話してきたんだけど……まあ、 もういいかなって」


 バジムはサオを思い浮かべた。


「そうですか……」


「ガルイードを落としたらこの大陸の支配は終わりだよね? そしたらあとはサグアに任せてバジムはゲルレゴンに帰って来なよ、今アンジが新しい大陸を探しに行ってるから、見つけたら次はそこを一緒に見に行こう」


「……かしこまりました」


「じゃあもう僕行くね、サグアもまたね!」


「はは!」


 そういうとテツはスクラシア大陸へと飛び立っていった。


「…………」


 去っていくテツを見つめるバジムにサグアが声を掛けた。


「バジム様、いかがいたしますか? ガルイードは?」


「……そうだな、サグア、ガルイード攻落の指揮はお前に任せる」


「かしこまりました」


「ガルイードはこの十年でかなり兵力を上げている、油断はするな、しっかりと兵を率いて確実に攻落しろ」


「はっ、かしこまりました」


「それと、ガルイードを攻落したらお前はそのままガルイードを拠点にしろ、兇将きょしょうとして、その付近を支配下に置け」


「ありがたき幸せ、ではここは……?」


「そうだな、ガルイードを落とす際、軍で一番の手練れを連れてこい、そいつを最後の兇欠獣きょかくじゅうとする、ここはそいつにくれてやる」


「それで五大兇将ごだいきょしょうの完成、ですね……」


「そうだ……晴れてこの大陸は完全に兇帝軍きょうていぐんの、大兇帝だいきょうてい様の支配下となる」


 バジムは不敵に笑った。


 一方スカールは物凄い勢いでクレルの泉へと向かっていた。


(出たぞ!! ついにガルイード攻落の許可が出た!! あの王国は俺のもんだ!! どの兇獣きょじゅうよりも先に!! この俺様があの王国を落とし!! 俺様が最後の兇将きょしょうとなってやる!!)


「グアーハハハハ!!!!」


 辺りにはスカールの異様な笑い声が響いていた。

次回第63話【伝書鳩】

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