第61話【再会……】
アンジは数日前から新大陸を探しに旅立ち留守にしていた。
テツは立ち上がると窓の外を眺めた。
「平和だなー…………」
そしてしばらく何かを考え込むと兇獣を呼んだ。
「おーい!」
すると王室の扉が開き、一体の兇獣が現れテツの前に膝まづいた。
「お呼びでしょうか、大兇帝様」
「うん、ちょっと出掛けて来るからさ、留守を頼むよ」
「かしこまりました、もしアンジ様がお戻りになられましたらなんと?」
「サオに会ってくるって言っといて」
「サオ様……ですね、かしこまりました」
「うん、じゃあよろしくねー」
「お気をつけて」
そういうとテツは王室を出た、そして階段を降り中庭へ出て大門まで着くと、上空へと浮かび上がった。
「ああー……いい天気だなあー……そういえば外に出るのも久しぶりだー」
テツは首を左右に傾けると次に左右の肩を回した。
「さて、ガルイードは……あっちか!」
そしてテツは物凄い速さでガルイードへと向かって行った、そして瞬く間にガルイード城の上空へとたどり着いた。
「久しぶりだなーガルイード! さて、サオはどこだろう?」
テツは集中した。
「ん? この下? サオ、城の中にいるんだ? なんで?」
そういうとテツは城の張り出し櫓へと降り立った。
「それも随分と下にいるなぁ……地下か……」
テツは渡り廊下を歩き、城の中へと入って行った。
城内を歩くテツだったが、途中一人の兵士と遭遇してしまった。
「!? な!? だ!!」
兵士が声を上げたその瞬間、テツは瞬時に兵士の懐に入ると身体に手を当てた、次の瞬間、兵士は音もなく消滅した。
「危ない危ない……騒がれると面倒だ、バレずに行かなきゃ……しかしアークの弱い人は分かり辛いなぁ……」
そういうとテツは慎重に城内を回り、サオのいる場所を目指した。そしてしばらくするとサオのいる地下牢獄へとたどりつた。
「ここかぁ……懐かしいなぁ、でもなんでサオはこんなところにいるんだ?」
テツは監視兵を見つけるとまた一瞬で消し去り、サオのいる牢獄の前までやってきた。するとそこには足枷を着けられ俯くサオの姿があった。
テツは牢獄の外からサオに声を掛けた。
「サオ!」
「!!?? テツ君!?」
「しぃ!!」
テツはサオに静かにするよう促し、牢獄の鍵を握り壊すと中に入った。
「サオ久しぶり! 元気だった?」
「テツ君!! ああっ!!」
サオは立ち上がりテツに近づこうとするも、足枷が詰まり転んでしまった。
「サオ、大丈夫?」
テツはサオを抱き起すとサオはテツに抱き着いた。
「テツ君!! よかった!! 無事だったのね!!」
「サオ……ははっ、サオの匂い……久しぶりだぁ……」
「本当に良かった!! よかった!!」
サオは落ち着くとテツの肩を掴み顔を見た。
「で、でもなんでこんなところに? アンジは? アンジはどうしているの? 一緒なの?」
「アンジはここには来ていないよ、でも普段は一緒にいる、あっちにあるスクラシアって大陸のゲルレゴンて王国にいるよ」
「スクラシア……ゲルレゴン王国……? な、なんでそんなところに?」
「んんー、流れで……? どこか拠点を作ろうってアンジと話して、たまたまたどり着いた大陸のおっきな城がそこっだったから」
「拠点て……あ、あなた達はいったい何をしているの?」
「世界征服!! この世を支配して、僕、大兇帝になるの!」
「え……? テ、テツくん……? な、なにを言っているの……?」
サオ顔をひきつらせた。
「なにって、だから、この世界を支配して……」
「アンジは!? 今アンジはどこにいるの!?」
「ああ……アンジは今、他の大陸に強い部下を探しにいってるよ」
「ええ……? 部下……?」
(なに? どういうこと? テツ君は何を言っているの?)
サオはわけがわからず混乱し始め、頭を抱え込んだ。
「サオ大丈夫?」
サオは頭を振り落ち着かせると、再びテツの顔を見た。
「テツ君……アンジに合わせて……アンジと話がしたい……」
「うん、僕も今日はそのつもりで来たんだよ、サオも一緒にスクラシアに行こう!」
「スクラシア……え、ええ……わかったわ」
テツはそういうとサオの足枷を消滅させた。
サオが立ち上がるとテッは牢獄の扉へと向かいながら呟いた。
「いやーよかった……これでガルイードが落とせるよ、ずっとサオがいてここだけ攻めれなかったからさ、いい加減バジムだって拗ねちゃうよね」
サオは足を止めた。
「え? どういうこと? わたしがいたからガルイードが落とせなかったって……?」
「ん? そうだよ、さすがにサオが居たまんまで兇獣に攻めさせたらサオ死んじゃうかもしれないじゃん? だからずっとバジムにガルイードへの攻撃だけは待たせてたんだよ」
「バジム……」
サオは兇獣にとらわれた後、自分をガルイードまで連れてきた兇獣を思い出した。
「そうバジム、あ……バジムって僕の部下ね!」
サオは少し震え始めた。
「テツ君……」
「ん? なにサオ?」
「もしかして……この大陸の各地に兇獣を送り込み、人々を苦しめているのって……あ、あなたなの……?」
「うん、そうだよ! だから早くサオも一緒に行こう! 楽しいよ!」
サオの顔から一瞬で血の気が引いた。
「ほら、サオ! 早く! 兵士が来たらめんどいから」
「行けない……」
「え?」
「私が行ってしまったらこの国を亡ぼすんでしょ? そんなの……行けるわけないじゃない……」
「ええ? なんで?」
サオはテツに近寄り肩を掴んだ。
「テツくん! 嘘でしょ!? 冗談なんでしょ!? ねえ!! アンジと一緒にいるなら!! アンジが、アンジがそんなことさせるわけない!! なにかの間違いよね!? 本当のことを言って!!」
「全部本当だよ、むしろ大兇帝のことだったり、スクリアのことだったり、全部教えてくれたのはアンジだよ」
「そ、そんな……」
サオは絶望を感じ顔を伏せた。
「サオ、大丈夫……?」
サオはしばらく考えると顔を上げた。
「と、とにかく……わたしは一緒にはいけない……けど、アンジに、アンジに会ったらわたしに会いに来るように伝えて、それと、それともう一つ……」
「…………」
「あなたには息子がいる…………わたしとあなたの子よ、名はティグ、もう十一歳になるわ、あなたに似て誠実で真っ直ぐな子……ティグもあなたに会いたがってる、お願い……帰ってあなたの顔を見せてあげて、声を聞かせてあげて、深く抱きしめてあげて、お願い……あなたは……あなたは父親なの……」
サオはテツの肩を強く握り下を向いた。
「サオ……」
テツはサオの手を避けると立ち上がりサオを見下ろした。
「残念だけど難しいかもね」
「え……?」
「アンジはサオに会う気はないよ」
「そ、そんな、嘘よ!」
「嘘じゃない、こないだ聞いたから、サオには興味がなさそうだったよ」
「な、なんで……」
「それは、サオに力がないからだよ……」
「力……? 力ってどういうこと?」
テツは不敵に笑いだした。
「力だよ……世界を支配する為に、僕らの役に立つ程の力さえあれば、アンジもきっとサオをまた好きになる……」
「テツくん……?」
テツは右手を構えた。
「サオも、こっち側へおいで……きっと楽しい……」
「こ、こっち側……?」
するとテツはサオの腹部に手をめり込ませた。
「あ……うぐぅ……ああ……ああああああああああ!!!!」
「ふふっ、はは、はははは、あははははははは!!」
テツは禍々しい表情で高笑いをした。
「…………あれ?」
しかしテツはスクリアを生み出すことが出来なかった。
「あ……そうだ、こないだ出したばっかだったんだ……」
テツはサオの腹部から手を抜いた。
「うぐっ!! かはっ……」
サオはその場に倒れた。
テツは倒れたサオを見下ろすと、背を向け牢獄の扉へと向かった。
「まあいっかぁ……アンジもいらないって言ってたことだし」
そういうとテツは牢獄を出て行った。
「う、うぅぐぅ……ア、アンジ……」
サオは腹部に手を当て、自らリスナで回復させていた。
そして程よく兵士が駆け付けた。
次回第62話【許可】




