第60話【事実】
「グ、グウウウ……」
「はあはあはあ……さあ答えろ!! 母さんはどこだ!!」
クラーケルは他の兇獣達に目を向けると叫んだ。
「おいてめえら何してやがる!! こいつを殺せえ!!」
すると数体の兇獣が飛び掛かってきた。
「!!??」
「ギョヲヲヲ!!」
「ギャオオオ!!」
しかし兇獣達は一瞬にして切り裂かれた。
「なっ!?」
兇獣達を切り倒したのはウォルであった。
「確か、一対一という話でしたよね……?」
「ググウウゥゥ……」
悔しがる表情のクラーケルにティグは再び叫んだ。
「おい!! 母さんはどこだ!! 言え!!」
「ヌググゥゥ…………」
「言ええ!!!!」
ティグは剣を傾けクラーケルの首にめり込ませた。
「グアアアアア!! わ! わかった!! 言う!! 言うからやめてくれ!!」
ティグは剣を押し付ける手を緩めた。
「ハアハアハア……お、おめぇの母親は…………もうガルイードへ帰した……」
「嘘をつくな!! そんなわけないだろう!!」
「ほ! 本当だ!! バジム様のご命令だったんだ!! 俺らが逆らえるはずがねえ!! あの女は!! バジム様が直々にガルイードへ連れて帰った!!」
それを聞いたウォルは顔色を変えた。そしてティグも不思議そうに聞いた。
「バ、バジム様……? 誰だそれ? お、お前らの大将はスカールじゃないのか?」
「ス、スカール様よりも、は、遥か上のお方だ……わ わかるだろう? そんな人の命令に俺なんかが逆らえるわけがねえんだ……」
「スカールよりも遥か上……? な、なんでそんな奴が!? だったら、だったらそもそもなんで母さんをさらったんだ!?」
「さらえと言ったのはスカール様だ……でも、その後バジム様があの女は返せとおっしゃられたんだ……俺は言われた通りに動いただけだぁ……」
「ほ、本当だろうな!?」
「う、嘘じゃねえよ、信じてくれよ……俺だって死にたかねえ……な、頼むよ、正直に話したんだ、見逃してくれ……な? な?」
「くっ……」
ティグは少し考えこみ、そしてクラーケルの首から剣を戻した。
「…………母さん…………」
するとティグは走り出した。
(母さん! 母さんはガルイードに! ガルイードにいるんだ!!)
それを見たローガンが叫んだ。
「お、おい! ティグ!!」
ティグは振り向かずに走り去っていってしまった。
「おいおいおい……」
そしてクラーケルが起き上がろうとしたその時、クラーケルの左肩に剣が突き刺さった。
「グギャアアアアア!!!!」
剣を突き刺したのはウォルであった。
「僕もいくつか質問があるので答えてください、バジムとは何者ですか?」
「ガガァァァ……バ、バジム様は、この大陸すべての兇獣を従えるお方だ……」
「この大陸全ての兇獣を……?」
「そ、そうだ……」
「あなた達のトップは大兇帝と呼ばれる男のはず、その男と大兇帝との関係はなんです?」
「だ、大兇帝様はこの世の全ての兇獣の上に立つお方だ、バジム様は大兇帝様により生み出され、 大兇帝様に命を受け、この大陸全土の支配を進めている……」
「そうですか……ところであなたも大兇帝によって生み出されたのですか?」
「お、俺は違う……俺はバジム様により生みだされた……お、俺はバジム様のオームによって活動出来ている……」
「バジムも兇獣を生み出せる……他に、兇獣を生み出せるものはいるのですか?」
「こ、この大陸に存在するガルードを除く王国それぞれに、王国を支配している方達がいる、その方々は皆兇獣を生み出せる……バジム様を含め、あの方達は俺たちとは違い、自ら体内でオームを作り出せるんだ……」
「なるほど……では、バジムはなぜティグさんの母親をガルイードに返したんですか?」
「そ、それは俺もよくわかんねえけど、噂ではあの小僧の母親、サオという女が、大兇帝様のお知り合いだと言う話だ、だからバジム様は大兇帝様のお怒りに触れないように、サオという女をガルイードに戻したんだ」
「大兇帝の知り合い……? どういうことです? なぜ人間が大兇帝と?」
「そ、それは俺にもわからねえよ! も、もう知ってることは全て話した、もう勘弁してくれえ!」
「…………」
ウォルはクラーケルに刺した剣を抜いた。
「グアッ!!」
クラーケルは身体を引きずりながらもその場から逃げ始めた。
ウォルは剣を振り、血を払うと剣を鞘に納めた。
「!!??」
その瞬間、クラーケルは大爆発を起こし消滅した。
「はああああぁぁ…………」
そしてウォルはさらに集中し、両手を広げて全身から濃いアークを散布させるとその後手を握った。
するとウォルのアークが一瞬消え、次の瞬間、辺り一面大爆発を起こした、そしてそこにいた全ての兇獣は消滅した。
そんなウォルにローガンが駆け寄った。
「おいウォルー、やるならやるって言えよ」
「あ、すみません、でもローガンさんなら大丈夫ですよね、頑丈ですから」
「そういう問題じゃねえって……ったく、ティグの奴も行っちまうし、久しぶりの任務も失敗するし、踏んだり蹴ったりだな……」
ローガンは頭を掻いた。
「まあまあ、でも収穫はありましたよ」
「……さっきの話か?」
「はい、どうやら……ティグさんのお母さんが、なにか重要な鍵を握っているみたいですね……長年兇獣がなぜガルイードを襲撃しなかったのかも、これでようやくわかりました」
「そうだな……ティグは恐らくガルイードへ向かったんだろう、どうする? 追いかけるか? あの傷だ、そう遠くへはまだ行っていないだろう」
「いや、別に放っておいて良いんじゃないですか? あの人は何かと状況をかく乱させるところがあります、アミさんには悪いですが、ヴィルヘルムにはいない方が良いですよ、たいして強くもないし」
「んんー、まあ問題児なのは否めんが、戦闘に関しては今の戦いといい、成長は著しいんだがなあ……」
「そうですか? とにかく僕らはカナッツへ向けて鳩を飛ばし、次の指示を待ちましょう」
「そうだな……」
そして二人はカーガモゥの外へと歩き出した。
――スクラシア大陸
ゲルレゴン城の王室ではテツが一人、頬杖をつきスクリアを眺めていた。
「…………」
次回第61話【再会……】




