第58話【因縁】
ティグ達はカーガモゥ内に入ると建物の陰に隠れながら詮索を始めた。
そしてローガンは町並みを見ると呟いた。
「思っていたよりも大きな町だな……」
ティグはローガンに問いかけた。
「どうやってスカールを探すの? この町全部の建物をしらみつぶしに探すの?」
「いや、カーガモゥにはこの大陸で一番大きな海洋生物専門の見世物小屋がある、いるならそこだろう……」
「見世物小屋……じゃあ、まずはそれを探すんだね」
「そうだ、いくぞ」
そして三人は物陰に隠れながらも内部へと徐々に侵入していった。
「まて、兇獣だ」
ローガンが二人を静止させると、目線の先には二体の兇獣がいた、ティグとローガンは声を殺し身を潜めた。
「?! ウォル!?」
しかし、ふとティグが横を見るとウォルの姿はそこになかった、そして再び兇獣へと目線を送ると兇獣はウォルの足元に倒れ、その後アークの光と共に消滅した。
そしてウォルは二人の元へと戻ってきた。
「え? ウォル? なにしたの?」
「切った後に消滅させました、バレる前に消してしまえば良いと思って、こそこそ移動するのも時間が掛かるので」
「あ、ああ……そう……」
(それにしたってなんて速さだよ……やっぱりウォルはすごい……)
するとローガンがウォルに声を掛けた。
「いや、やつらも仲間が減れば侵入者の可能性を考える、やもない時以外はこの中で兇獣に手を出してはいかん」
「はい……すみません……」
ティグはウォルのとてつもない強さの半面に、素直な面もあるのだなと思い、少しほっこりとした表情でウォルを見た。
その後、三人は兇獣に見つからないよう、慎重にカーガモゥの見世物小屋を探した。
「これだ……」
そしてついに見世物小屋を見つけると、ティグはその大きな建物に驚いていた。
「こ、これが見世物小屋……」
するとローガンがウォルへと問いかけた。
「どう思う……?」
「うーん……いませんね」
するとティングが二人に問いかけた。
「え? いないって? スカールが? いないの?」
「んー……アークもそうだがオームも完全に消すことは出来ない、もしこの中にスカールがいるとしたら、ここまで接近すれば流石にスカールのオームを否が応も感じるはず……しかに何も感じない……」
「そ、そうなんだ……じゃあ、別の建物なんじゃ?」
するとウォルが呟いた。
「いや、もうそれもないです」
「え? それもないって?」
「ここが町の中心部、今やっとこの町全体へのアークの散布が完了しました、もしスカールがいるなら僕のアークがスカールのオームに反応しています、断言していい、この町にスカールはいません」
「そ、そんなことも出来るの……? え、でもスカールがいないなら……どうしよう……」
「うーん……理由はわからんが、いないんじゃあ仕方ない、一旦町を出てしばらく待ってみるか」
「そ、そうだね、じゃあ……とりあえず出る?」
「その前にこの中を見ておこう、いないのであれば逆に都合が良い」
「そっか、うん、わかった……」
三人は中へと入り中の構造をしっかり確認して出てくると、ローガンはご機嫌で二人に声をかけた。
「中の構造も把握できたし、なんだかんだで良い収穫だったな! この町がスカールのアジトだってのは間違いない、後は外へ出てゆっくりと主人の帰りを待つことにしよう!」
ウォルが答えた。
「そうですね」
二人が町を出ようと歩を進めた時、ティグがついてきていないことに気付き、ローガンが振り返った。
「おーい、ティ……?」
ローガンがティグを見るとティグは何かを見ていた。
「お、おい……ティグ?」
するとティグは両腕両足からアークを滲ませた。
「ティグ!!??」
「き 貴様はぁぁ……」
ティグは歯を食いしばり、髪を逆立てた。
そして次の瞬間。
アークを放出させ、叫びながら飛び出した。
「クラーケル!!!!」
ティグが飛び出したその先には、サオを連れ去ったあの憎きクラーケルがいたのであった。
「!? お、お前は!!」
クラーケルはティグに気付いた、ティグは剣を抜きクラーケルの眼前まで迫っており、剣を振り下ろした。
「おおおおおおお!!!!」
「クッ!!」
クラーケルは間一髪剣を躱すと上空へと飛び上がった、しかし剣は腹部を掠っており、クラーケルの腹部から血が流れた。
「チイッ! て、てめえ! なんでこんな所に!?」
「うるさい!! そんなことより母さんをどうした!? どこへ連れて行った!? 母さんを返せ!!」
クラーケルは最初こそ驚き動揺をしていたものの、すぐに落ち着きを取り戻し、不敵に笑いだした。
「ケッケッケッ! 母親を取り戻しに来たのか……しかしよくここがわかったなあ……」
「いいから答えろ!! 母さんはどこだ!!」
「ケッケッケッ……そう慌てんな、俺を倒せたら教えてやるよ、てめえにゃあ借りがある、丁度いい……ここでこないだの借りをかえしてやるぜ!」
するとティグはクラーケルを見てあることに気付いた。
「お、お前、腕が……」
「あん? これか? こんなもんオームと時間さえあればいくらでも元通りになる、だからって恨みが消えたわけじゃねえ、この俺の腕を落とした罪は、きっちりとてめえの身体で償わせてやるぜ!」
「やってみろ! 必ず母さんの居場所を吐かせてやる!」
ティグは構えた。
「ケッケッケッ……ん……? あれは……? こいつの仲間か?」
クラーケルはローガンとウォルに気付いた。
(…………!!!! あ! あいつらは! ヴィルヘルム!! 間違いねえ!!)
するとクラーケルは再び不敵に笑い出した。
(ケッケッケッ……ついていやがる……スカール様がなぜか自らヴィルヘルムを探しに出ている時に、まさかやつらの方からノコノコと現れるとはなぁ……ここで奴らを捕らえて、この俺がバジム様に奴らを差し出せば……ケッケッケッ……)
次の瞬間、クラーケルは大きく息を吸い込むと、声ではないなにかを吐き出した。
「!!??」
すると町から続々と兇獣が現れた。
「なに!? くっ! 貴様!!」
「ケッケッケッ! 予定変更だ、てめえと一対一で戦ってる場合じゃねえ、問答無用でお前ら全員捕らえる!!」
クラーケルは腕を上げた。
「かかれー!!」
クラーケルが腕を下げた瞬間、兇獣達は一斉に三人に襲いかかった。
「!!!!」
次の瞬間、ウォルとローガンは一瞬にして大量の兇獣を倒した。
「な?! なにい!?」
それを見たクラーケルは驚きを隠せなかった。
(な、なんだあの二人は!? と、とんでもねえ強さだぞ、こ、こんなの三獣兵程度の兇獣がいくら束んなっても勝てっこねえ!!)
するとローガンがティグに叫んだ。
「おいティグー、どうしたー……せっかくいい感じで調査出来ていたのに、見つかっちまったじゃないか」
「ご、ごめんローガン……でも、でもこいつだけは! こいつは母さんを連れ去った張本人なんだ! ここで逃したらいつまた見つけられるかわからない! どうしても放って置くわけにはいかなかった!」
「んんー……まいったな……どうするよウォル?」
「まあ、見つかってしまったものは仕方ないですよね、なんにもしないで帰るのもつまらないし、どうせなら全滅させましょうよ」
「んんー……そういう事じゃなくて、任務が……」
「だってこれはティグさんが勝手に動いてこうなったことです、僕らのミスではないですよ」
「んんー……まあそうなんだけど……」
その時ローガンに兇獣が飛びかかって来た。ローガンはその兇獣を殴り、顔面を破壊した。
「ああー! もうわからん! とにかく全員ぶっ倒してから考える!!」
ローガンとウォルは再びすごい勢いで兇獣達を倒し始めた。
クラーケルはそれを見て焦っていた。
(どうする……あの二人を相手にしていたら全滅してしまうぞ、かといって俺だけ逃げたって……そもそもあの二人から逃げられるのか……? くうぅ…………ん、まてよ……)
するとクラーケルはローガンとウォルに叫んだ。
「おい! ちょっと待て!!」
「ん? なんだ?」
ローガンが振り向くと、クラーケルは地上に降りた。
「この小僧と俺には互いに因縁がある、まずはこの小僧と俺と、一対一で戦らせてくんねえか? 納得のいく決着が着くまで、お互いの仲間は手出し無しでだ、こいつとは正々堂々と、気兼ねなく一対一で戦りてえんだ」
ローガンとウォルは互いに顔を見合わせた。
「だってぞティグ! どうする?」
ティグはクラーケルを睨みつけたまま答えた。
「俺は最初からそのつもりだ!!」
ローガンはクラーケルに手を振った。
(ケッケッケッ! やったぜ! あの小僧を痛めつけて、小僧を盾にして逃げ切ってやる! ヴィルヘルムを捕らえられないのは残念だが仕方がない、奴らは強すぎる……とにかくここはなんとしてでも逃げ切ってやるぜえー! ケッケッケッ!)
するとクラーケルは上空へとゆっくり飛び上がると、右手にオームを集中させた。
「小僧……覚悟しろよ……」
「お前こそ!! 絶対に倒す!!」
両者互いに動いた。
次回第59話【底力】




