第57話【調査】
「はあはあはあ……や、やった……ううぐぅ……」
ボウルはダメージが深く、片膝をついた。
するとフィルが近くに寄り手を差し伸べた。
「やったな」
「……ああ」
ボウルがフィルの手を取り立ち上がると、オルトが皆に声を掛けた。
「とりあえず一旦モラルに戻ろうか、ドリル達も置いてきちまったしな」
「はい」
そして一向はモラルへと向かった。
一方、一部始終を見ていたザックは木陰から姿を現し戦跡を歩いた。
「あいつ等……マジでスクラードを倒しちまいやがった……あの小僧といい、急に現れたあの男といい、ガルイードの兵士がここまでとは……」
ザックは笑った。
「頼もしいじゃねえか、こりゃあ、早いとこ隊長に報告した方がよさそうだな」
するとザックは姿を消した。
――モラル
モラルではドリル達の元へ正面組も集まっており、全員が終結した。
そしてオルトが全員の顔を見ると呟いた。
「これだけか……」
カリーが声を掛けた。
「さすがに今回の兇獣は骨が折れたっすね、こりゃあうんと報酬もらわねえと割りにあわねえよ、なあジレット」
「がははは! 一か月ぶっ続けで宴会開いてもらわねえとな! 酒だ酒だ! がははは!」
するとフィルに肩を貸されたドリルが現れジレットに言った。
「お前は言われんでも毎日宴会してんじゃねえか……」
「おおドリル! お前、大丈夫か!? 足が無えじゃねえか!」
「おかげ様でな……」
そしてドリルはフィルを見て肩を叩いた。
「しかし……今回お前はよくやってくれたよ……」
「ドリルさん……でも……」
フィルは下を向いた。
「気にするな……命があるだけまだいい……」
するとオルトが後ろから二人に声を掛けた。
「うむ……見事な作戦だった、おかげで逃がさずに済んだしな」
それを聞いたロコがオルトへ声を掛けた。
「最初からあんたが来てりゃ、もっと楽にいけたんじゃねえの?」
「ロコー、そういうなってー」
「がははは! 隊長はおまけみたいなもんだからな! なんにせよ勝ったんだ、いいじゃねえか! がははは!」
その時、民家の陰からキリザミアの国王とマルコスが現れた。
それに気付いたオルトは国王の前に行くと片膝を落とし敬礼した。
「国王様……ご無事で何よりです」
「おぉ……ガルイードの兵よ……面を上げてくれ、そなたらがいなければ今頃ワシらの命は無かった……本当に助かった、礼を言う……」
国王は深々と頭を下げた。
そしてマルコスは頭を下げたままオルトへと感謝を言った。
「申し訳ない……あなた方の戦闘は見させていただいていた……だが、あまりのレベルの違いに私にはどうすることも出来なかった……くうぅ……」
「顔を上げてください……あなたは国王を護る身、軽率な判断は出来ない事情は理解出来ます」
マルコスは片足を失ったドリルや傷だらけの兵士達を見た。
「本当に申し訳ない……本当に……そして、ありがとう、ありがとうございます……」
オルトはマルコスの背中に手を当てると振り返り、兵士達の顔を見た。
「さあ、ガルイードへ帰ろう」
オルト達はガルイードへと向かった。
マルコスは小刻みに震えながら再び頭を深く下げた。
――ベルニット海岸
その頃、ティグ達はウィザードの指示の元、カーガモゥを目指してベルニット海岸を歩いていた。
「ねえローガン、カーガモゥに着いたら何をするの? スカールがいるかいないか確かめるだけ?」
「んん? それもそうだが、確実に勝つためには情報が必要だ」
「情報……」
「ああ、カーガモゥ内や周囲の地形、スカールのアジトの場所、兇獣の数や配置、情報は多ければ多いほど戦闘を有利に進められるからな」
「ヘー……結構重要なんだね……」
「重要も重要よ! 情報収集の出来次第で戦闘の難易度がガラッと変わるからな!」
「そうなんだ……」
「だからこそ、大事なのは情報収集中に絶対に兇獣に見つからないことだ、見つかってしまってはそもそも拠点を変えられかねんし、逆に罠を張られる可能性も出てきてしまうからな」
「そっか、なるほど……」
「まあ、こういうのは身軽なアミが得意でな、今まで大体の調査はアミがやっていたんだがな」
「アミが……? そ、そうだったんだ……」
ティグは少し悪びれた様子で俯いた。
「がっはっはっ! 気にするなあ! この調査でしっかりと名誉挽回すればいい!」
ローガンはティグの背中を叩いた。
「う、うん……」
ティグは黙って前を歩くウォルに話しかけた。
「ウォル、ウォルも何度か調査したことはあるの?」
「いえ、僕は今回が初めてですよ」
「え? そうなの? そっか、じゃあローガンが頼りだね……」
「いや、大丈夫ですよ、僕こういうのも得意ですから!」
「得意って……初めてなんだよね?」
「はい! まあ、でも兇獣に見つからないように周りを見て回るだけですからねぇ、見つかったら殺せばいいだけですし、大丈夫! やっぱり僕得意ですよ!」
「そ、そっか……」
(あ、相変わらず自信に満ち溢れているなぁ……)
「むっ!?」
すると突然ローガンがなにかに気付き足を止めた。
「ローガン……?」
ティグが前を見ると、三体のトルボがこちらへ迫ってきていた。
【トルボ】
細長い胴体に細長い四本の羽根を持つ、丸い大きな目に、太く鋭い歯を持つ下顎が特徴。
「兇獣!? ローガン! どうしよう!? 見つかってるよね!?」
「まあ、この辺りならまだ大丈夫だろう、ただし、絶対に逃がすなよ!」
「よし……」
ティグは剣に手を掛け腰を落とした。
「え?」
するとウォルは立ち止まることもなくトルボの方へと歩を進めた。
「ウォ、ウォル!?」
三体のトルボは左右正面からウォルへと迫った。
「キシャアアア!!」
すると、トルボがウォルへ接近した瞬間、三体とも一斉に爆発した。
「ええ?!」
そしてウォルは何事もなかったかのように歩みを進めた。
「ええええ!?」
ティグは小走りでウォルのも元へ近寄り声をかけた。
「ウォル! い、今のは?」
「はい? 今のはって、兇獣ですか? 爆破しました」
「いやいや! だってどうやって!? ただ歩いてただけじゃん!!」
「僕の周囲には常にうっすらとアークを散布しているので、その範囲に入ってくれれば、ああしていつでも爆破出来るんですよ」
「そ、そうなの……?」
(そういえば前にロッドが言っていた……一流の魔法士は常にアークを燃やした状態でいるから、魔法への還元ラグが無いと……でも……)
ティグは不思議な顔をしてウォルに再び尋ねた。
「ウォルって剣士なんだよね?」
「はい! でも魔法も得意なんです!」
「は、はあ……」
(こ、こりゃ、なんでもありだな……)
「がっはっはっ! ウォルがいれば百人力だなあ! がっはっはっ!」
そうして一行はベルニット海岸をひた歩き、カーガモゥの南西まで行くと、そこから北へさらに進み、カーガモの北西にあるカルミード山脈を歩いた。
「ふむふむ……なるほどなあ……」
「なになに? どうしたのローガン?」
「んん? やっぱり攻めるなら夜に海側からだなと思ってな」
「そうなの? なんでなんで?」
「この辺は山だろう? 夜になると風ってのは山側から海側へ流れるんだ、兇獣の中には嗅覚の優れた奴もいる、風上から攻めると匂いで勘付かれる可能性があるからな、こういう地形の場合は風下から攻めた方がいい」
「へえー! すげえ!」
「それにスカールは泳ぎの得意な兇獣だからな、逃げ場を塞ぐ為にも海側から攻めるのが一番だ、そしてそのタイミングは夜が最適ってこった」
「なるほどー! すごいやローガン! この為の調査なんだね!」
「がっはっはっ! 全部隊長に教わった事だがな! じゃあ周辺の調査も終わったことだし、次はいよいよカーガモゥへ潜入するぞ、ここからは慎重に、気を張っていくんだ!」
「いよいよカーガモゥ……うん、わかった!」
一行は再びベルニット海岸へと戻ると、夜を待ちカーガモの付近へとやってきた。
次回第58話【因縁】




