僕と師匠とおふだ
『第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。
キーワードは『おふだ』です。
また言葉遊びで書いてみました。
なお、主人公と師匠の性別はどちらとも取れる仕様となっております。
どうぞお楽しみください。
僕は見習い陰陽師!
一人前を目指して毎日修行中!
「おい、九頭!」
「はい師匠!」
師匠は僕を悪霊から助けてくれた大恩人!
取り憑かれて苦しかった時、
『よく頑張ったな。もう大丈夫だ』
と頭を撫でてくれた事が忘れられない。
弟子になってからはすごく厳しいけど、
『お前は霊力がある分、悪霊にも狙われやすい。力の使い方を覚えないと命に関わる。真剣にやれ!』
それは僕のためってわかってるから頑張れる!
今日はどんな修行だろう?
「来たか。私はこれから少し出かけてくる」
「わかりました! 僕の修行はどうします?」
「お前は今日はオフだ」
「!」
今日はおふだ!?
おふだを書く修行!?
陰陽師の重要な道具の一つ!
とうとうやらせてもらえるなんて!
「何だ、そんなに嬉しいのか?」
「はい!」
「ま、羽を伸ばすんだな」
「はい!」
跳ねを伸ばす!
書き方までアドバイスしてくれるなんて!
よーし、頑張ろう!
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい!」
さぁ、頑張るぞ!
師匠がやるように清めた水で墨を擦って、その間に呼吸と心を整える……。
「……よし」
お手本のおふだを見ながら、丁寧に、丁寧に……!
あぁ! 間違えた!
ちょっとでも違うと効果ないんだよね……。
今度こそ跳ねを意識して……!
あぁ! 失敗!
ううー! 今度こそー!
「……ふぅ」
「あ! 師匠! お帰りなさい!」
「何だ。出かけてなかったのか」
「はい! おふだ書いてました!」
「は?」
師匠がぽかんとしてる。
こんな顔するの初めて見た。
「え、何で……?」
「何でって、師匠が『今日はおふだ』って言ってくれたじゃないですか」
「それで何で霊符を書いてるんだ!?」
「えっ?」
「えっ?」
あれ? 何かおかしいぞ?
「……師匠、今日の修行はおふだ、ですよね?」
「そうだ! オフだ! なのに何で霊符を書いたのか聞いてる!」
「えっ?」
「えっ?」
合ってるはずなのに、何で師匠は固まってるんだろう?
「……待て。私は休みという意味で『オフだ』と言ったのだが、お前はそれを『おふだを書く修行』と勘違いしたのか?」
「え……!」
か、勘違い!?
「師匠! ごめんなさい!」
「……いや、私の言い方にも問題があった」
師匠、声ぷるぷるしてる……。
「……で、何枚くらい書いたのだ……?」
「あの、五十枚くらい……」
「こひゅ」
「師匠ー!」
おふだを書く紙はすごく高いそうで、気絶から目を覚ました師匠に、
「霊符の修行はしばらくしない! いいな!」
って怒られちゃった。
一人前への道は遠いなぁ……。
読了ありがとうございます。
『ポイントカードはお餅ですか?』系の同音異義語コント、いかがでしたでしょうか?
こういうのは思い付くと楽しいですね。
……面白くなるかは別として……(汗)。
ちなみに主人公は男の子なら九頭能栄、女の子なら九頭乃葉となっています。
……赤ちゃん産まれる前のお父さんみたい……。
元がわかった人は僕と握手!
次回は『体育祭』で書こうと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。