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わたしとことりと(ry



「…ああ、ほら、見てみな。ここから見える庭の四阿ガゼボでお子達がお茶会をしている」


エーファに言われて下へ視線をやると、ふんわりピンクのドレスを着た女の子と、テオよりは少し大きいだろうと思える男の子が2人で紅茶を飲んでいるのが見えた。


3段のケーキスタンドには、色鮮やかなケーキやタルトが並んでいる。



…あらまぁ、こんな時間にあんなに食べて。夕食入る訳ないじゃない。


呆れてエーファを見やると、彼女も肩を竦めている。


何でも、侍女頭が姉姫の乳母だったとかで、子どもたちには甘いらしい。


親が放置しているなら、他者からの愛情も確かに必要だし、ちょっとしたご褒美なんかも悪くない。偶になら羽目を外して食べ過ぎるのも良いんだろう。でも、こんなのは愛情でも何でもない。


「ねぇ、エーファ、あれ、止めに行っては駄目かしら? さすがにこのままではあの果物を笑えないことになってしまうのではなくって?」


瑠凪は、厨房だいどころにあった、晩白柚と見紛う巨大な果実を指差す。

…ただ、黄色ではなく桃色なので、包丁当てたらナニカが産まれてくるのではないだろうかと一瞬でも思ったのは内緒であるが。



「うーん…、私の立場としては止めて欲しいのは山々だけれど言う事は出来ないからね…。ルナイリス嬢より、旦那様に出向いて頂くが良いかもしれない」


「リーンハルト様に? じゃあ、お願いしてみます」


早速、この間教わった陣を空中に描く。

文鳥ふみどり』と呼ばれる魔法陣で、近距離は小鳥、長距離は猛禽類がセオリーらしいが、取りあえず、近場用は、シマエナガに設定してみた。白いふわふわと円らな黒い瞳の愛らしさは天下一品である。…ちなみに長距離用は、長い距離を飛ぶ渡り鳥の一種、キョクアジサシに設定。

…設定方法? スマホに入ってた写真をこっそり。


…リーンハルト様は絶句してたけど。


シマエナガがぴよぴよ飛んでいく。

…癒される…あのもふもふ…。


戻ってくるのを待っていたら、何と、リーンハルト様が庭に出て来て姉弟に近づいていく。

声こそは聞こえてこないものの、分かり易い程明確な怒りのオーラが駄々漏れている。


完全に萎縮している子どもたち。


…あれは宜しくない。


まぁ、期待する方が間違っていたかと肩を竦めながら再度陣を描く。


まだ未熟なので本当に近距離しか無理だが、音声付与も可能だそうなので、「怒鳴れとはお願いしておりません」と、怒気を漂わせつつ設定する。


…やーん、テーブルの上で地団駄踏んでるシマエナガの愛くるしさ…、ご飯3杯はイケるわ!

込めたメッセージの語調に合わせて動けると後で聞きました。

でも、この円らな黒い瞳では、幾ら睨もうが迫力は皆無だよね…。


リーンハルト様がこちらを見上げてシニカルな笑みを浮かべ、こちらへ来いと手招きする。

しょうがないか。日本いせかいで培いしおかん属性、いざ、顕現!…なんてね。


阿呆な事を考えつつ、ゆっくりと庭に出る。


うわあぁぁ…何たる美形姉弟…。


姉姫の方はアマーリエ様を彷彿とさせる美少女。

ん? そうか。姪っ子ちゃんだもの。似てて当然よね。


何かさー、アマーリエ様って、血筋といいルックスといい。パーフェクトよね。王妃様とかやってないのがおかしいくらい。

…王太子の婚約者に決まりかけてたのをあの宰相様(宰相なんて腹黒じゃなきゃ務まらないでしょうし)が横から掻っ攫ってたとか、十分ありそう。


莫迦げたことをつらつら考えつつ、まだぎこちない御辞儀カーテシーを披露する。


…相手はまだ幼いけれど、公爵家の御令嬢と御令息。

伯爵家の、しかも妾腹の身という設定では、こちらから声掛けなど畏れ多くて出来る訳もなく。

ーって、某薔薇漫画にあったな、そんな設定。

なんて考えつつ、その時の王太子妃の台詞が脳裏を過ってたので反応が遅れた。


「伯父様の教え子かしら。堅苦しい挨拶は不要よ」


…鈴を転がすような声って、ホントにあるんだ。



「ルナイリス・フォン・リートミュラーと申します。以後、見知りおき下さいませ」


「わたくしは長女のエルヴィーラよ。こっちは弟でコンラーディン。リートミュラー伯爵令嬢ね。ねぇお願い。もう一度先刻の文鳥ふみどり見せてもらえない? 本当に可愛らしいわ。リートミュラー家の領地に、あんな可愛らしい小鳥がいるの?」


キラキラと輝く眼差しにこてりと傾けられた細い首筋が、あざといほど愛くるしい。


文鳥ふみどり玩具おもちゃではないよ、エル」

何故か冷ややかなリーンハルト様。

「分かってますわ、伯父様」

とは言っているものの、期待に満ちた眼差しは変わらないままで。


少し考えて。


うん、思いついた。


「畏まりました。…ですが、お夕食後に致しましょう。本日の夕食は、許可を頂ければですが、わたくしが作ります。お夕食を全て召し上がられましたら、喜んでお見せ致しますわ。美味しいデザートもお付け致しましょう?」


「えっ…」


何故かフリーズするエルヴィーラ様。


…あ、そっか。貴族令嬢は料理なんてしないのか。


「料理はわたくしの隠れた趣味ですのであまり公にしないで下さいませね」


戯けたように片目を瞑ってみせる。


それでも尚俯いてしまった少女に、(これは相当数のケーキを食べたな…)と思いつつも、容赦する気はなく、リーンハルト様に視線を移す。


「ちなみにお2人の食事をわたくしが作るのはお許し頂けますか?」


リーンハルト様はくすりと笑い、

「俺の分も一緒に作るのなら」

と、とんでもない条件を付してくれた。




…ちょっと待ってよ。


子どもだから、ハンバーグセット…とか思ってたのに。



まぁ、いいや、知らない。

男ドモって存外子どもっぽいメニュー、好きだし。

ーオムライス5人分って、冗談抜きで手首逝くから!!



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