夜叉の眼差し、玻璃の守護(まもり)
気付いたら半年以上も空いてました…orz
何があった訳でも無いので、申し訳ないの一語に尽きますm(_ _)m
待っていて下さった方、いらっしゃるのかな?
…だとしたら本当にお待たせ致しました(⌒-⌒; )
一般的に、魔術を使えるのは1つのみ…ということが多い。
水晶玉に2色以上現れても、主属性以外は色が淡かったり薄い為に、魔術としては表れないのだ。
ただ、生活の補助目的程度ならば使える為、ルナイリスの「お料理スキル」という発言は、実はあながち間違ってはいないのである。
…ただし、あれだけはっきりとした色を料理のみに使わせてくれる程、この国は優しくない。
聖女の手を持っているのであれば、戦の際に駆り出される可能性も充分にある。
戦力として文句の付けようがないのだ。
徒然に彼女の行く末を考えていると、リズミカルなワルツが流れ出した。
ダンスが始まるらしい。
ヴィンフリートに手を取られ、中央に歩み出た。周りからの視線を感じて軽く強張る。
「心配無用ですよ、姉上。万一不心得者がいたならば即座に凍らせますから」
輝かんばかりの笑顔を浮かべるヴィンフリートが怖い。
「後は、パスカルと総帥と踊ればそれで良いと思います」
「3回踊るのがルールなの?」
「厳密にではありませんが。それだけ踊れば主催者に恥をかかせる事もありませんから」
ヴィンフリートの言によると、何もないのに1度しか踊らないのは、パーティーに対する抗議になるのだそう。
3回踊れば、取りあえずは義理を果たしたということになるらしい。
曲が終わり、ヴィンフリートはルナイリスをエスコートしてパスカルの元に向かう。
婚約者とファーストダンスを終えたパスカルに挨拶し、パートナーをチェンジする形で2度目を踊る。
夫婦や婚約者であれば、3度のうち2度までを同じ人と踊れるそうだが、裏を返せば同じ人と複数回踊ることは、それだけで特別な関係にあることを匂わせる訳か。
瑠凪は納得しながら2曲目を踊ると、パスカルとその婚約者だというエクスナー伯爵令嬢パトリシア嬢に挨拶する。
パトリシア嬢は向日葵のように闊達な令嬢で、パスカルがめろめろな様を、微笑ましくすら思った。
さり気なく嬶天下になりそう。
卓上のカナッペを摘みながらパトリシア嬢とお喋りしていると、アマーリエ様がこちらに歩み寄って来た。慌てて2人揃って御辞儀をする。
…パトリシア嬢の方が優雅だ…。
精進あるのみ。
「お二人は3度目のダンスはどなたと?」
アマーリエ様に問われて、2人して顔を見合わせる。
「私はもう一度、婚約者のヴァイラント伯と踊る予定でございます」
パトリシア嬢が笑んで答える。
「ルナイリス嬢は?」
「弟からは師弟関係でもあるので、カント侯爵と踊るように…と」
そうとしか答えようがないのだが、ルール上どうなのか分からず、口ごもりながら返すと、アマーリエ様は艶やかに微笑った。
「弟君も虫除けに必死ね。ここでリーンハルトに出て来られては、誰もルナイリス嬢に声をかけられないではないの」
『虫除け』の意味が分からずきょとんとしていると、背後から声がした。
「私の指示ですよ、姉上。取りあえず義兄上から愛弟子は守らないと」
聞き覚えのある声に振り返ると、リーンハルト様が立っていた。
あまりにも突っ込みどころが多すぎて、何をどう返せば良いか瑠凪が途惑っていると、パトリシア嬢がそっと囁いた。
「お二人は血の繋がったご姉弟なのですよ」
言われて見てみると、確かに、濃淡の差こそあれ、瑠璃色の瞳は同じである。
…色というより、瞳が醸し出す空気が似ているというべきか。
「国の玩具になるのは、どうしようもなくなってからで良い筈です」
不穏な台詞とは裏腹に、白皙の顔が艶冶な笑みを刷く。
「おいで、ルナイリス嬢。ラストダンスだ」
差し伸べられた手に己が手を重ねつつ、瑠凪は眉を顰めた。
貴族の方法なんか一般庶民に分かるもんか。
何となくもやもやしたものを抱えつつ、リードに身を任せる。
心ここに在らずでも踊れてしまうのは、リーンハルトのリードの巧みさ故であろう。
「リーンハルト様、先程の不穏な発言の意味、きちんと教えて下さいませね」
ふわり。
ターンの際、違和感の無い程度に近付かれ、耳朶に落とされた囁きに、リーンハルトは苦笑する。
理解する聡明さは持ち合わせていると思うが…さて、どこまで話すべきやら。
ヴィンフリートと応相談といったところだろう。
「明日の午後の講義の際にな」
柳腰を攫いながら接吻けせんばかりの勢いで耳元で囁く。
白磁が薄紅に染まる様は清艶さを醸し出し、そこここから溜息が漏れた。
アマーリエはその様子を見ながら軽く溜息をついた。…彼女を、義妹と重ねている風情の弟に呆れながら。
歩み寄って来た夫に、冷ややかな眼差しを向ける。
「女性は道具ではありませんのよ。ましてや魔力を伝えるだけの器でもありません」
「分かっている。…もし、そんな考えであったならば其方を娶ってはおらん。魔力だけを考えるならば、トレンメル伯爵令嬢が適任であったろうな。王太后陛下は其方を気に入っておったしな」
皮肉気な目を向けられ溜息をつく。
「また、そのお話ですの? 宰相夫人でも些か荷重にかんじている妾に、王妃など務まる訳がありますまいに」
「荷など重さに慣れるものだ。王太子妃という重荷を最初に背負えば、王妃という荷も何とかなろう。其方にはそれだけの能力がある」
結い上げた髪の後れ毛に接吻けられ、思わず腰の引けるアマーリエを、ファビアンは躊躇うことなく引き寄せた。
「あの娘もいわば原石。侯爵夫人くらいなら充分に務まる。王子妃となると…些か危ういがな」
「…王子妃って、殿下はまだ成人の儀すら」
「さすがにアルフレート殿下には娶せまいよ。隣国ベリートには従姉妹君が嫁いでいるだろうし、ティオミスに国交の先駆けとして嫁がせる手もある。…ルーキフェルムの隣国…という手も有りやもしれぬ」
分かってはいるつもりだったが、夫のあまりにも冷淡な言葉にアマーリエは凍り付いた。
本気で道具としか見ていない。
確かにリートミュラー家は古参の貴族であり、王家への忠誠も篤い。
フォルクハルトとヴィンフリートの兄弟も、これ以上無い絶好の夫候補として、国内だけではなく周辺諸国でも、溺れそうなほどの秋波を向けられている。
そこへ、文字通り降って沸いたように現れた妙齢の美女。
先代リートミュラー伯メルヒオールの娘…という触れ込みではあるが、王家や宰相を含め上層部は、誰一人としてその戯言を信じてはいない。
だが、どのような所縁の娘かは調べても何も出て来なかった。
…王家の『影』が調べられない…という有り得ない事態が起きているのだ。
が。
所縁はどうあれ、5属性持ち、建前上は古参貴族の令嬢。
どこへ嫁っても釣りが来る。
不可思議な所縁と建前を盾に脅せば、どうとでも出来る。
娘の存在を知った時にはそう思ったものだが、このところ些か雲行きが怪しい。
王といい、妻といい、義弟といい…。
…いやいや、この国でもそれなりに腹黒い手合いを速攻に手懐けてしまったのだから、諦めるには惜し過ぎる人材である。
さて…と…。
ファビアンは烏も逃げ出す腹黒振りを優雅な笑みで隠すと、ふわふわと揺れる青藍の薔薇を見つめていた…。
次はここまで空けたくないですね…。
挙句、違うもの書き始めていたり…。
人気の婚約破棄とざまぁを読み耽っていたら書きたくなってしまったのですが、ざまぁって結構難しい(^^;)




