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想いの在り処 十重二十重

サブタイトル本当に難しい…。


視点が交錯しています。解りづらかったらすみません。


ふうっと意識が覚醒する。


見慣れた場所へや

リーンハルトの部屋である。


ぼんやりと辺りを見回していると、腕を組んで書棚に凭れたリーンハルトが目に入り、慌てて飛び起きる。

ーが、くらりと目眩がした。強烈な吐き気に口を押さえて蹲る。


「…目が覚めたか。魔力切れだ。もう少し休めば目眩も吐き気も治る。ヴィンフリートには連絡済みだ。送っていくからもう少し寝ていろ。…今それで馬車に乗るのはかなりきついぞ」


リーンハルトが歩み寄ってきて、そっと額に手を当てた。額や首筋に、熱を確かめるかのように優しく触れる。


「少し熱があるな。…にしても無茶をする」


声から色彩いろが消えた気がした。


おっかなびっくり顔をあげると、初めて見るような冷ややかな眼差しがあった。


…そうだ。多分、完全なるチートだよね。

やり過ぎた…というか、ごまかしが聞かなくなっちゃったんだろうな。

隠し玉にするつもりが大失敗の巻?


「申し訳ありません。危険だからと隠して下さっていたのに」


申し訳なくて声が震える。顔も上げていられなくて。


赤ちゃんを救えたことは後悔していないけど、もう少し何かやりようもあったのではと思う。

イロイロと、突っ込みどころ満載な言動をしまくった自覚はあるから。


後始末は多分リーンハルト様の仕事になってしまうのだろう。

…もしかしたら、どこかで『飼われる』事になってしまったりするのかしら。


そうなってしまったら、テオが泣くだろうな。


ぼんやりとそんな事を考えた。


かちゃりと金属質な音が耳に入り、はっと顔を上げると、リーンハルトが部屋を出ていくところだった。



自分が情けなくて、涙が込み上げてきた。







リーンハルトはシャワールームへ飛び込んだ。

服のまま、頭から冷水を浴びる。



少し気持ちが落ち着いて来た。


…単なる八つ当たりだという自覚はある。

でも、感情おもいは抑えられない。


「リーゼ…」


微かな声と伝う涙は、シャワーにかき消されて。





すっかり冷え切った身体を抱えてシャワールームを出る。


ふわりと手が動くにつれて、藤色の髪が、服が乾いてゆく。

…髪や服は容易に乾かせるし、赤くなった瞳は簡単な治癒で治すことが出来る。しかし、沈み込んだ気持ちを癒す術は無い。




…久々に表情を“作った”気がする。


普段通りの落ち着いた笑みを作り上げて部屋に戻ると、彼女ルナイリスはまだ眠っているようだった。


棚の本に手を伸ばすと頁をめくる。

だが、瑠璃色の眼差しは頁を薙いでいるだけで。

全神経は眠る彼女の挙動に集中していた。



微かに空気が動く。


はっとして目をやると、紅茶色の瞳がこちらを見ていた。


「気分はどうだ?」

そう問いながら額に手を当てる。

先ほど感じた熱は綺麗に引いていて、ほっとしながら、

「熱は下がったようだが、立てるか?」

と問いかけた。


ベッドの上に身体を起こし、此方を眺める瞳にはいつもの力が無い。

揺れているからは今にも滴が零れ落ちそうで。

瞬きの間に消えてしまいそうなそんな、雪のような儚さ、危うさを漂わせていて。


思わず。


手が伸びた。









目を開けると、本を読んでいるリーンハルトの姿があった。

ぼんやりと眺めていると、視線を感じたのか顔を上げる。

目が合った瞬間、ほっとしたように瑠璃色の瞳が緩んだ事に泣きたいような安堵を覚える。


額に触れられた手が冷たくて心地良い。




…もう大丈夫と言いたいのに言葉が出ない。


ベッドから降りて、帰り支度を始めるべきなのに身体が動かない。






なぜ、くうきはよどんでいるのだろう。


どうして、わたしはわらえないのだろう。





自分が解らなくて、身体が強張る。




意図しない涙が零れ落ちるのと、リーンハルトに抱き竦められるのが、ほぼ同時だった。






こんな風に、誰かにハグしてもらうの、何時振りだろう。


そういえば、日本むこうにいたときも、誰かに感情きもちを打ち明けるとか、ついぞしてなかった…。


誰かを甘やかしたり相談に乗ったりする事は度々有ったけれど、自分がしてもらう事って、本当に無かった気がする。



いい…のかな…甘えちゃって…。






多分、異世界なれないばしょに来て張り詰めてたモノが、弾け飛んだ…感じなんだろうな。


そういえば、ホントにゆっくりした時って、こっち来て無くない?


ストレス溜まってても当然だよね。


日本むこうでは料理でストレス発散出来てたけど、こちらではする機会が無い!


うん、帰ったらカレー作ろ。

スパイスはこの間買ったし、お米は無さそうだからチャパティ作る事にしようっと。




何とか感情おもいがリセット出来たみたいで、ちゃんと、微笑う事が出来た。









何ら抵抗無く、華奢な体躯は腕の中に収まる。


…人が消える訳など無いのに、と、出てしまった手に呆れていると、ルナイリスはそのまま身体を預けて来た。


何というか…警戒心の無さに頭を抱えながら、突き放す事も出来ず、すらりとした身体を抱きしめた。


全身で感じる柔らかさに、何だか居た堪れないものを感じていると、白皙のかんばせがふわりと仰いた。

濡れた瞳に焦りを覚えて身体を強張らせる。


が、浮かぶいつもの笑みに安堵しながら滲む涙を指で掬い取る。


言葉にならず紅唇がはくはくと動く様に、思わず笑みこぼれてしまい、紅茶色の瞳がきっと吊り上がるのがまたおかしくて。



「気持ちは落ち着いたようだな、もう大丈夫か」


「…はい。お騒がせ致しまして」


柔らかな笑みを浮かべながらベッドから下りるルナイリスに、エスコートの手を差し伸べる。







ー仄暗い感情おもいは、全て笑顔の下に押し込めて。




視点…何か注釈付けたほうが良いんでしょうか…?

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