懐かしの我が家へ
遅くなりました…ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
夜会から3日経って。
やっと帰邸の許可が下りました。
この次は、来月の四家の奥様方との茶会まで自習だそう。
今度はもてなす側に回るとのことで、その辺りのノウハウもレクチャーしてくれるそうで。
なので、予定日の2日前にまた、バルシュミーデ邸まで飛ばしてくれるそうです。
ヴィンフリートがその為だけに帰ってくるらしくて申し訳なく。
何でも彼は王宮の魔術騎士団に所属していて、王都にあるリートミュラー邸で暮らしているのだそうだ。
フォルクハルトも、1年前までは王宮の近衛騎士で、一緒に暮らしていたが、父親の死による爵位の継承に伴い、騎士団を辞めて領地に戻って来たのだとか。
この兄弟が王宮で仕事…ねえ。
よく無事だったな。
何故か大量にドレスを頂いてしまいました。
…ワインのアドバイスのお礼だそう。
貴腐ワイン、上手くいくと良いな。
フォルクハルトが迎えに来てくれた。
来た時と同じくフォルクハルトに捕まり、来た時は異なってルドガーの手が肩に触れる。
くらり
独特の感覚がして、記憶にある門の前に立っていた。
「お帰りなさいませ、姉上」
涼しい笑みを浮かべて、ヴィンフリートが立っている。その手がすっと伸べられて、瑠凪の手を取った。
「アンハイサー侯爵家の夜会の話は、王宮にまで届いていましたよ。一体何人の御仁から姉上の事を聞かれたか」
にっこりと微笑んだ上での爆弾発言に、瑠凪は羞恥のあまり、耳まで紅に染める。
「ヴィー、ルナで遊ぶな」
フォルクハルトに窘められてくくっと笑うヴィンフリートの笑顔が爽やかに不気味で、瑠凪は背筋に鳥肌が立つのを感じた。
身体を強張らせていると、足元に衝撃を覚え。
「あねうえ、おかえりなさい!」
「ただいま、テオ。良い子でお留守番頑張ったって聞いたわよ」
小さな身体を抱き上げる。3ヶ月ぶりだろうか。この頃の子どもは成長が早い。何だか重みが増した気がする。
その、春の陽射し色の髪を優しく撫ぜた。
ぎゅーっとくっついて来るのが愛おしくて、抱き上げたまま玄関をくぐる。
待っていてくれたライナルトやレナータに挨拶して、テオを抱いたまま部屋へ戻った。
椅子に腰を下ろすと、テオドールの“報告”に耳を傾ける。
離れていた間のこと。
邸に咲いた綺麗な花の話、ミルナの木に巣をかけた鳥の話、泣いて兄に叱られたこと、領地に下りたことや、そこでご飯を食べたけどたくさんこぼしてしまったこと、などなどなど、3ヶ月分があっちへ飛び、こっちへ回りの報告の為、時系列での判断はほぼ不可能である。
「それでね、あにうえをしらないひとがたず」話が突然途切れて重みが増す。
電池の切れた玩具のように、ぱたりと寝入ってしまい、思わず笑ってしまった。
末の双子たちが保育園で遠足に行った時などが丁度こんな感じで。
2人して夕食時に報告してくれるのだが、何度撃沈して食卓を崩壊させたことか。
寝たテオを抱いたまま、レナータたちが部屋に置いてくれた荷を探る。
ドレスはクローゼットに仕舞ってくれたようだが、他にも本などいろいろと借りて来たその中に仕舞っていたスマホを取り出す。
あちらにいる間にいろいろ試してみたが、どうやらチートで、使ったバッテリーは翌日には復活するようだ。
写真や動画など結構使い途はある。
それを腕の中のテオドールに向けて構えた。
稚い寝顔を撮る。
またひとつ、宝物が増えた。
帰れないなら、足場を固めて楽しまなければ。
夕食に呼ばれてテオの手を引いて歩く。
テオドールは昼寝から目覚めて、チャージ満タンである。
その席でヴィンフリートが、
「姉上、ファーベルグ公爵家での夜会の件なのですが」
と言い出した。
見せ物路線を爆走しそうで気が進まないのだが、アンハイサー侯爵家の夜会で、ダンスをバルシュミーデ侯爵に譲ってくれたのだと聞くと、受けざるを得ないなと思ってしまう。
あの時に流れた曲は聞いたことのない曲で、踊っていた他の人たちもかなりぎこちない様子だったから。
まぁ、あまりにも侯爵が上手すぎて、必要以上に目立ってしまった訳なんだけども。
「2ヶ月後の予定なのですが、ドレスを仕立てに行く必要があります。いつなら予定は空いていますか?」
「予定と言われても来たばかりですから、特に目立ったものは…。来月の四家の奥様方とのお茶会くらいですわ」
「では、その際のドレスも一緒に仕立てますか?」
「そんなに要りません!」
「ファーベルグ公爵夫人はどちらにも参加されるのですよ? 同じドレスなどと気付かれれば恥をかくのはこちらです。ドレス1枚準備出来ないほど経営が圧迫されているのかと、要らぬ疑いを招きます」
王室や皇室の皆様方じゃあるまいし…。
そう思ったものの、いつの間にか口の達者なヴィンフリートに丸め込まれ、3日後に王都にある今大人気のブティックへ行く約束をさせられて。
これでもかアピールに付き合わされる訳か。
溜息を吐きたくもなるけれども、止むを得ないのだろう。
こういう“感覚”にも慣れなくちゃいけないんだろうな…。




