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宣言

俺がルカに治療されている最中、冒険者達が戻ってきた。

 そこに散らばるグリフィー達の死体を見て、驚愕の表情を浮かべる。


「なにがあった!?」


「ああ、アランさん! 大変だったんですよ、あなた達ががグローを退治しに行った直後にグリフィーが!」


「なんだって!」


 更に驚きの声を上げるが、そのグリフィーがすでに討伐されていると知って、ようやく疑問符を浮かべる。


「誰が倒したんだ?」


「それより治療! シノブちゃんだっけ、大丈夫?」


「うん」



 アランと呼ばれた冒険者は、この一団の中でリーダーの位置にいるようだったが、それを制して女性冒険者が俺の元へ駆け寄ってくる。

 その間も商人が先ほどの戦闘を興奮気味に語っていた。


「デルムさん、少し落ち着いて。エレン、彼女の様子はどうだ?」


 デルムと言う商人をひとまず宥なだめ、カレンと呼ばれた女性冒険者に俺の容体を尋ねる。


 彼女は、俺の傷痕と応急処置をの具合を見て、小さく頷いた。


「うん、傷は深くないわ。応急処置も完璧。これなら傷も残らないわね」


「それならよかった。シノブちゃん、君が撃退してくれたのかい?」


「ううん、みんな」


 確かに俺は矢面に立って戦ったが、それはルカも同じだ。それに二羽倒したのはシェリーちゃんである。


 非力な身体に転生した俺一人の力では、決して倒せなかっただろう。みんなが居てくれたおかけだ。



「わたしが倒したのは一羽だけだし」


「むしろ、その歳で一羽倒すだけでも大したもんだ」


 グリフィー自体は強いモンスターではない。

 駆け出しの冒険者が肉や羽毛目当てに狩る事も少なくない。

 だがそれは肉体的に壮健な冒険者であればの話だ。

 俺のように身体のできていない子供が倒すと言うのは、かなりの快挙と言える。


「一体どうやって倒したのか、逆に聞かせてくれないか?」


「んー、それはシェリーちゃんから。わたしはつかれ、た……」


「そうですよ! シノブ様は怪我をなさっているのですから、安静にして頂かないと」


「あ、そうか。すまない、配慮が足りなかったな」


 ルカの言葉はかなりきつかったが、俺としては正直ありがたかった。

 最初のグリフィーを倒した時にカタナを強引に支えて押し斬ったため、右の手首がずきずきと痛んでいる。

 それに二羽目の敵に吊り上げられた時も、鏡花水月で無理やり右手を認識されずに丸太と交換した時も右手だった。


 今、俺の右手はかなりの負担がかかった影響で、壊れる寸前だった。

 落下した時に受けた全身の衝撃も見逃しがたい。


「シノブ様、こちらへ」


 ルカが馬車の幌の中に、敷居を立てて俺のためのスペースを作ってくれた。


 そこへ俺とカレンと言う冒険者が一緒に入り、服を脱いで全身を隈なく診察する。


 この馬車は雨風を凌ぐために幌を付ける事ができ、一部を区切る敷居を立てる事で視線を遮る事ができるようになっていた。

 女性と一緒に旅をすると、こういう仕組みは必須になる。


「うわ、右手がボロボロじゃない。なにしたのよ……」


「ちょっと、グリフィーを足止めしたりした。後、突撃も受け止めた」


「無茶し過ぎよ……目を放しちゃった私達が言う事じゃないけど……ごめんなさいね?」


「いいよ。グローも結局倒さないと行けなかっただろうし。それにグリフィーも、冒険者がいたから襲ってこなかったわけだし」


「目を離さなければ、安全だったって事じゃない。グローの所まで一緒に行けばよかったのよ」


「それは、結果論」


 戦場に素人を同行させると何が起きるか分からない。


 あの時アランが俺達を置いて先行した判断は、間違いではない。


 しいて言えば、一人を残しておくべきだったかもしれないという程度の問題だ。


「ああ、シノブ様の身体が痣だらけに……申し訳ありません、私が力不足だったばかりに」


「ルカは充分やってくれてたよ。おかげでわたしも助かったんだから、あやまっちゃダメ」


 彼女が一羽を引き受けてくれたからこそ、俺は二羽で済んでいた。

 後一羽こちらに来ていたら、前線を支えきれなかったところだ。


 そもそも、ルカは護身程度の体術しか心得が無いのにグリフィーと戦ったのだから、ここは褒めるべきなんだ。


「ルカが一羽引き受けてくれたから、わたしは戦えたんだよ。ありがとう」


「そ、そんな……」



 感極まったように目を潤ませるルカ。その長い耳が萎れた様に垂れるのを見ていると、少し面白い。

 ルカはそんな俺の手を握り締め、いきなりとんでもない事を口にした。




「決めました! 私も皆と肩を並べて戦いたい!」


「ハァ!?」


 唐突に飛び出した、ルカの宣言に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまったのだった。



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