ジャック・リジャック登場!
「金を寄越せ!でないとぶっ殺すぞ!」
男が叫びながらナイフで女性を脅している。今にも刺してしまいそうな勢いだ。
「だ、誰か助けて!」
「最近多いのよねー強盗」
こんな状況だというのにミーナはとても落ち着いている。
「なんでそんなに落ち着いてるの?」
気になったのできいてみた。するとミーナは指を差しながら
「見てたらわかるよ」
と言った。そういわれてもはやく助けないと殺人事件に発展しそうなので間に入って助けようと構えた。しかしその瞬間、ナイフの男が急に地面に倒れた。叫びながら立ち上がろうともがいているが、地面に這いつくばったままだ。そして、人混みの中から制服のようなものを着た10代後半のオールバックの男が出てきた。
「市民の皆さん!安心してください!もう大丈夫です!」
周りから歓声が沸き上がった。どうやらかなりの人気者らしい。
「あの人は誰?」
ミーナはにやっと笑って教えてくれた。
「あの人は魔術学院の生徒のトップ5の1人よ。名前はジャック・リジャック」
トップ5!どうりで強盗を一捻りで倒してしまうはずだ。
「王都のなかで攻撃系の魔術を使う事を許可されているのは学院のトップ5とマジックヴォイドの人達だけなのよ」
「へーそうなんだ。ところで、マジックヴォイドってなに?」
ミーナは丁寧に教えてくれた。
「マジックヴォイドっていうのは、学院を卒業した人だけが入隊できる王都の警務部隊よ。中でもトップ5の人達は王族や貴族の警護を任せられるの」
なるほど。確かに魔術を使える人達が街を護れば、犯罪が起こってもさっきのようにすぐに止めることができるだろう。
「おーい!ミーナ!」
こちらに気付いて近寄ってきた。トップ5というだけあって立っているだけでも威圧感がある。
「お疲れ様、ジャック。」
「ホントだよ。この3日間でもう5件目だぜ!全く勘弁してほしいよなー」
言い終わると僕の方を見てきた。
「こいつは?」
「この人はワタル。明日あたしの推薦で入学試験を受けるのよ。」
「へぇー」
そう返事をすると5秒ほど見つめてから口を開いた。
「いいのか?もし受からなかったらお前の評価も下がるんだぞ。お前もう少しでトップ5に入れるのにいいのか?」
僕は目を丸くした。ミーナがトップ5目前ということもだが、それよりももし落ちたらミーナの評価が下がることの方が驚いた。
「大丈夫よ。ワタルは強いから」
これは合格しないといけないな。絶対に。
「ミーナがそう言うなら大丈夫か。嫌なこといってごめんなワタル。こいつが頑張ってるの知ってるから言わずにはいられなかったんだ。」
そう言って頭を下げてきた。嫌なやつじゃなくて仲間思いだっただけらしい。
「別にいいさ。それより入学したらよろしくなジャック」
「ああ!もちろん!」
握手をして別れた。ジャックも用事があったところで強盗に遭遇したらしい。犯人は警務部隊に身柄を拘束され、つれていかれた。
「学院の下見に行ってみる?」
ミーナから提案され、特に断る理由もないので学院に行くことになった。
30分ほど歩くと、城ほどではないが大きなレンガでできた建物が見えてきた。敷地も広く、ミーナやジャックと同じ制服を着た生徒が出入りしている。
「ここが正門よ。残念だけど、生徒以外の人は入試と学園祭の時しか入れないのよ」
この世界にも学園祭があるのか。魔法が使える世界なんだからさぞかし派手で賑わう学園祭になるんだろうか。
「中には入れないし、そろそろ帰りしょうか」
「うん、そうだね」
学院を背に帰ろうとすると、正門の方から声が聞こえてきた。
「ちょっと待てーーい!」
「うげっ」
その声を聞いた瞬間、ミーナの顔がひきつった。どうやらこの声の主が苦手らしい。
振り向こうとした瞬間、ミーナは僕の手を掴み、全速力でダッシュした。どうやら顔もみたくないほど苦手らしい。