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第二話 異世界転移

目が覚めると、僕は真っ白のベッドに横たわっていた。


「どこだここ?」


起き上がって周りを見ると、背は僕と同じ位で、ずいぶんと長く伸ばした白い髭が印象的なお爺さんが立っていた。対照的に頭の方はさっぱりしている。


「おお、目が覚めたか」


お爺さんが心配そうに話しかけてきた。僕は失礼なことを考えていたというのに。


「早速じゃが、本題に入らせて貰うぞ」


お爺さんがパチン!と指を鳴らすと、二人の間に透明の、両手で抱えるぐらいの大きさの透明の箱が出てきた。


「ほい」


お爺さんが右手を箱にかざすと、カードを手に持ったままうつ伏せに倒れている人が出てきた。しかも背中には包丁が深々と刺さっているのでかなり痛々しい。


「見に覚えはないかな?」


お爺さんが髭を触りながらそう言うと、僕は1秒ほど考えて反射的に箱に飛び付いた。


「こ、これって僕ですか!?で、でも何で!?どうやって!?」


背中の刺されたところを触ってみるが、包丁は刺さっておらず、痛みもなかった。


「ワシの力で生き返らせたんじゃよ。初めてやったんじゃが、どこかおかしいところはないかな?」


おかしいのは今のこの状況ぐらいだが、体に異常はないのでそう答える。


「はい、体の方は特に何もないです。でも、何で助けてくれたんですか?」


するとお爺さんは指を鳴らし、椅子を呼び出し、座ってから話始めた。


「実は最近、人間の行動を観察するのが趣味でな。で、ここ最近は君を観察してたんじゃが」


話を止めるとお爺さんは手を箱にかざした。すると、後ろから僕が包丁で刺されているシーンになった。


「せっかくカードの世界チャンピオンなったというのに、その日に死んでしまうのはあまりにも可哀想だと思ってなぁ。だから生き返らせたのじゃ」


「あ、ありがとうございます」


お礼を言うと、お爺さんは話を続けた。


「しかし、ここからが問題でな。どうやら現代に生き返らせることはできないみたいなんじゃよ」


お爺さんはうーむと唸ってから一呼吸おいて話始めた。


「じゃから、別の世界に行って残りの人生を過ごして貰おうと思うのじゃが、それでよいか?というよりそれしかできないのじゃ」


「わかりました」


「時間はたっぷりある、返事は...ってええっ!」


今にも飛び上がりそうな勢いでお爺さんは驚いた。まあ確かに自分でも早かったと思うが、このまま死ぬぐらいなら例え別の世界でも生きていきたい、というのが僕の答えだ。


「す、すまんな、思っていたよりかなりはやく返事がきたもんじゃから心臓が止まるかと思ったわい」


このお爺さんが言うと冗談には聞こえない。


「本当によいのじゃな?」


お爺さんが真面目な顔で質問してきたので、僕も真面目に答えた。


「はい」


心残りが無い訳ではない。できることならカードも持っていきたかったが、一度死んだのに生き返らせてもらえたんだ。贅沢は言えない。


「おお、そうじゃ」


お爺さんは何かを思い付いたように手を叩くと、椅子から立ち上がり、今度は箱ではなく僕に左手をかざした。


「ふんっ」


さっきより少し気合いの入った声を出すとお爺さんの左手から光が出てきて、僕を包み込んだ。


「あの、これは一体なんですか?」


「なに、悪いものではない。黙って見ておれ」


目を閉じてなにやら集中しているようなので、僕も黙っていることにした。


お爺さんが右手を鳴らすと、光は少しずつ小さくなっていき、最終的には消えてなくなった。


「ふう、成功じゃな」


お爺さんは一息つくと、少し疲れたように椅子に座りこちらを見た。


「君に能力を授けておいた。勝手に生き返らせたお詫びだと思って受け取ってくれ」


どうやら今のは能力を授ける儀式かなにかだったらしい。手品にしか見えなかったけど。


「ありがとうございます、どんな能力なんですか?」


これを知っておかないと意味がないので、お爺さんにきいてみると、待ってましたと言わんばかりに話始めた。


「よくぞきいてくれたのう。今授けた能力はカード具現化という能力じゃ」


カード具現化という単語を聞いた瞬間、今度は僕の心臓が止まりそうになった。実際には一度止まったけど。


「本当ですか!?」


身を乗り出して確認すると、お爺さんはにっこり笑って能力を説明してくれた。


「ああ、本当じゃ。まずは頭の中に使いたいカードを思い浮かべて、召喚と唱えるんじゃ。するとカードを具現化することができる。そしてそのカードを持ったままもう一度召喚と唱えると実際に召喚することができるのじゃ」


説明を聞いて早速試そうとすると、突然ベッドが消えて大きな穴が出てきた。


「うわああああああ!!」


これまでの人生で五本の指に入る大きさの声を出しながら僕は落ちていった。


「それでは、新しい世界で頑張ってくれ」


お爺さんの声が頭の中に響くと、段々意識が遠くなり、やがて真っ暗になった。

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