気づかない振りをしていたあな
待ち合わせ場所として指定した公園に行くと既に侑真はベンチに座っていた。
「わるい、遅くなった」
「お、来たかナムト、久しぶりだな。」
「って言っても、1ヵ月ぶりくらいだけどな」
「まあまあ、進学先が今までずっと一緒だったからな、その分よけいそう感じんだよ」
俺が声をかけると、侑真は立ち上がってそう言った。
実際に俺と侑真は小学生の頃から高校まで同じ学校で同じクラスだった。
「ところで、今日はなんで呼んだんだ?」
呼び出しのメールには何も用件が書かれてなく、「明日暇だったら久々に会おうぜ」とだけ書かれていた。
「んだよ、用事がなけりゃお前と会っちゃいけないのかよ」
「そうじゃないけど、お前から久々に連絡あったから何か用事でもあるのかなと思っただけだよ。」
侑真が、冗談交じりに言ってきたので俺もそれに乗って軽く返事を返すと、侑真は少し考えるような顔をした。
「・・・用事か、ないことはないけど、とりあえずまずは遊ぼうぜ!久々に2人でな!」
ごめん、侑真、実は二人きりではないんだ。
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15分前
俺が、家を出ようと支度をしていると、奥の扉からアスハが顔を覗かせて俺に尋ねた
「ナムトくん、どこか行くのですか?」
「ああ、ちょっと昔からの友達に会いに行ってくる」
それをアスハに伝えると慌てたように「ちょっと支度するので待っててください」と言って奥に顔を引っこめた。
わざわざ、ついてくる必要が無いと思った俺は頭を引っ込めたアスハに向かって少し大きな声で言った
「別に、俺一人の用事だから、アスハまで出てくる必要は無いぞ」
「何言ってるんですか、昨日説明したばっかじゃないですか。私とナムトくんは一定の距離以上離れることは出来ないって」
ああ、そういえば、そんなこと言っていたな。
ついでに、昨日聞き忘れたことを聞いておこう
「なあ、その一定距離以上ってだいたいどのくらいなんだ?待ち合わせ場所なんて5分もかからないからそんなに離れないと思うぞ」
「そうですね、正確には色々な状況によって誤差はあると思うのですが、だいたい100mくらいですよ。」
短いな。
それじゃあ、俺が外出する時はわりと、アスハが常に近くにいるということか
「あ、今短いなって思いませんでした?
別にそんなに心配することありませんよ。昨日言ったように、私はナムトくん以外にはみえませんし、ナムトくんのプライベートな関係に変なちょっかいかけるようなことはしませんから」
それなら大丈夫か。
しかし、実際にアスハ程の美少女と一緒に歩いて侑真に自慢している所を想像すると周りから見えていないということは少し残念だな。
それに、下手に外でアスハと喋っていると周りからは不審にみられるのか。
侑真に見られでもしたら「おまえ、頭大丈夫か?」とでもいわれそうだ。
外でのアスハとの関わりは周りに十分注意をしなくてはならないな。
「お待たせしました。では、行きましょう。」
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顔を後ろに向けると、近くの木を見ていたアスハがこちらに気づいてひらひらと手を振ってきた。
「?、どうしたナムト」
「いや、何でもないよ」
まあ、アスハも邪魔するつもりはないと言っていたし、そこまで気にする必要は無いだろう。
気にしすぎて、侑真に不審に思われたら大変だからな。
それから俺と侑真は、カラオケに行ったり、ボウリングに行ったりとよく2人で遊んでた場所に訪れて一日中あそんでいた。
特にカラオケでは、侑真が、トイレに行ったっきりなかなか帰ってこないことがあった。
そこそこ広かったからであるのか、部屋がわからなくなっていたようだ。最終的に、店員に迷ったから部屋を教えてくれと言ったらしく、店員さんと一緒に侑真は戻ってきた。
侑真が、方向音痴なのは、忘れていた。次来る時にはわかりやすい部屋にしてもらおう。
夕方頃になると、再び集合場所に俺たちは帰ってきた。
「いや〜、今日は久々に遊んだわ。おかげで日頃のストレス解消できたわ。サンキューな、ナムト」
子供のように無邪気な笑顔でそう言った。
その顔からは、今日一日が本当に楽しかったということが伝わってきた。
「こっちの方こそ、ありがとな。俺も久々にこんなに遊んだよ。」
そう返して、侑真を、見ると先程の無邪気な笑顔とは一転して少し懐かしいように何かを思い出すような顔をしていた。
その後に侑真が言ったことに俺はすぐに返事をすることができなかった。
「・・・・・・・・・なあ、あいつが生きていたら今日はお前と3人で遊んだのかな?」