謎の少女とこの世界と
「では、次に、伊東ここを読んでみてくれ。」
「はい。」
声が聞こえる。懐かしい声が、高校時代よく聞いていた声が聞こえる。俺はこの後よく当てられるついでに起こされていたっけ。
「おい、こら冬城、起きんか」
そうそう、こうやって声が聞こえて、この後に隣の席から幼なじみの、西内真紀の声が聞こえてきていたっけ・・・。
俺は懐かしいことを思い出し、未だ聞こえている幻聴と思わしき声に苦笑いをするとともに、胸に電気が走ったような、針を刺されたような痛みが走っていることを認識した。
幻聴であってもいい、もう一度あいつの声を聞きたい。そう思った俺は高校時代いつもしていたように先生の話に耳を貸さずに自分の睡眠を続行しようと体を動かさずにいた。
「もう、聞けるはずもないのに・・・な・・・」
そんなことを思っていると俺の耳に先生の声とは別の声が聞こえてきた。
「ナム〜、先生怒ってるよ〜」
それは、懐かしい声であった。つい今しがた俺が聞くことを望んでいた声、どんなに望んでももう聞くことの出来ないと思っていた俺の幼なじみ、西内真紀の声であった。
・・・?真紀・・・の声?そんなはずはない!
彼女はもう・・・
死んでしまっているのだ────
「うわぁ、びっくりした!」
その声の顔を確認しようと思った俺は、彼女の姿を目に収めたく勢いよく体を動かし、いつもなら隣の席にいるはずの彼女の元を向いていた。
となりの席の真紀が驚いてペンを床に落としてしまっていたが俺はそれどころではなかった。
かわききっていた口を開いて、力なく俺は真紀に問いかけた。
「・・・お、おまえ何でここに、たしかにおまえは!・・・」
そう答えた俺の目はまだしっかりと焦点があっておらず、背景がぼやけていたのだけれども、真紀の姿だけはしっかりと捉えていた。
彼女は本物なのだろうか、俺が生み出した空想なのではないだろうか・・・
そう思い、俺は彼女の元へ自分の手を伸ばした。
「えっ!ちょ、ちょっとナム何してんの!今授業中だから、みんな見てるから!」
俺に触れられた真紀の顔は赤く染まっていて、どことなく慌てており、それでいて俺の手を拒むようなことをしない俺の知っている真紀であった。
そんな真紀に、問いかけようとした・・・が、前から聞こえてきた先生の言葉に俺の考えは遮られてしまった。
「おーい冬城、授業中になにしてる。はぁ、全く、おまえ後で職員室な。」
「いや、俺は・・・」
それどころではないと言おうとしたがあきれたような顔をしていた先生にその次の言葉を発することは出来なかった。
もともと人と話すことが得意ではなかったので、目上の人にはどうしても負い目を感じてしまう。
このようなことは大学に入った今でもよく起きていた。
「いいから、座れ、話は後で聞く。」
「はい。」
「まーた職員室に呼ばれて、去年は優等生のように大人しかったナムが今年になってだいぶやんちゃちなっちゃって!そういえばこの前も・・・」
真紀が俺に向かって何かをつぶやいていたが、今の俺には何も頭に入ってこなかった。
そもそも
・・・ここはどこなんだ?
・・・俺はたしか寝ていたはずなのに、
今起きている自体を前に、俺は不自然な空間であるという認識しかできていなかった。
「そもそもなぜ、制服を・・・」
そう考えた俺は、あることを思った。
「まさか!?」
俺は慌ててポケットに入っていたスマホを取り出して今年の年を確認した。
「・・・2年前に戻っている」
俺の思考はここで停止してしまった。
とにかく今は休みたい。落ち着いた場所にいたい。
そう思った俺は授業が終わってすぐに保健室に向かった。教室を離れる直前に、数人が俺の元へやってこようとしていたが、やはり今の俺はそれに気を向けることが出来なかった。
ベッドに横になり、シミひとつない真っ白にペイントされた天井を見て考えていた。
なぜ、俺はこの場所にいる。
意味がわからない。
もう一度寝れば戻っているかもしれない。
そう思って目を閉じ用とした俺はあることを思い出した。
・・・ナムト君は、こうかいしていることはありますか
・・・では、1度体験してみてください
ここで目を覚ます直前に頭の中で響いた言葉。
いや、たしか女の子も見たはずが・・・
そのようなことを考えていると、保健室の扉が開かれ1人の女子生徒が入ってきた。そして、3秒と経たずに俺のベッドのカーテンが開かれた。
「はじめまして、ナムトくん。」
綺麗な銀髪を腰のあたりまで垂らして、ぱっちりと綺麗な二重をした美少女が俺を見下ろしてそう答えた。
身長は163cmほどであり、女子の中ではそこそこの身長をしており、翡翠色をした瞳は目をそらすという行為を忘れさせて、いつまでもみつめてしまうほどきれいであった。
「私としては、正確には初めてではないのだけれども、まあ細かいことはいいでしょう」
驚いて表情を作ることのできていない俺とは対照的に彼女は柔らかく表情を作りかえていた。
「私の名前はアスハ、フルネームは他にあるみたいなんだけど、実は私今実は記憶を少しなくしてしまっているみたいなの。まあ、それはおいといて、なにか聞きたいことはある。」
・・・・・・
「?、おーいナムトくん聞こえてる?」
!?
「あ、ああ聞こえてるよ。それよりも聞きたいことがあるのだけれど、俺はどうしてここにいるんだ?」
「意外と冷静に答えるんだね。何で俺のこと知ってるんだ?とかそういうことを聞いてくるもんだと思っていたけど。」
「たしかに、君が最初に俺の名前を言った時にはそう思ったけど、たった今お前のことを考えていたからね。たしかここに来る前に俺に何かと質問をしてきたのはお前だろ?」
「覚えていたんだ。あの時はあまり時間を取らなかったし直接顔を見ていないと思っていたんだけど。」
「まあ、それはいいとして、俺の質問に答えてくれないか?」
これ以上時間をかけて考えていたことを忘れてしまいたくはなかったので、脱線しかけていた会話を戻すように俺は答えた。
「そうだったね、君の言った通り私は君にいくつか質問をしたよね。その質問の最後に私がなんて言ったか覚えている?」
「・・・たしか、1度体験してみてくださいって」
「そう、それが答えだよ。」
そう言って俺の鼻に触れてしまうくらいぎりぎりに指を伸ばしてアスハは答えた。
っていうか近い、なんか恥ずかしい。こういうのやめてほしい。
そして、質問への答えが意味わからない。
「・・・・・・えっと、もうちょっと詳しく教えて貰ってもいいかな?」
さすがに、今ので理解できるほど俺の頭は上手くできてはいなかった。
「ごめん、ごめん。さすがに今のではわからないよね。今この世界は君の記憶を元に一時的にタイムスリップしてきた世界だよ。私が作り出した世界でもなく、君の何かが作り出した世界でもないよ。実際に君のいた世界と繋がっている。もし、ここで君が私を押し倒してそれを偶然来てしまった人に見られたとしたらちゃんと、2年後の君にまで君のしたことの結果はついてきますよ。」
「それにしても、なぜこの時間に戻っているんだ?」
「先程も説明しましたけど、君のの記憶を頼りにタイムスリップしているので、君が1番知っているのではありませんか?」
「それは・・・」
彼女の言葉は俺にとって図星以外のなにものでもなく、反論することはできなかった。
「まあ、とにかくここに来る前に話した通り、体験ですので1度戻ってみてから詳しくかんがえてみてください。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目を覚ますと俺はいつも寝ているベッドの上にいた。
「ここは、家、だよな。!?時間は・・・」
俺は急いで枕元に目覚まし代わりにタイマーをセットしていたスマホを起動させて確認した。
「戻っている?いや、夢・・・だったのか?」
夢だとしたら俺はとんでもない夢を見ていたことになる。夢の中で夢を見ていた気分だ。こんな体験するのは初めてだ。
「やりなおすことなんて出来ないって分かっていたのにな。夢の中でまで思ってしまうってことはそろそろかなりの重症かもしれないな。」
体を起こしてベッドから出た俺は、今日ある講義の教科書をカバンに詰めて、服を着替えようと今着ている服を脱ぎ捨ててクローゼットを開けた。
そのとき、俺の部屋の扉が開かれた。
「ナムトくん、起きていますか?起きないとイタズラしちゃいますよ〜」
「えっ!」
「・・・・・・あっ・・・」
突然入ってきた銀髪の少女に対応出来ずかたまっていると、彼女も俺を見つけてかたまってしまった。
そこには俺が夢の中だけでしか出会うことはないだろうと思っていたアスハが立っていた。
文章力もなく、読みにくいと思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。