その声に導かれて、
もしあの時、違う選択肢をえらんでいたら....
もしあの時、あの子の話をしっかりと聞いていたら....
こんな気持ちを引きずることは無かったのだろうか、この世界はやり直しは効かない。常に一発勝負である。そんな当たり前のことにもっと早く気づいていたならば....。
もしやり直せるとしたならば、俺はあの高校時代に戻りたい。
・・・・・・・・・・・・
「すいません。この荷物はここにおいておけばいいですか。」
大学2年の春、俺は大学の講義が全く始まっていない今を狙ってバイトの日数をいつもの2倍近くに増やして、1日5時間、週4日のシフトを組んでいた。
「ごめんナムトくん、その荷物こっちまで持ってきてくれないかな。」
「わかりました。ついでに休憩に入るので、なにか飲み物とってこようと思うのですが、先輩はなにか飲みますか?」
俺の問いかけに、先輩は頭についていたしっぽをゆらしながらこっちに振り返って言った
「じゃあ、冷たい紅茶にしようかな、もちろん・・・」
「無糖、のやつですよね。」
間髪入れずに答えると先輩はニコッと笑って、さっすがわかってる~♪っと答えてすぐに作業にもどってしまった。
先輩に飲み物を届けたあと、俺は休憩室でため息をついて、椅子に寄りかかり何も無い天井をしばらく見つめていた。
「よくも悪くも何も無いな、俺は・・・」
1年生の成績もかなりいいほうであり、友達に困ることもなく始まった俺の大学生活は、サークル等の大学の集まりには一切はいらず、家の近くのファストフード店でバイトをしながら学生生活を送っていた。何も悪いことなどない生活のはずであるのに、俺の体には時々、痛みが走ることがあった。初めは物理的な傷かなにかだと思っていたのだが、回数を重ねるにつれ高校でのあのことが原因であることがわかった。
「今更、後悔しても遅いのにな」
その日のバイトはその後2時間で終わり、家に帰った俺はそのまま夜ご飯を食べることもなく寝落ちしてしまった。
・・・・・・ナムトくん、あなたには後悔している何かがありますか?
そんなものはない
・・・・・・では、なぜ君はそんなに何かにおびえるようにして生活をしているの?
そんなことはない。俺は何にもおびえて等いない
・・・・・・もし、あなたが望むのであれば、その後悔をなくしてみませんか?
そんなこと出来るはずがない。やり直しなどきくはずがない。
・・・・・・それでは、1度体験してください。
その言葉を最後に、俺は目を開けてられんばかりの光に包まれた。
その日俺は、夢の中で銀髪の女の子と出会った。