表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私はレティ  作者: 喜多蔵子
6/29

6  もう三年生

 月日とはいつのまにか過ぎていく。お茶会、食器の選び方、お菓子の選び方、ダンス、刺繍、詩集、話し方、話す順番、季節のカーテン、各地の名産、国の歴史、近隣諸国の歴史、貴族年鑑丸暗記········。よく頑張ったと思う。

 気付いたら三年生。マナーも男爵令嬢にしては評判も良く、アンジェ様、クリス様のおかげで上位貴族の令嬢からも受けが良く、同じ身分の令嬢とも仲良く、ああ順風満帆な学園人生。



 シア様は結果学園には入園していない。メイフィールド公爵領や男爵領にいるときは元気で、本当に病気療養なのだろうかと疑う程で、本人もこれなら学園に通えると思っているのだが、いざ王都の公爵家に戻るとすぐに体調をくずしてしまう。水が合わないのかしら?

 今は王都の外れも外れに別邸を構えて生活の拠点としている。時折体調を崩すこともあるが、家庭教師から学園で学ぶことを師事してもらい、いつでも学園に戻れるように頑張っていらっしゃいます。


 今日もアンジェ様、クリス様とご一緒して別邸にお邪魔しています。学園内での話を訊くのがシア様の目下お楽しみになっていると、有り難くもメイフィールド公爵閣下から直接お礼を言われてしまい、久しぶりに我が家の猫を総動員して挨拶しました······。女は女優。女は女優。女は女優。


「レティお姉さま面白い。」

「さっきまで普通だったのに。一瞬にして猫被る。どこででも生きていけるな。」

「いっつも言っている、女は女優って、誰の言葉ですか?」

「ロック領にある食堂の女将さんの言葉です。女将さんの旦那さんが女遊びして遅く帰ってきたときの言い訳が『友人の相談にのっていた』と言うので、『あんたは優しいね。でもあんまり遅く帰ると帰りに何か事件に巻き込まれていないか心配で心配で···』って目を潤ませながら見つめると、旦那さん、当分夜遊びを辞めるそうです。

 女将さん曰く、責めるばかりではなく、引く、時には傷付いた表情する。そして避ける。

 女将さんのような上級者は目を潤ませながら、でも目を少しそらして話す。でもここぞって時には相手の目を見つめる。そして涙を流せば完璧だそうです。

 心の底では軽蔑してても表情は心配で仕方ない。心の底では怒っていても表情では慈愛を。そうすると世の殿方は大体がイチコロとのことです。何時なんどきも己の心を隠し、女は女優になれ。平民の格言ですわ。」

「扇を使って顔や口元を隠すのではなく、表情とくに目で勝負。流石だな。」

アンジェ様、顔が喜んでますよ。クリス様、そんな尊敬してますって表情止めてください。下町ルールです。シア様、お願いです。まるで聖女を崇めるような目をしないで下さい。



「そういえば話は変わりますが、三年生の一般科に転入してくる生徒がいらっしゃるそうです。」

「え~。三年生になって一ヶ月たった今?何で?」

「はい。何でも男爵家の方で庶子だそうです。昨年の秋に引き取って最低限のマナーを学んで春に入園予定でしたが直前に体調を崩されて···。

 今まで平民として生活していて、急に貴族になったんですから精神的なものではないかしら。

 レティお姉さまは同じクラスですから、どのような方か教えてくださいね。」

「もしかしたら教育係になったりして。」

「アンジェ様、それ面倒くさいです。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ