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私はレティ  作者: 喜多蔵子
28/29

28  エピローグ

最終話です。

「で、どうなったの?」

 シア様楽しそう。私も楽しいです。

「はい。たまたま殿下の状況をお知りになるため、お忍びで学園にいらっしゃっていた王妃様が職員室で刺繍をしていた私を師事して下さいました。」

「王妃様は刺繍の名人。教え方も上手で有名ですもの。私も教えて頂きました。

で、その時出来た刺繍は?見せて見せて。」

可愛い可愛い可愛い可愛い、もうひとつ可愛い。でも、心を鬼にします。

「駄目です。これは今までで一番特別出来が良かったので、もう箱に入れてリボンもしたから駄目なんです。」

そんな瞳で見ちゃ駄目。




「平和だな。」

「そうですね、アンジェお姉様」

 本日のお茶会は郊外のシア様の別荘。

 あの日、メアリー嬢の嘘は白日の下にさらされました。



 ルドルフ様は甘いマスクのいい男でしたが、元々ロード侯爵家の四男坊。そう爵位を継げない四男坊。婚約者のエリノア様はストーン伯爵家の一人娘。いずれ入婿として伯爵家を継ぐことになっていたルドルフ様は今回の件で婚約破棄、未来の伯爵の地位を失ったのです。

 ルドルフ様は女性に騙されたというレッテルを張られ、元々お勉強も得意ではないので官吏の道もなく、多分余生はロード侯爵家の土地の何処かでひっそり暮らす·····でしょうか。

 余談ですが、今学園人気ナンバーワンはエリノア様です。なんたってエリノア様の夫はもれなく伯爵になれるんですもの。学園には爵位を継げない次男坊、三男坊沢山いますものね。



 ギルバート様はディアス侯爵家の次男で脳筋。王立騎士団に入り、経験を積んで騎士爵を叙勲っと考えていましたが、元婚約者であるクローディア様のお父上アロニエ伯爵は王立騎士団の騎士団長。大変優秀な方で慕う部下も多く、何より娘大好き人間。

 騙されたっと言うのは結構なレッテルなんです。王立騎士団は平時は国の治安を守る仕事。簡単に騙される人を職務に就かせて、真面目な一般人が泣きを見たらたまったもんじゃない。また王都には近衛騎士団もあります。でも、簡単に騙された人を入団させて、王族に何かあったらっと考えたら王立騎士団も近衛騎士団も事実上入団不可能。結果一番過酷ででも誰でも受け入れる北の国境警備にあたる辺境騎士団に入団されるそうです。剣の才能はあるんですから、うまく頑張ればまた王都に戻れるかもしれませんね。



 レナード様はストール伯爵家の嫡男。爵位を継ぐ人間です。でも、ストール伯爵家の領地は王都近郊ですが狭く特に産業もないので、代々官吏の仕事をして生計を保っています。その為本人も勤勉で、向上心も強く、お父上のストール伯爵にいたっては宰相補佐官として名を馳せ優秀な方として有名です。

 本人は後宮官吏を目指していたみたいですが、後宮官吏の取締官長が元婚約者のマリアンヌ様のお父上であるルーファス子爵。きっとストール伯爵は息子の将来を考えてこの婚約を決めたのでしょうが残念です。

 また図書館の事件について虚偽の申請をしたのもまずかった。理事長がご立腹です。その為父親のコネを使って王宮の官吏の仕事をすることも難しく···どうやって生きて行くのでしょう。



 他の信者の皆様もいろいろあったみたいです。婚約破棄されたり、婚約継続だけど·····。



 メアリー嬢は退学処分です。

 まず中央階段。現実的に上から下まで落ちてかすり傷。あり得ないとのことです。

 更に突き落とされた。その場にいない人間に。どうあっても嘘でしかない。

 更に更に偽造証拠用に、私よりも、私よりも、私よりも上手な刺繍入りハンカチを準備。用意周到すぎる。

 ほかにも言い出したらきりがないのだが。

 注意は罵倒。指導は悪口。

 参加したこともないお茶会で服を汚されるなどと言う、荒唐無稽な嘘の証言に自作自演。

 学園内のことと言えども、生徒全員に迷惑をかける非常識人物。

 何人もの男性を騙す魔性の女。

 外出先では殿下のお命を危険にさらす要注意人物。

 貴族ではなくなり、平民に戻ったそうです。その為かキャッスル男爵家にお咎めはありません。しかし今後肩身が狭くなるでしょう。

 貴族ではなくなったメアリー嬢。多分一番大丈夫でしょう。(悔しいけど)刺繍も得意みたいですし、(言いたくはないが)可愛いし、きっと(次の獲物を見つけて)強かに生きて行くのでしょう。









 最後に殿下はどうなったかというと、ここにいます。このお茶会に参加しています。

 元々殿下はメアリー嬢に恋愛感情はなく『虐められている可哀想な子』と思い保護していたそうです。確かに殿下とのやましい噂はなかった。ただそこにいただけ。

 殿下はシア様大好き人間。でも、病気療養中の為なかなか会えず、シア様も調子がいい時もあったのに『ちゃんとおしゃれした姿以外恥ずかしくてやだ』という可愛いらしい我が儘を言った為、実際お互いが逢えたのは本当に数回のみ。手紙のやり取りでお二人共愛を育んでいたそうです。

 でも、学園に入り勉学に励む為手紙は減り、更に三年生になって私がクリス様やアンジェ様と一緒にいる姿を見て(それまでは一応身分差があるので表向いては挨拶のみ)、シア様も学園に通いだしたと誤解し、手紙を辞め、挨拶にくるのを一日千秋の思いで待っていたそうです。

 待ちすぎです。

 シア様も手紙が来ないことを心配すればいいのに、私達が遊びに幾度に学園のことを話すから、手紙が来ないことも、手紙を出すことも忘れてしまって。なんだかなぁ。

 見事なすれ違い。

 殿下は子供の頃からのんびり、おっとりした方だったらしく、これでは王族として生きて行くのは大変だと思った国王陛下がメイフィールド公爵に相談し、公爵の一人娘のシア様との婚約が成立したそうです。つまり公爵家に殿下が入婿し公爵位を継ぐ。私も殿下が王族に残るのは国の行く末を考えると心配なので賛成です。

 今、シア様、アンジェ様、クリス様、私、そして殿下。不思議なお茶会の真っ最中です。


 そう言えばあの日のレナード様のことで気になることがひとつ。

「レナード様はなんでシア様が王家に嫁ぐって思ったのかしら?」

 アンジェ様はバッサリ。

「馬鹿だからじゃない。」

 レナード様って本当に頭良かったのかしら?



















 あとひとつ気になることがあった。

「殿下、フィリップ様のことご存知でしたか?」

「王都のメイフィールド邸で会ったことあるよ。公爵がシアに届ける荷物を渡していたから、僕も手紙をお願いしたんだ。シアに会えるなんて羨ましいなぁって思ったから覚えていたんだ。」

 記憶力はいいんですね。




 なら、何故、私とシア様をまちがえた。


本編終了です。次は登場人物紹介です。

大きなざまぁはありませんがしょせん学園の中でのこと。こんなもんで許して下さい。


余談ですが、王妃様ご指導のハンカチはフィリップ様へのプレゼントです。


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