25 アンジェ様頑張る
「さて、殿下とのお話しも終わったことだし、他の(信者の)方々は納得していないようなので、続きでもしましょうか?」
アンジェ様が臨戦態勢に入りました。
あ、殿下は邪魔なのでクリス様の横の席に座って貰って、そこに控えている侍従の方、殿下にお飲み物の準備をお願いします。クリス様、殿下のお相手宜しくお願い致します。
レナード様、ルドルフ様、ギルバート様は息を吹き返したように我に返り、アンジェ様を睨み始めました。
信者は復活できていません。
「例え、婚約者じゃないとしても、メアリーが彼女、····、えっと、レティシア·ロックに階段から突き落とされたのは事実だ。彼女のハンカチが階段の上に落ちていたのがその証拠。」
私を人差し指で差しながらレナード様が睨んでいます。まさか内心『決まった』とか思っていないよね。
ルドルフ様が持っているハンカチが気になります。ハンカチをじっと見ます。あ、ルドルフ様が近くに持ってきて見せてくれました。ありがとうございます。うん、間違いない。
「これ、私のではありません。」
「嘘を着くのか?」
「ハンカチの刺繍が違います。私はRRです。花の刺繍も違いますし·······。」
信者がハンカチを見ます。復活しましたね。
「本当だ。RMだ。」
今頃気付くな。
「自分のハンカチにイニシャルと自分の家の花を刺繍するのは淑女の習わしです。ロック家の花は黄色の菫です。」
そう言って私は自分のハンカチを信者の方々にお見せしました。
特別出血大サービスですよ。
「たしかに違う。犯人の落とした刺繍はRMで花は向日葵だ。」
「彼女のハンカチにはRRに黄色いボールの刺繍がされている。」
「本当だ。向日葵じゃない。ボールの刺繍だ。」
うるさい。黄色い菫だ。誰がボールだ。
急にルドルフ様が笑いだした。
「見ろ。やはり君が犯人だ。」
こら、人の話を聞け。お前の脳は空っぽか。
「君は世話になったレティシア·メイフィールド公爵令嬢を慕っていた。だからメアリーの可憐さ優しさに嫉妬し、メアリーと殿下が仲良くなっていくのが我慢ならなかった。
忠実な僕としてどうすればいいか考え、そして、メアリーさえいなくなればと思い、階段から突き落とした。
そして、これは公爵令嬢への忠義故の犯行であることを世間に公表するため、公爵令嬢のハンカチを階段の上に置いていったんだ。」
一気に捲し立てたルドルフ様は肩で息をしながら、これでもかっという風に目を大きくひらいての私を睨んだ。
「レティが犯行を公表するつもりなら、わざわざハンカチを落とさず、その場に残って『私がやりました』と言えばいい。お前馬鹿か?」
アンジェ様ありがとうございます。
「なら、メアリーの可憐さ優しさに嫉妬し、メアリーさえいなくなれば私が恋人に成れると思って、そしてあわよくば公爵令嬢を犯人に仕立てることが出来れば、自分こそが婚約者になれると思って······。」
ルドルフ様頑張ります。でも、顔色が悪いです。大丈夫ですか?
「学園にシアが来てないのを知っているのに、ハンカチを落としてシアを犯人?
無理ありすぎ。」
その通り。アンジェ様、正論すぎて涙が出てきます。
更にルドルフ様が何かにつけて言おうとしたのでアンジェ様が一瞬私を見て
『とどめさす』『宜しくお願いします』
目と目の合図。素敵。
「向日葵はメイフィールド公爵家の花。向日葵とRMの刺繍。どうみても犯人は『シア』を意味している。でも、シアは学園にはいない。
普通に考えたら、『シアに濡れ衣をかけたい人間』でも『シアが学園に来ていないことを知らない人間』が犯人じゃないか。
そう言えばお前達全員シアが学園に来ていると思っていたね。」
アンジェ様かっこいい。いざというときに頼りになる人って素敵。
それに比べて、こんな時に紅茶飲んで昼食を注文している殿下。役に立たない。残念過ぎる。
「それにしても、この向日葵の刺繍は大変お上手ですね。」
「そうだろ。だから間違ったんだよ。シアも刺繍が得意だから。で、こちらの黄色いボールは何?」
「菫です。アルフォンスお兄様、それ禁句です。レティお姉さまは刺繍だけは大の大の苦手なんですから。」
クリス様、殿下、聞こえています。泣きますよ。




