24 クリス様頑張る
ざまぁはじまります。
昼食を楽しんでいた食堂は、今や完全に静まりかえっていた。
殿下も四天王も唖然としている。状況が理解できないのだろうか。
クリス様がため息をついて、首を横に振ったあと、殿下の目をみて、哀れな、憐れな生き物を見るような目で、
「アルフォンスお兄様、ここにいる、シアお姉様と同じ黒い髪、黒い瞳の女性は、間違いなくレティシア·ロック男爵令嬢です。」
嗚呼、無情。
アンジェ様、肩が、肩が揺れてます。笑うのを堪えているのはわかりますが、揺れすぎです。もう少し押さえないと殿下に失礼です。
「シアお姉様が、病気療養のため、東部トレシリアン領のロック男爵の領地に居たのはご存じですよね。そこで、お世話になっておりましたロック男爵家のご令嬢が此方にいるレティお姉さまです。その縁でシアお姉様が彼女を私達に紹介して下さいました。
確かに私達はシアお姉様の友人です。だからといって一緒にいる黒い髪黒い瞳の女性がシアお姉様と思うのは安易かと········。」
殿下が私に近付きました。顔が、顔が真正面。近すぎです。最近ソバカスが増えてきているので見ないで下さい。男女の適切な距離ではありません。ユリア先生に報告しなければ。そして、殿下が一言。
「違う。僕のシアじゃない。」
当たり前です。私はフィリップ様の婚約者です。
「じゃあ、僕の所に挨拶にも来なかったのは?」
「レティお姉さまは。男爵令嬢です。アルフォンスお兄様に直接挨拶に行く身分ではありません。」
「シアは学園には通っていない?」
「シアお姉様からお手紙があったと思いますが······。そもそも、科が違います。シアお姉様は特進科です。」
「この前、町で一緒にいた男は?」
「レティお姉さまの婚約者フィリップ·ウォール様です。」
クリス様見事な返し技です。すべて殿下にクリーンヒット。やれば出来る子なんですね。
あ、アルフォンス殿下のお顔が、·······················破顔?
あ、食堂にいる女子が何人か倒れた。あ、男子も倒れた。
「そうか、では僕はシアと別れなくていいってことかな。」
ハニカミながら嬉しそうに言うな。笑顔になるな。また倒れただろう。女子も男子も。
笑顔で人を倒すとはハニカミ王子か。いや、実際王子様か。




