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私はレティ  作者: 喜多蔵子
19/29

19  婚約者とお出かけ

 私の婚約者でありますフィリップ様が学園にお迎えに来てくれました。本日明日は学園がお休みなので、今日はフィリップ様と久しぶりの逢瀬です。

 フィリップ様のご実家ウォール商会は東部トレシリアン領を中心に商売をしております。平民から下位貴族相手の商売です。一応流行をおさえなければいけませんので王都にも店はあります。

 私の父は中位貴族(上位と望まないところが素敵)に嫁いで苦労するより、裕福な商人のほうが穏やかに暮らせるだろうと思い、またフィリップ様のお父上はトレシリアン領一の田舎観光地への商売への更なる足ががりとして、私達の婚約を決めました。一応子供の頃に会い、逢瀬を重ねての婚約です。何度も言います。初恋です。純愛です。


 王都の中を散策(最近の服装流行調査)、お店の中を見て(最近の小物流行調査)、市場を歩いて(美味しい食材調査)から最近平民の間で流行っている喫茶店へ行きました。平民って言いましたが、実際お忍び貴族もいます。フィリップ様、押さえるところが完璧です。予約もばっちり。中庭の奥の席へ案内されました。お忍びには素晴らしくいい席です。(私達はお忍びではありません)

「この紅茶美味しい。どこの地方のものかしら?このパン美味しい。どうしてこんなに柔らかいの?このベーコン最高。豚が有名なのは西のグローリア領よね。でもこの味は違うわ。このチーズも美味しい。北のガーネット領のチーズね。間違いないわ。」

私、幸せ。

「フィリップ様、私、このパンも紅茶もチーズもベーコンもフィリップ様も大好きです。」

気持ちはちゃんと伝えないといけないわ。

「ありがとう。何か食べ物と同列な気がするけど····まぁいっか。」

私達は絶好調です。たくさんお話ししました。


 最後の紅茶のおかわりとケーキを注文するためお店の人を呼ぼうと振り向くと、既にお店の人がいます。仕事が早いなと思っていたら、どうも違うみたいです。フィリップ様に何か話しています。フィリップ様は私を見て、

「レティ、偉い人がお忍びできて、この席を所望しているらしい。」

「まぁ、偉い人相手では勝ち目はありませんね。でも、私ケーキを注文しようと思っていたのだけど、·······どうしましょう。お持ち帰りとか出来るのでしょうか?」

 私も未来の商会夫人。我が儘は言いません。持てる可愛らしい猫を総動員です。

「本来、お持ち帰りのケーキはありませんが特別に準備致します。」

 流石、王都の人気店は対応が違います。しかもサービスです。



 その他の会計を席で済まし、お持ち帰りケーキを頂き、席を立ち喫茶店の出入口扉に向かうと事件です。



 出入口にはギルバート様、ルドルフ様、レナード様、マントで顔を隠しているが多分殿下、そして女優メアリー嬢。ルドルフ様は店員に「いつまで待たす気だ」と怒鳴っています。メアリー嬢は嬉しそうな声で「この店二時間待ちとか当たり前なんです。なのに待たないで入れるなんてすごい。」何とも間の抜けた声。出入口の横には、その二時間待ちの人が並んでいるのに。彼等が睨んでいるのに気付かないのでしょうか。そのうち並んでいるお客さまのひとりが「順番抜かしするな。」またひとり「貴族だって。」更にひとり「貴族なら貴族御用達の店に行け。」声が段々大きくなっていきます。「ここは平民の店だ。」「今までお忍びの貴族も来ていたがちゃんと予約していたぞ。」「ルールを守れ。」

 ここから外に出たくない。巻き込まれたくない。フィリップ様も足を止めて様子を伺っています。私はメアリー嬢と目が会いたくないので、店内に目線を移しました。奥からは見えなかった噴水が見えます。二階席もありました。アンジェ様とロウィーナ先生と理事長と目が合いましいた。手を振っています。私も振り返しました。

 理事長、確かあなた様は前国王陛下だったような気がするのですが、なぜこの店にいるのでしょう···。



 店員が何とか騒ぎを沈静化した瞬間を狙って店を出ることにしました。

 でも、店の外に出る瞬間、殿下と目が合いました。びっくりです。やはり巷に絵姿が出回っている殿下は素顔で外出が出来ず、マントで顔を隠していました。でも、殿下もびっくりしていました。そして、私の横を一緒に歩くフィリップ様を見て更にびっくりしています。何か声をかけようとしていたので、巻き込まれたくない一心で、私達は急ぎ足でその場をあとにしました。







「フィリップ様、殿下に会ったことあります?」

「メイフィールド邸で公爵がシア様に贈るお届け物を選んでいる時に会ったことはあるね。でも、殿下は商人は覚えていないでしょう。」 

「びっくりしていました。」

「なら殿下の記憶力は凄いね。流石王族。」

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