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私はレティ  作者: 喜多蔵子
17/29

17  不愉快な事件ファイルNo.5

 本日もお日柄もよく晴天です。図書館以外は。


 放課後の図書館。そこは本来授業が終わったあと、予習、復習をする場所。または更なる高みへ上るため自分を追い込む場所。数少ない研究者へなるため、上位官吏へなるため。決して、決して男女が交際をする場所ではない。仲のよい男女が肩を寄せあいイチャイチャするところではない。


 図書館の真ん中。誰からも見える位置。隠れてさえいない場所で机の上に本を広げてはいるが、実際、肩を寄せあい、時折、手を握り締め、見つめあい、話す。あ、女性の頬に男性の唇が·······。言わずとわかると思うが、女性はメアリー嬢。男性は地に堕ちた四天王の一人、レナード様。特進科二年生で学園一の天才。お父上は宰相陛下の補佐をなさっておいでで優秀な官僚。ご自身も官吏を目指しておりますが、父親と違って王宮ではなく王族の方々の私的スペース、所謂後宮を統括したいと思っていらっしゃるとか、なんとか。


 流石に図書館の真ん中でイチャイチャしすぎたのでしょうか。一人また一人、真面目に勉強をしていた生徒が図書館を出ていきます。でもここで一人の勇気ある某子爵令息が、立ち上がり、レナード様の元へ。

「ここは勉強をするための場所だ。勉強をしないのなら出ていってくれ。」

「僕ほど勉強も出来ない癖に、僕に注意。君、僕より身分下だよね。僕の家は伯爵家。君は子爵家。立場をわきまえろ。····君のお父上も確か官吏だったね。君の家に厳重に言っとくよ。」

 そして、微笑みながら、メアリー嬢の耳元で何かを話したあと、

「そうだ。せめて、僕より成績が良くなったら、君の話を聞いてあげてもいいよ。僕より成績がよくなったらだけどね。」

っと言ったのです。見事な下衆な悪役ぶり。権力を傘にルールを破るとは。

 顔を真っ赤にした某子爵令息は、拳を握り締め少しうつ向いたあと再び顔を上げ、真っ直ぐ·········殴る。当たらなかったけど。横に避けたレナード様が某子爵令息を殴る。当たらない。

 流石、両人とも官吏希望。フットワークもないのに、目の前にいる人に拳で殴ろうとして、当たらない。

 机は倒れ、本は散乱。殴る、当たらない。殴る、当たらない。繰り返すうちに二人の息はあがりだし、そして、静寂。

 いつの間にか誰か先生を呼びにいったのか、騎士科の先生が二人の間に入り、乱闘を止めさせ、ヴィンセント先生が図書館にいた生徒に状況確認をしはじめていました。

 そしてメアリー嬢、レナード様、某子爵令息は先生と共に別館に連れて行かれました。




 で、なぜ私がここまで詳しいかと言いますと、何と私図書館にいました。算術のことでいろいろお勉強したいことがあり(何せ未来のウォール商会の会長夫人になるので)、クリス様にお願いして財務官吏として働いているお知り合いを、ちょっと、図書館に呼んでもらい特別授業を·····。クリス様もご一緒です。図書館の二階席。一階がよく見渡せる、風通しのよい席で。だから、バッチリ見ちゃいました。頬にキスするところも。きゃっ。

 三席ほど離れた席ではアンジェ様が戦術についての本を理事長と談義していました。だから最初から最後まで全部、全員で見ちゃいました。きゃっ恥ずかしい。ユリア先生がいなくて良かった。


 ちなみになぜ理事長とアンジェ様が戦術談義かと言うと、理事長が王太子だった頃から国王陛下になったあと10年ぐらいは、隣国と戦争をしていた時代があり、その頃は他国の人からは『悪魔』と呼ばれるほど、恐れられていたとか。またアンジェ様のお父上とは戦友だったそうです。その為アンジェ様、ロウィーナ先生は理事長の大のお気に入り。結婚相手は俺を倒した相手にのみ認めるとか言っているそうです。だからアンジェ様には婚約者がいないのではないかと私は思っています。




 

 少ししてロウィーナ先生が二階席に来て、ことの顛末を教えてくださいました。

 レナード様曰く「彼は、真面目に勉強していた僕達に対して図書館から出ていけと一方的に言ってきました。」

 某子爵令息曰く「二人が適切な距離を取らず、神聖な図書館で接吻をしていたからだ。」

 レナード様曰く「嘘をつくのは止めてもらいたい。僕には仮にも婚約者がいる。そんなことするはずないじゃないか。君は勉強で僕に勝てないからって言って、僕の人格を貶めようとするなど、恥を知れ。」

 メアリー嬢曰く「レナード様は私に勉強を教えてくれました。きっと彼(某子爵令息)は男爵家の庶子は勉強なんかしても無駄だって言いたいんですよね(泣く)。ごめんなさいレナード様。私のせいで殴られて。本当にごめんなさい(更に泣く)。」

という状況だそうです。

 

 絶対嘘泣きだな。しかも殴られていない。当たらなかったし。





 翌日。



『レナード·ストール伯爵令息に対して以下の処分を下す。

  規則違反、虚偽の報告により寮内反省室にて二週間の停学処分。

  尚、面会謝絶』


『メアリー·キャッスル男爵令嬢に対して以下の処分を下す。

  規則違反により寮内反省室2にて二週間の停学処分。

  尚、面会謝絶』


『某子爵令息に対して以下の処分を下す。

  規則違反により寮内自室にて三日間の停学処分。』





 レナード·ストール伯爵令息の婚約者マリアンヌ·ルーファス子爵令嬢は、ことの顛末を先生から受け、自室にて処分中の某子爵令息を訪ね、婚約者の態度について代わりに謝罪をしたそうです。婚約者の鏡ですね。

 翌日マリアンヌ様は、学園に来ず、実家に帰ってしまいました。


 

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