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私はレティ  作者: 喜多蔵子
16/29

16  不愉快な事件ファイルNo.4

 本日はお日柄もよく晴天です。ただし、学園の食堂は違います。


 メアリー嬢の手の甲に情熱的なキスをしている男発見。その目は恋する男子の目。地の底に堕ちた学園人気四天王の一人、ギルバート様。騎士科で一番の剣術使いです。

 流石に食堂でたとえ手の甲と言えども婚約者以外の女性にするのはまずいだろうって思い、彼の婚約者クローディア嬢を見ると(というか食堂にいる殆どの人がクローディア嬢を見ている)·····················無。

完全な能面。

無表情。

 手にしていたフォークとナイフをテーブルの上に丁寧におき、立ち上がり、颯爽とギルバート様の元に歩いていき『婚約者がいるにも関わらず、その目の前で他の令嬢と戯れるとはどういうつもりだ。』といい放ちました。

 見えないはずの青白い炎がみえる。格好いい。食堂にいる全ての人が固唾を飲んで見守っている。静かだ。こんな静かな、食堂初めて。

 

「優しいギルバート様にひどい。こんな言い方。」

なんとも可愛らしい間の抜けたメアリー嬢の声。クローディア嬢がメアリー嬢を見ると、

「きゃ、怖い。」

ギルバート様の腕にしがみついて泣きだしました。嘘泣きだな。ギルバート様及び信者の方々はクローディア様を睨み付け、そしてギルバート様は

「睨むな。」

その前にお前が睨むな。

「手の甲にキスをするのはよくあることだろう。何を怒っている。嫉妬するなら場をわきまえろ。」

その前にわきまえた場所でキスをしろ。公衆の面前で理由もなく手の甲にキスをするのは『僕は君が好き』という意味だ。貴族のマナーだろ。

「わかりました。それがギルバート様の本心ですね。よくわかりました。」

静かな、底冷えするような低い声がクローディア様から発せられたあと、騎士らしくはっきりした声で「騒がせてすまない」と食堂にいる他の生徒全員へ謝罪の挨拶をして、食堂を去って行った。




 アンジェ様は怒っていた。クリス様は驚いていた。

「レティお姉さま、『手の甲にキスをする』という行為の意味をギルバート様はご存知ないのでしょうか。もし本当に知らないのでしたら『馬鹿』ですわよね。」

 私はマナー授業の内容を思い出した。

1 騎士が主君にする『忠誠を誓います』

2 王族の女性に対する『忠誠を誓います(一種の礼儀作法)』

3 婚約者(夫)が婚約者(妻)に対する『愛しています』

4 男性が女性に対して『愛しています(所謂告白)』

 メアリー様は主君ではなく、王族でもなく、婚約者でもない。うん、間違いなく4番。愛の告白だ。婚約者のいない男性ならよくあることだね。

「あれでは、婚約破棄を宣言したともとれますね。」

うんうん。うん?

「そう言えば、ギルバート様は王立騎士団に入団希望ですよね。」

「そうです。侯爵家と言えども爵位を継げない次男坊ですからね。その為騎士爵を叙勲したいから王立騎士団を希望しているのです。ギルバート様のお父様のディアス侯爵は王立騎士団所属ですから、経験さえ積めば比較的叙勲しやすかったんですが。」

「クローディアの父親は王立騎士団の団長。クローディアを溺愛していて『我が天使』と家では言っているそうだ。」

「これでは入団できませんね。」

 アンジェ様、人の悪そうな顔で微笑まないでください。怖いです。

 クリス様、いたずらが成功した子供の様な目をしないでください。遊びではないんですよ。



 翌日クローディア様は、学園に来ず、実家に帰ってしまいました。

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