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私はレティ  作者: 喜多蔵子
10/29

10  注意してみた

 「メアリー様、わざわざご足労いただきありがとうございます。」

 正直私は今日のメアリー嬢が怖いです。だって、メアリー嬢はいつもの全ての男性限定の庇護欲をそそる表情ではなく、上位貴族男性限定の屈託のない笑顔でもなく、物凄くブス~~~っとした表情で、でもなぜだろうか見下されているような気分になる雰囲気で待ち合わせ場所で待っていたからです。

「何の用?」

おっと、腕組までしました。声が怖い。


 では、いきますか。

「それでは早速で申し訳ございませんが、貴族の男女交際のマナーについて三点程注意してもよろしいでしょうか。

 まず、未婚の貴族淑女たるもの男性と二人っきりになってはいけません。必ず付添人もしくは侍女、侍従を伴わなくてはいけません。例え相手が婚約者の男性とでも駄目なんです。

 次に男性にむやみやたらに触れるのも駄目です。エスコート時、ダンス時のみです。むやみやたらに触れるのは娼婦と決まっています。

 また、お見舞やお誕生日以外に婚約者のいる男性から贈り物を受け取っても駄目です。受け取った場合は『妾になるのいいわよ』という意味です。勿論メアリー様が将来上位貴族の妾を目指しているのなら特に言うことはありませんが。

 でも、考えて見てください。子供を産まない妾はいずれ捨てられます。例え産んでも爵位は継げません。いずれ妻である女性に虐められ家を追い出され、生活費も渡されず、最後は町の片隅で苦労するのは目に見えています。

 でも、メアリー様が普通に結婚を望んでいるのなら、このままでは駄目です。メアリー様のマナーの評価、学園での人間関係は地に堕ちています。もし結婚できたとしても年寄、ハゲ、デブの三拍子揃った下位貴族の後妻です。

 今なら間に合います。とりあえず婚約者のいる男性には近づかず、婚約者のいない男性とグループ交際を始めませんか。」


 一気に話しました。メアリー嬢は唖然としています。お口が空いています。駄目ですよ。その表情。可愛い顔が台無しです。

「あんた、私の何?うるさいおばさんみたい。」

 今度は私が唖然となりました。····あんたって、下町以外で言われたことない。でも、よくよく考えたら自己紹介していなかった。しまった。

「失礼しました。私、名乗らずに発言していました。ごめんなさい。私、」

と言ったところで、メアリー嬢に発言を遮られてしまいました。

「うるさい。知ってる。あ~あモテナイ女の僻みっていやよね。そんなんだか男にモテナイのよ。醜い。鏡見たことある?話終わった。あたしこれからデートなの。あんたと違って暇じゃないの。」

メアリー嬢は言うことを言って走って去っていきました。


 メアリー嬢、走るのもマナー違反です。





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