ちょっとした揉め事?
('ω')
ギルドを出たアルは二時間もの間を潰す為に行きつけの喫茶店で寛いでいた。
店に入り一番奥のテーブルに座り、注文したコーヒーを飲みながら魔導書を読んでいた。
魔導書には読むと直ぐに使えるが最初に読んだ人のみが覚えられ書いてあった事が消えてしまう物と、本と同じ様に書かれているが上級の魔法である物の二つがあり、アルが読んでいる物は後者の上級の魔法が書かれている魔導書だ。
魔導書本来売られておらず、値段もついていない。
それに現在国が魔導書をかき集めている為市場などに出回ることが無い。
そんな代物を彼が持っている理由は彼が自分で見つけ出したからだ。
魔導書は過去の魔法使いが魔法を残す為に書いた物が多く、極稀にダンジョンに現れる宝箱に入っている物もある。
彼はダンジョンでいくつもの魔導書を手に入れていた。
しかし、そんな値段が付けられていない物を持っていると周囲の視線を引き付けてしまうだろう。
彼はその様な事にならないよう魔導書を普通の本と見た目を同じ様にしていた。
「貴方ちょっといいかしら」
「ん?」
アルは魔導書を読んでいると、突然声をかけられた。
声に反応して顔を上げるとそこには赤く長い髪を靡かせ、髪の色に合わせた赤い服、その上に体の動きを制限しない様に最低限の鎧この場合はプレートを付けた女性が立っていた。
(ほう。中々な魔力を持っているな)
アルは魔導書を読んでいる事から分かる通り魔法が使える。
魔法を使える者の殆どが魔力を感知出来る。
殆どの理由としては稀に読んで覚えられる魔導書を使った者の中にただ使えるだけになる者がいるからだ。
勿論覚えた者はその魔法名を言えば使えるが、その他に魔法は教わらねば使える様にならない。
「何の用だい?」
「私の名前はフォルティナよ。少し話があるから座っても良いかしら」
「ああ、どうぞ」
フォルティナがアルの目の前に座る。
その間にアルは先程まで読んでいた魔導書に栞を挟んでから閉じ、手元に置いた。
フォルティナはそんなアルの読んでいた魔導書を目で追い、置いた所で口を開いた。
「話と言うのは貴方の持っているその魔導書の事なんだけど…」
「譲る気は無いよ」
「っ!そ、そう。でも条件を聞いてからでも良いんじゃない?」
「そうか、では聞こう」
「ええ、条件としてこちらは上級魔法の魔導書を三冊出すわ。どう…」
「断る」
「っな!じゃ、じゃあ五冊!五冊出すわ!」
「もうこの話は終わりにしましょう」
フォルティナの話を一方的に切ったアルはコーヒーを飲んで聞く気は無いと態度で示す。
そんなアルの態度を見たフォルティナは、悔しそうに席を立ち店から出て行った。
(ふぅ、まさかこの本をあんなもので買おうとするだなんて、全く最近魔導書が少なくなったからと言ってこの本と上級魔法が載っている物では価値が全く違うだろうに)
その後アルは何事も無かったかの様に時間になるまで魔導書を読み続けた。