表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
力と引き換えに新たな生活を  作者: シャドウ
2/11

非日常

二話目となります('ω')

 一週間が経ち、アルは森の景色を眺めていた。

 彼はいつも持っている鞄を地面に置き、木の板に付けた紙に絵を描いていた。

 彼の描いている絵は、今彼の前に広がっている景色だった。

 彼の絵には夜が明け、朝日が昇り森を照らす様子が描かれていた。

 しかし、そんな絵とは裏腹に彼の表情は暗かった。



 アルはいつものように街に入り、ギルドへ向かって行った。

 街には外からやって来た人が多くなっており、歩くのが少し困難になっていた。


「おい! てめぇどこに目ぇつけてんだ、ああ⁉」

「あん? てめぇがぶつかって来たんだろうが!」

「あ? やんのか⁉」

「上等だ!」


 外からやって来た人達による喧嘩も起きている状態だ。

 そんな中を人と人の間をするりと抜けて歩いて行く。

 だが、人が集まればその数増える事がある。

 それはスリだ。

 人が増えれば金品を奪って逃げるのが簡単になっていく。

 スリをする泥棒からすれば今の状況は素直に喜ばしいものだ。

 実際に喧嘩を始めた二人を歩きながら見ていた人を狙ってスリを行っている者が何人かいた。

 彼等は喧嘩に意識を向けている人の死角からさっと取って行く。

 殆どの人が財布を盗まれた事に気が付かずに去って行く。


「おい! お前達何をしている!」


 複数の警備兵が騒ぎを聞きつけやって来た。


「ちっ! 警備兵かよ!」

「クソが!」


 喧嘩をしていた男達は警備兵を見つけた途端に逃げ出した。


「逃がすな! 取り押さえろ!」


 隊長らしき男の号令で気付かれずに取り囲んでいた他の兵士が二人を抑え込んだ。


「くそ! 離せよ!」

「俺じゃなくてこいつが全部悪いんだ!」

「なんだと!」


 警備兵に取り押さえられた男達は逃げようと、お互いに罪を押し付けあった。


「黙れ。お前等このまま牢屋にぶち込んでおけ。」

「はっ!」


 隊長の号令に合わせて男達を立たせて連れて行く数人の兵士。


「今回で何回目だ? 最近多すぎだろ」

「そうですね。人数も少ないですから」

「そうだな、もっと人が欲しいんだがどこも人員不足だしな」


 先程の隊長とその隣に立つ男は残った兵士と顔を合わせながら溜息を吐いた。


「人が多くなればその分問題も起きやすいってか」

「そうですね、でもこれが仕事ですから」


 自分より若い、と言っても四、五十歳と、三、四十歳の中年の男なのだからそこまで差が無いが、年下の男に正論を言われ笑みを零した。


「ふっ、そうだな」

「ええ、だから張り切って行きましょう」

「いや、張り切り過ぎて周りに被害を出すなよ」

(たく、こいつはいつも良い事言ったと思ったらこれだからな)


 彼の言葉に呆れつつも、いつもの雰囲気に忙しく感じていた為に緩んでいた気を引き締め直した。


「さて、そんじゃ次の……」

「キャアアア!」


 違う場所に向かおうとしていたのだが、突然女性の悲鳴が聞こえ、それに続き様々な人の悲鳴や、怒声が聞こえてきた。

 聞こえてくる声には兵士を呼べ、と言った言葉が聞こえてきた。


「隊長!」

「ああ、全員直ぐに行くぞ!」


 声が聞こえてからすぐさま声のする方向へ駆け出して行く。

 今までの経験で慣れたのか、かなりの速さで走っているのにも関わらず一度も接触する事無く駆け抜けて行く。


「こうしていると何だか盗賊みたいですね」

「おい、せっかく人が触れなかったのに何で触れて行くんだよ」


 隣を走る先程の男の言葉に心に浅く傷を負いながらも人の間を駆け抜ける。


(ちっ、この方向はさっきの奴等を連行して行ったあいつ等が向かった方向じゃねぇか)


 男は走って出た物とは違う汗、冷や汗を流し走る。


「着いたか!」


 走り出して少しすると、突然人の居ない空間が出来、走って来た全員がその空間に投げ出される様に飛び出した。

 先頭を走っていた隊長格の男と、その隣を走っていた男は直ぐさま様子を確認する為周りを見渡した。


「隊長…」

「ああ、あいつだな」


 彼等が飛び出した所は五人程の男が倒れ、フードを被った人物の首元にナイフを突きつけている男に近くも遠くもない距離を取った人々との中間だった。


「くそ、やっぱりさっきの奴だったか」


 フードを被った人物にナイフを突きつけているのが先程連行された男達の一人だった。

 一緒に連行されていたもう一人は倒れていた。


「どうします、倒れているあいつ等はまだ大丈夫ですけど凄い血の量ですよ」

「ああ、出来れば今直ぐに手当てをしてやりたいな」


 倒れている五人の内四人が警備兵で、残りの一人が一緒に連行された男だ。

 彼等は地面に倒れるだけでなくナイフで切られたのか、血を流して倒れている。

 幸いな事に辺り一面が血で染まっている事は無く、服に滲み出ていたり、体を下手に動かせないように肉を切り裂かれて、痛みに崩れ落ちていた。


「では、回復魔法を使うように命令を?」

「いや、それではいい的だ。あいつの持っているナイフは小さい、投げられて回復役を失うのは厳しい」

「そうですね、了解です」


 男が持っているナイフを見てみると小動物の解体に使う様な小さいナイフであるが、刺さった所によっては人を容易く殺す事の出来る程に鋭かった。

 それを見た隣に立っていた男が、怪我を負った仲間を癒す為に魔法を発動しようとしていた者達を、手を上げ止める。

 彼の動きに合わせ行動を起そうとしていた者達も落ち着きを取り戻す。


「お、おいてめぇら余計な真似をしたらこいつがどうなるか分かってんだろうな!」


 男は突き立てているナイフを兵士に見せつける様に体を動かしながら声を張り上げる。

 その動きに合わせ、フードを被った人物も動く為今にもナイフが刺さりそうになっていた。

 しかし、男がそのような事に気が付くことは無く、牽制するように動くのを辞めようとしない。


「あれはまずいな、頭に血が昇ってやがる」

「ですね。このままじゃ人質が危ないですよ」

「ああ。だが迂闊に動けば……ん? もしかしてあれは……」


 男が動いているのを見ていた隊長は動いた拍子に見えた髪の色に目がいってしまった。


「あの髪の色は、もしかして……」

「隊長どうしました?」

「もしかしたら…おい、怪我人に回復魔法を使え」


 髪の色を見て何かを考え始めた隊長に不思議そうに声を掛ける男だったが、帰って来た言葉は理由では無く、先程止めた回復魔法の使用を促す言葉だった。


「隊長本当に良いんですか? 人質が…」

「大丈夫だ。あの人質が想像の通りならむしろ、あの男に同情するだろう」

「あの人質は誰なんですか?」


 隊長の人質の命を無視した言葉に驚きつつも、部下に指示を出しつつ言葉の理由を問う。


「ああ、おそらくあの人質はこの街の最強冒険者だ」

「⁉」


 若干顔を顰めながら言った隊長の言葉に息を呑んだ。


「てめぇら何してやがる! こいつがどうなっても良いのか‼」


 回復魔法を発動した事に刺激されナイフが食い込み首から少しだが血が流れ落ちた。


「今すぐ辞めねぇと、こいつがどうなっても知らんぞ!」


 大声で怒鳴った男は、首に触れたナイフを少し押し込んだ。

 男の行動に兵士達は動揺するが、それは人質の心配をしているのではなく、男の心配をしている様子だった。


「てめぇら、俺が殺せないと思ってるんだろう。良いぜこいつを殺してやるよ!」

「や、やめろ!」


 兵士達の反応に腹を立てたのかナイフを振り上げて今すぐに殺すと、示す。

 男の行動にその場に居た市民が声を上げるが、その行動は男を満足させ尚且つ彼に決意させる言葉となった。


「誰が辞めるか! このままこいつを殺してやる!」

「キャアアアア!」


 ナイフを振り下ろした男は勿論、その様子を見ていた者達もナイフが刺さって人質が死んでしまう事を疑っていなかった。


(/ω\)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ