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海辺の家  作者: ボン
3/4

甘い生活

マッシモが隣に引っ越してきてから、私は家に帰るのがとにかく楽しみで仕方なかった。

彼が家にいないと、退屈した。


何もする事がない日は、家に住む何人かと皆で、海辺から歩いて5分くらいにある、カフェに「チェス」をしに行ったりした。


そのカフェの店員の女性は、驚くほど背が高く、無愛想だけど、とても一目を引く素敵な人だったので、いつも見とれた。多分身長は180センチ以上あっただろう。

赤っぽい金髪で、いつもロングスカートをはいて、のそのそっと歩く。


絶対あわてたり、急いだりしなそうな仕草だ。多分このカフェのオーナーなのかもしれない。


中古の本が下から天井まで、「壁」という「壁」は全て中古の本が敷き詰められていた。


古びた木のテーブルとイスに座って、いつまでもその中古の本を読んでいてもいい、図書館のようなカフェ。


気に入った本があったら買っても良い。


席は多分15席〜20席くらいあっただろうか。私は暇な時や勉強したい時は一人でそこに行き、チャイティーを飲みながら英語の勉強をした。


人懐っこいオーストラリア人がたまに話しかけてくる。


中のテーブルの2つくらいが、巨大なチェス台になっていた。チェスのこまも巨大。


そこに一緒に住むイタリア人やスウェーデン人の子と行ってチェスで遊んだり、自分たちの将来なんかの話をしたりした。


あんなカフェが日本にもあったら、毎日通いたい・・・海辺のにおいがする古本屋。




週末、隣に住むマッシモは、黒く海で焼いて、体格も悪くはなくムキムキした体で、たまにケーキを焼いてくれた。


生まれて初めて男にケーキを焼いてもらったから驚いて感激した。

彼は週末はいつも家にいた。

皆で海に行こうと窓から誘ってきたり、夜飲みに行く予定をみんなで立てたり。


今思えばなぜ彼は週末ケーキなんか焼いてくれてたのか。


あの頃は「イタリア人の男って本当にドルチェ(甘い)んだなぁ」なんて思っていたけど、

実際の彼は料理もそんなに上手ではないし、私が甘い物が大好きで、甘い物ばかり食べているといつも私をしかった。親でもないくせに。


週末になると彼に「今日はケーキないの?」とあの頃は勇気を出して話しかけていた。

彼と話すのがまだ恥ずかしかった頃だ。


彼がリビングにいた時は、いつも彼の言動が気になってしかたなかった。





彼の念願どうり、うちのベットが一つあいたから、彼が隣からうちに引っ越してきた。

隣にいても、毎日うちのリビングにいたから、特に何も変わらない日々。


ただ土日はいつも彼がお風呂を掃除したりする意外と綺麗好きな人だという事が判明した。


これもまた不思議だった。彼の髪の毛はナチュラルなドレッド。


つまり「髪をとかさないで、あまり洗わないからドレッドになった」髪だ。


初めて聞いた時は彼が私をからかっているんだと思った。


無知は私は彼をあまり知らない頃聞いた。


「年に何回くらい美容室行くの?その髪の毛保つのに。いくらかかるの?」


彼は顔が「はぁ?」と言いたげだった。


「俺は美容室なんて行かないよ。この髪はナチュラルだ。髪の毛をとかすのが面倒臭くて、ある日とかすのをやめてみたんだ。そしたらこうなった。」


彼の事をいつまでも信じないで、他のイタリア人のシェアメイトに聞いてみた。


「マッシモの髪の毛、本人はナチュラルだって言うけど、嘘だよね?美容室でやったんだよね?」


ジャコモという1つ年下のお坊ちゃまが答えた。


「美容室!?彼の髪はただ汚いからああなったんだよ」


・・・・・・・・・


そんな彼が週末はお風呂磨きをするのだ。


人間って一緒に住んでみないと分からない事が山ほどある。


その頃から「他人と家を共有する事の貴重さ」をしみじみ感じ始めた。



人間って面白いんだ。















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