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ミッドウェイ海戦  作者: イプシロン
第1章 珊瑚海での戦訓
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第5話 珊瑚海海戦――錯誤

 5月6日、燃料を消費した両軍はこの日いっぱいを補給に費やすことになる。「レキシントン」「ヨークタウン」が合流した新編第17任務部隊はソロモン諸島の遥か南方で。第五航空戦隊は、3月30日に占領したショートランド泊地において。

 翌5月7日、午前6時30分(以下すべて現地時間)、第17任務部隊はSBDドーントレス10機を索敵に発進たせた。

 わが方もラバウルから陸攻3機、ようやく作戦可能となったツラギから飛行艇4機を偵察に飛び立たせる。肝心の第五航空戦隊から九七式艦上攻撃機、12機が索敵のために放たれたのは午前6時のことである。

 先に敵を見つけたのは日本軍だった。索敵機数、米側10機、日本側19機である。当然といえば当然かもしれない。

 こうして7時30分「翔鶴」隊の偵察機が「敵機動部隊らしきもの発見!」と知らせてきたのだ。

 勇躍、勝利を確信した第五航空戦隊は8時8分、零式戦闘機を護衛にふくむ攻撃隊78機を発艦させる。

 しかし攻撃隊を発進し終えた第五航空戦隊に、別動隊の重巡洋艦「衣笠」から飛び立っていた偵察機が先の報告とは違う位置に「空母をふくむ敵艦隊を発見!」という報告をもたらしたのだ。はたしてどちらの情報が正確なのであろうか?

 結論は9時15分にでた。勇躍くりだしてきた攻撃隊が現地に到着してみると、海上には駆逐艦と油槽船の姿しか認められなかったのだ。つまり先の偵察機からの報告は誤認であり、後の報告がどうやら正確であるようなのだ。しかしそうとは知らぬ攻撃隊は、仕方なく付近の海面に敵空母を求めて捜索を開始したのである。

 日本軍に遅れること45分、米軍は8時15分に敵発見の報をうけ、9時25分、第17任務部隊はF4F戦闘機を護衛にふくむ92機の攻撃隊を発進させる。

 だがこちらにも情報の錯綜があった。攻撃隊は飛行中に寄せられた新たな情報に基づき、目標の変更を指令されたのだ。しかしそれは日本軍の跌を踏むような誤認だったのである。それを知った第17任務部隊は、空母群を捜索せよと再度指令するが時すでに遅かった。

 攻撃隊は第五航空戦隊に正確な情報を送った偵察機を発艦させた「衣笠」をふくむ艦隊に、空母「祥鳳しょうほう」の姿を認めるや、午前11時、むらがるように襲いかかったのだ。

 まず「レキシントン」隊の爆撃機28機が急降下して「祥鳳」の周囲に水柱を林立させが、命中弾はなかった。つづいて「レキシントン」隊の雷撃機と「ヨークタウン」隊の爆撃機が同時に襲いかかった。さすがに「祥鳳」もこれを避けることはできず、爆弾13発、魚雷7本を受け、11時35分、「祥鳳」は海上からその姿を没しさったのである。

 ときを遡ること1時間あまりの午前10時30分、わが方も攻撃を敢行していた。結局空母群を発見できなかった攻撃隊は、手土産とばかりに爆撃機だけ急降下してゆき、駆逐艦「シムス」を轟沈せしめ、給油艦「ネオショー」を航行不能に陥れたのである。

 この日、第五航空戦隊に「敵機動部隊らしきもの発見!」という第一報を発信した「翔鶴」隊の偵察機が「わが触接せるは油槽船の誤り」と報告してきたのは、午前10時35分になってからである。

 戦場とは錯誤の連続であるという。その錯誤を少なくしたもの――情報を正しく制したもの――が勝利を掴むという。

 5月7日午前の闘いは、それを知らしめるに十分だったのである。

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