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ミッドウェイ海戦  作者: イプシロン
第1章 珊瑚海での戦訓
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第3話 任務部隊――タスクフォース

 豊後水道をあとにした第1機動部隊は、対潜哨戒のために第一警戒航行序列へと隊形をかえてゆく。柱島泊地を発ってからずっと、頭上には友軍の偵察機がへばりついていた。念には念をいれて哨戒しようというのである。

 山口は零式水偵がひきつれている、虻のようなエンジン音を耳にしながら黙想に耽っていた。

「真珠湾奇襲以降、国内は戦勝気分に酔いしれている、海軍もまたそうである。新聞など米国なにするものぞ! といった勢いだ。誰一人、現実を見ていないとしか思えない。アメリカは人々が口にするような生易しい相手であろうか? わが方の空母戦術をすぐに取りいれた柔軟性はどうか? 

 2月1日、敵はマーシャル・ギルバート諸島を空襲。2月14日、ウェーク島を空襲。2月20日には攻略なったばかりのラバウルに機動部隊を指しむけてきた。このときは目的を達せず退散したようだが、わが方は護衛戦闘機なしで敵空母に攻撃を加え、出撃した陸攻隊の九割を失う大損害を受けたという。

 3月4日、敵は南鳥島みなみとりじまを空襲。この島が東京府である意味は重要だ。このあと敵はしばらく静かになる。だがそれは燃料弾薬の補給へとハワイに戻っただけのことであろう。案にたがわず4月18日、敵は東京、神奈川、愛知、三重、兵庫を空襲。開戦以来はじめての本土空襲というわけだ。

 こざかしい遊撃ゲリラ戦術に何の意味があるというのだ?

 わが方の損害は軽微であり、かつ敵を撃退しているではないか。だが彼らは学んだのだ。空母の運用法を実地において。やもすれば戦力にものをいわせて、おっとり刀で空襲を繰り返してきたわが方とは違い、必死に戦術を学んだとはいえまいか。

 マーシャル・ギルバート空襲では、艦砲を有する打撃部隊と空母のもつ航空戦力を同時に投入してさえいる。貴重な空母を保全するために一撃離脱に徹し、空母のもつ高速力を最大限に活かそうとしているのではあるまいか……」

 山口が懸念する中核には、常に「レキシントン」「ヨークタウン」「エンタープライズ」「ホーネット」といった空母勢力があった。そしてそれは実地に機動戦術を経験してきた精強な勢力なのである。

 彼の読みは奇しくも的中した。それをまざまざと世界に示してみせたのは、戦史はじまって以来の空母対空母の戦い、見えない敵を長槍という航空機で突きあう珊瑚海海戦だったのである。  

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