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ミッドウェイ海戦  作者: イプシロン
第2章 情報戦
10/40

第10話 暗号

 珊瑚海海戦にしてもミッドウェイ作戦にしても米軍は暗号解読などによって、事前に日本軍の行動や作戦内容を察知していたといわれている。

 ほんとうなのだろうか? 半分は当、半分は否といえるのではあるまいか。人間が作ったシステムであれば人間に解けないものはないと考えておけば間違いはない。

 欧州では各国が躍起になってドイツの開発したエニグマ暗号を解こうと、長年にわたって膨大な労力が費やされていた。解読に携わってから約12年後、ポーランド暗号局がほぼこれの解読に成功する。それまでには暗号書コードブックやエニグマ暗号機自体の極秘入手といった方法もとられている。

 1938年、ドイツはエニグマの改良に着手。ポーランドは一時的に解読不能の状態に陥るが、時局は猶予をゆるさなかった。ドイツのポーランド侵攻(1939年9月1日)は間近だったのだから。

 危急に瀕したポーランドは英仏に暗号解読の成果と解析方を託す。1940年以降、ドイツの改良と連合軍の解析は鎬を削りつづけるが、人海戦術にものをいわせた連合軍の努力によって暗号解読は一定の水準を維持できたといわれている。

 ドイツのエニグマ暗号と比較してわが海軍のD暗号がどれだけ強固であったかと問われれば、自信をもって胸を張れたとはいえない。それでも単語や文字を五桁の数字に変換してそれをさらに五桁の数字の乱数表――暗号書コードブック――で変換するという二重の方法をとっており、それなりの強度を持っていたことは確かだ。しかし最前線ではそうした強固な暗号をわざわざ解析されやすい暗号に再変換――将兵が取り扱いやすいように――して送受信することが日常的だったのである。

 どちらしてもエニグマ暗号に準じて作られた日本の外交電報(パープル暗号)すら米国は解読に成功していたのだから、そこから先は推して知るべきであろう。

 だがしかし暗号を解読することで勝機が開けるのではなく、解読した情報を有効活用したかどうかが問われるのだといえまいか。いつ、どこに、どれくらいの規模で、どの方向から攻撃をかけてくるのか、概略そういったものが掴めればよいのである。またそうして知った敵勢力や作戦期日までに準備が整わないならば、やむなく目標とされる箇所から兵力を撤退させればよいのであり、準備万端迎え撃てるならば期日前に十分な戦力を移動させて待ち伏せすればよいのだ。

 暗号解読はあくまでも二次的な判断材料なのである。その解読された情報をどう取り扱うかに勝敗の分かれ目はあるのだ。

 充分な情報が集まらない限り、無理な作戦に打って出なかった米軍。情報の収集が杜撰ずさんであっても天祐を信じて作戦決行に踏み切った日本軍。女神が微笑もうが微笑まなかろうが、勝者がどちらになるかなど予想のつくことだったといえまいか。

 珊瑚海海戦における米側の行動は、ツラギ島などから兵力を撤収させたのは準備不足による計画的撤退であり、またミッドウェイ作戦時においては準備万端なったうえでの計画的要撃だったのである。

 くわえていえば日本軍は暗号に関してルーズな部分があったことは事実なのである。ドイツでは暗号書の更新は少なくとも1か月に一度であったが、わが海軍のD暗号は半年に一度の更新頻度だったし、開戦から終戦にいたるまで海軍に暗号を改良した痕跡もみあたらないのである。

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