幼馴染とバレンタイン―私の場合―
今日は2月14日、バレンタイン。
幼馴染の彼には毎年チョコレートを上げていたけど、今年のチョコは特別だ。
何せ恋人同士になって初めてのバレンタイン。
昨日の夜に気合を入れてチョコレートケーキを作ったし、すぐに食べられるトリュフチョコも用意してある。
せっかく恋人になったんだから今年のバレンタインをいつもと違ったものにしたい。
どんな風に渡そうかしら?
そんな事を悩んでいると一緒に登校している彼が妙にソワソワして落ち着きがない。
「ねえ、何をそんなにソワソワしているの?」
勿論彼が何で落ち着きがないか答えはわかっている。
いつもは登校時にチョコを渡すから、私からチョコを貰えるのが楽しみなのだろう。
「何か僕に渡すものないかな?」
まだどうやって渡すか思いつかないのでここは誤魔化しておく。
「渡すもの?ん~、特にないかな」
「そ、そう。だったらいいんだけど……」
私からチョコを貰えないと思った彼のガッカリした顔が妙に可愛くて、ついつい誤解を解かないでおいてしまう。
学校に着いても彼の催促は止まらない。
五分休みや昼休みにも催促されたけど、やっぱり誤魔化したままにしておく。
気が付いたらもう家の前まで着いてしまった。
どうしよう。まだどうやって彼にチョコを渡すか思いついていない。
おまけに彼は私が怒っていると勘違いしているみたいで心底困った顔をしている。
そんな彼の表情も可愛くて好きなんだけど、このままじゃ今年のバレンタインはマイナスの意味で特別なものになってしまう。
恋人になって初めてのバレンタインがそんな風になるのは私の望むところではない。
まずは彼にチョコがあることを正直に言おう。
「あ、あの、何で怒っているのかわからないけどゴメンなさい!!」
私が告白しようとした時、突然彼が頭を下げて私に謝罪してきた。
どうしよう。謝るべきのは私の方なのに……
頭を下げる彼を困惑しながら見ていると、チョコを渡す絶好のアイデアが思いついた。
「私は怒ってないよ。今まで意地悪していてゴメンね?」
持っていたトリュフチョコを口に含み、頭を上げた彼にキスをすると同時に口に含んだチョコを彼の口の中に押し込む。
チョコに気付いて満面の笑みを浮かべる彼の顔が何よりも大好きで私まで嬉しくなってしまう。
「君が困っている顔が可愛くてつい意地悪しちゃったの。お詫びにチョコレートの口移し。甘かった?家にバレンタイン用のチョコレートケーキがあるから一緒に食べよう。私が君にチョコレートをあげないはずがないじゃない」
さて、来年はどんな風に渡そうかしら?