表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

黄昏・屍・きわどい運命

 あの時、俺達は電車を乗り継いで、とある田舎に来ていた。俺が海に行きたいと良い、彼女が山に行きたいと言った結果である。そこは海沿いの村だったが、すぐそばには山もあるような理想的な場所だった。

 一日目は山にハイキングに行った。そう言えば聞こえが良いが、実際は宿の主人に付き添って、山菜狩りを手伝わされたのである。俺達が泊まった宿は、老夫婦が趣味で経営しているような所だった。だからこそ、足を引きずりながら山に向かおうとする心優しき老婆を、放ってはおけなかったのだろう。普段は冷たい彼女だが、そういう一面もあるのだ。それに、山菜づくしの夕飯はおいしかったし、変なきのことかもあって面白かったから、結果的には良かったのだが。

 そして翌日は前日が山だったので、勿論海に行った。夫婦が持たせてくれたお弁当を持って、俺達は一日中遊び回った。最初は焼けるから、と言って嫌がっていた彼女だったが、入れてしまえばこちらのもの。子どものようにはしゃぐ姿が、客観的に見てもとても可愛かった。

 そして、粗方海を満喫した後、ふと帰り道に気になる看板を見つけて、俺達は進んでみる事にした。錆ついた看板からかろうじて、こんな文字が見えたからだ。

「展望台」

 そこは、お世辞にも整備されているとは言えない、ただの小高い丘だった。確かに海は近いし、絶景と言えば絶景なのだが。

 しばしそこで閑談をし、空が茜色に染まる頃、彼女は俺に言った。

「私がもし死体になっても、貴方はそれでも、私を愛してくれる?」

 その時は、いつもの笑えない冗談かと思った。彼女はどうも、人と感性がずれているのか、時々こうして毒を交える。それを知っている俺は、意にも介さず笑って答えた。

「それは普通、おばあさんになっても、とか言わないか?」

 彼女はそんな事分かっている、失敬な。と言った様な顔で、それに異を唱える。

「でも、人はいつか死ぬものよ」

「そうだな」

「私が先に死んじゃうかもしれないのよ?」

「そうだな」

「でもそれでも、貴方は私を思い続けてくれる?」

「そうだな」

「もう!」

 ここで、彼女は勢いよく立ち上がって憤慨した。

「またそうやって適当に流すんだから! 聞いてるの?」

 そう、俺に言うつもりだったのだろう。しかし。

「あ」

 俺達が座っていたのは、転落防止の為に備え付けられていた柵の上。

 バランスを崩した彼女は、そのまま真っ逆さまに、海へと飲み込まれていった。

 俺は迷わず、彼女の後を追い、頭から転落した。


 ――あれから数か月後、彼女は今も、俺のそばにいる。

「俺は、君をいつまでも愛してる」

 そう言って毎日、俺は物言わぬ彼女の冷たい唇に、口づけを交わすのであった。


きわどい、というより、あやうい、の方が近い気がします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ