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風・苺・激しい才能

「ほいさ!」

 赤くて艶やかな、みずみずしい果実が宙を舞う。その一瞬のうちに、俺は判断を下していた。

「S、L、3L、2L、M!」

 一陣の風と共に、赤い宝石はふわりと所定の位置に収まった。

『おおー』

「本当、あんたその才能にだけは恵まれたね」

「よし、じゃあ次は七個に挑戦だ! 何個まで行けるかな!?」

「いっえーい」

「ってお前ら調子に乗るなよ!?」

――全く、これだからこの作業は嫌なんだ。

 愚痴をこぼしそうになりつつ、それでも両親のノリに乗ってしまったのは他ならぬ自分自身なので、自戒の意味も込めて、俺は作業に没頭する。もう収穫は終わっていて、後は箱詰めの為に大きさを仕分けるのが俺の仕事だった。もはや機械でやるのが主流になっているのだが、それだと傷が付く危険性があるし何よりコストがかかるので、うちのような小さい農家ではこうして手作業で一つ一つ仕分けする。そして俺は、何故かその能力に無駄に秀でてしまった、という訳なのだ。はぁ。まぁ、さっさと終わらせますかな。

 ……と思ったのに。

「親に向かってお前らとはなんですか、全くもう」

 そのやる気を削ぐのが、このふざけた両親である。

「いや、息子を見せ物にして客寄せパンダにしようとするあんた達もあんた達だよ」

 彼らが言っている事が全面的に正しい事は分かってはいるのだが、反射的に言い返す。

「またそうやってー」

「まぁまぁ母さん、良いじゃないか」

「もう、お父さんが言うなら許しちゃおっかなー」

「それでこそ俺の嫁さんだ」

「……頼むから良い年していちゃつくの止めてくれ」

『えー』

「えー、じゃない」

 そんなくだらない会話で手が止まっていると、作業小屋の外から、またうるさいのが現れた。

「相変わらず、ショートコントしてるのね。仲が良いったらありゃしない」

「これのどこが仲良く見えるんだよ、姉ちゃん」

 そう、親子の会話に割って入ったのは、やっぱり他ならぬ家族だった。

「ほれ(いち)()、口より手を動かす」

「むぅ」

『怒られてやんのー』

「父さんと母さんもよー。二人とも、一慧より進んで無いじゃない」

『はーい』

 本当、良い年して、何で娘に説教されてんだか。半ば呆れつつ、でも親も俺も平等に怒られた事で、少し気分がすっとした。姉ちゃんのそういう所は嫌いでは無かった。……口うるさい所を除けば、だけど。

 両親が大人しく箱詰め作業に集中するようになってから、姉ちゃんは俺にだけ聞こえるよう、小声で言った。

「あんた、なんだかんだいってこうしてる時が一番楽しそうよ」

「……それは否定しない」

 結構結構、とおっさん臭く姉ちゃんは笑い、俺も口元を歪めた。それにつられて、何故か分からないが、父さんと母さんも笑った。真白い花が古ぼけた作業小屋にも咲き乱れる。


 うん、なんだかんだ俺は、苺が好きなのである。


お姉さんの名前は勿論いちごです。

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