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未来・フクロウ・最高の山田くん

「こんにちは、ぼく、山田。じゃなかった、フクロウです」

 客席からは笑いが溢れる。良いぞ、つかみはばっちりだ。手ごたえを得てから、僕は演技を続ける。

「今は真っ暗だけど、心配する事は無いよ。僕はとーっても目が良いんだ。この真ん丸のおめめがあれば、夜だってへっちゃらさ」

 さて、何故こんなおどけたようなフクロウを僕が演じているかと言えば、ここが劇のステージだからである。只今文化祭真っ最中。その出し物で、我がクラスは“ヘンゼルとグレーテル”を演目に選んだ。そして僕は、その中でも特に目立たない、“彼らの道しるべであるパンを食べちゃったフクロウ”を演じる事になったのだ。

 昔から僕は、自分で言うのもなんだがあまり目立たない少年だった。それは例えるならば、劇では草むらはおろか裏方にまわっちゃうぐらいの、目立たなさである。そんな僕であるが、最近になって、具体的には高校生になってから、このままじゃいけないんじゃないかと思い始めた。それは長年、地味な男子同盟を組んでいた親友に彼女が出来たからかもしれないし、同じく同盟を組んでいた他の男子がテニス部に入り、卓球部で培ったスキルなのか知らないがめきめきと才能を発揮し、エースになってちやほやされていたからかもしれない。

 要するに、僕も日陰から表舞台に立ちたくなったのだ。

 しかし、今まで影に徹していた僕に、いきなり大役がつかめるはずも無く。かろうじて手にする事が出来たのが、このフクロウ役だったという訳だ。

「ん? あれは何かな?」

 しかし、だからと言って僕は諦めなかった。ヘンゼルとグレーテルを読み込み、このフクロウの役目とは何かをずっと考え続けた。そして手にした答えが、“無邪気である事”だったのだ。

「わー、パンだ! おいしそう~。しかも僕に食べやすいように、一口サイズにちぎってある~」

 フクロウはきっと、幼い兄妹の事情なんかこれっぽっちも知らない。知らなかったからこそ、あんな残酷な真似が出来たのだ。

「置いてくれた人、ありがとう! いっただっきまーす。……むしゃむしゃむしゃ。あー、おいしかった。ごちそうさまでした」

 だから僕は、一生懸命フクロウを演じた。クラスメイトがひくぐらいキャラを変えて。全身でフクロウになりきったのだ。

「ふわああ、食べたらなんだか眠くなってきたよ……。おうちに帰ってねーよう。おやすみなさーい」

 これで、僕の出番は終わりだ。客席からの割れんばかりの拍手を背に、僕は舞台裏に戻った。短いシーンではあったが、何とか爪痕を残せたはずだ。


 劇が終わり休んでいると、級友達から拍手が巻き起こった。

「山田、よくやったな!」

『山田くん、最高!』

 輝くような素晴らしい未来が、僕を待っている気がした。


山田君が割と気に入ってしまったので、もしかしたら“御伽の無い話”でヘンゼルとグレーテルを書く事があれば、登場するかもしれません。

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