表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

過去・人形・魅惑的なヒロイン

主人公を学生にしたら学園もの?

「えー、では転校生を紹介する」

 新学期が始まって、一カ月くらい経った、そんな中途半端な時に、彼女はやってきた。

「よろしくお願いします」

 その子は、茶色がかった長髪を耳よりも高い位置で二つに結んでいて、いわゆるツインテールという髪型で初登校を果たした。うちのような片田舎の、校則が緩い高校だからこそ、何もとがめられないで済んでいるのだろうが、それにしてもなかなか勇気あるセレクトである。それにもかかわらず、

「わぁ、かわいい」

「すげー美人」

「彼氏はいるんですかー?」

などと呟きや質問が出るほどに、彼女は可愛らしい。目鼻立ちがはっきりとしていて、スタイルもすらりとよく、そう、彼女はまるでお人形さんのようなのであった。

 こんなに可愛い子は今まで見たことがなかったので、僕も他の男子たちと同様、ぽーっと見惚れていたら、

「じゃあ、席は大田の隣な」

なんと彼女は僕の隣の席に着くことになった。

「よろしくね」

 そう微笑みかけられただけで、僕は天にも昇る気持ちだった。


 何を話したわけでもないけれど、美人が隣にいるだけで、テンションはうなぎ上りである。家に帰って夕飯を食べているときも、僕の頬は緩みっぱなしだった。上機嫌のまま風呂に入ろうとすると、何故か母に呼び止められる。

「ねえ、ここにあった人形知らない?」

「人形?」

 指さされたところを見てみると、なるほど、確かにいつも飾られているカントリー調の人形がなくなっているではないか。

「知らない、けど」

「あらそう。どこ行っちゃったのかしらね」

 母はあまり気にしていないらしく、そのまま洗い物をしに台所へ行ってしまったが、僕は引っかかるものを感じた。何故なら、僕の家からいなくなってしまった人形は、ツインテールの女の子だったからである。

「ま、まさか、な……」

 妄想力盛んな僕としては、しかし見過ごせない一致なのであった。


そんなわけで翌日、本人に聞いてみた。すると、ちょいちょい、と人のいないところまで呼び出される。そんな、人目を気にするだなんて、もしかして、本当に……。

「んなわけねーだろ、バーカ」

 耳元で囁かれたのは、そんな心無いセリフ。放心状態の僕をよそに、すたすたと自分の席に戻る彼女。僕も悪かったが、いやはや、女の子って怖い。


 後日、いなくなった人形は棚と壁の隙間から無事発見された。

 発見されたときは、僕が中学校を卒業する時のこと。当然、あの彼女とも以後、会うことはなくなった。事実としては、それだけ。妙に綺麗に一致するという偶然は起こったのに、そこからその彼女と仲良くなるという奇跡は起こらなかった。ただそれだけ。

 そんな昔話を友達に話したら、見事に不思議ちゃん認定された。謎の高校デビューを果たしてしまった僕だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ