白色・笛・先例のない脇役
邪道ファンタジーだそうです。リハビリぱーと2です。
こんにちは。笛です。
……お願いします、ひかないでください。言いたいことは分かります。笛が喋るわけないとか、そもそもなんで突然笛が出てくるのか、とか。違うんです。いえ、違わないんですけど、違うんです。ほんの数分、一分二分でいいんです。僕の話を、聞いてください。
僕はとある田舎町の、いたって普通の職人の手によって作られました。というと、由緒正しいようにも聞こえますが、その実、趣味で木工細工をしている店の主人が気まぐれに作ったもので、だから綺麗な音なんて鳴りません。音階はありません。ただ風のような、ぴゅーぴゅーという音がするだけなのです。
でも、そんな僕でも、ビックチャンスが訪れました。
なんと、あの極悪非道、失礼、間違えました。勇猛果敢にチンピラを片っ端から対峙するヤクザ、いえ勇者一向のお供をさせていただけることになったのです。
……店の主人が酔っぱらって言った、
「この笛、なんとね、悪魔祓いの力があるんだよ! どんな魔王でも倒せるんだよ!」
という言葉によって。真に受ける方も真に受ける方です。突っ込みどころ満載です。なんでただのブナの木にそんな力があると思っているんですか。しかも売るときに、
「なんてったって、霊験あらたかな白樺の木だからね!」
とか言いやがって。だからブナだっつうの。あんたが白く塗ったんじゃねえか。っていうか白樺に霊験あらたかとかあんのかよ初耳だよ。そもそもなんでそんなふれこみでヤクザに売れるんだよ。ヤクザが悪魔怖がってどうするんだ。どっちかってーと、怖いのは閻魔様じゃねえのかよ。しかも魔王は悪魔じゃねえよ!
……ふう。失敬。つい興奮して、言葉遣いが乱れてしまいました。
けれども、そんな不運な僕ですが、仲間もいます。紹介しますね。
まずは銀色さん。ピカピカしていて綺麗です。“俺に触ると怪我するぜ”が口癖です。本当によくきれます。
二人目、黒色さん。この人は渋いです。吸い込まれそうなくらい真っ黒です。普段は冷たいですが、たまに火傷するくらい熱くなって、煙の臭いをさせています。
三人目、白色さん。サラサラで真っ白です。この方が一番人気者で、皆さん大金を払って、白色さんを取り合っています。でもその割には、普段はひっそりと隠れています。箱入り娘のようです。
そんな粋でいなせな仲間と共に、今日は最初のお仕事です。緊張します。
「野郎ども、行くぞ!」
頭、じゃない、勇者様がパーティーに声をかけます。おそろいのユニフォームをきた仲間たちは、一斉に声を張り上げました。
『やきそばいかがっすかー!』
僕の初仕事は、客引きでした。