表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

幻夢抄録―目覚め―帰還

無事、故郷の村に到着した二人。

二人は、暫しの休息をとった…

異界が舞台の、壮大スペクタクル。

「瑪瑙ってば、どこまで行くの?」

二人は、村はずれの、畑の脇を歩いていた。

「俺ン家、もう、村に戻ったんだし、寝る場所が必要だろ?」

「え?」

氷魚は、首を傾げた。

「ほら、ここだ。二人で棲むには、ちとキツイかもしれんが」

「え…ここ」

そこには、石造りの、一戸建てが建っていた。

「こいよ、氷魚…ひとまず、休もうぜ」

「うん。あっ!土足ッ、靴脱ぐから待って…」

「そんなん、後でいいよ」

扉を閉めると、言うよりも早く瑪瑙は、氷魚を抱き寄せて、居間に据えていた、ながいすに座った。

「長旅、ご苦労さん」

瑪瑙は、氷魚を、膝の上に座らせて抱き締めた。

「瑪瑙…苦しいわ」

腕の中で、氷魚は、じたばたともがく。

「離さない」

「や―‐んっ」

氷魚が、もがけば、もがく程に、腕は締まっていく。

「けほっ…けほ!」

「悪ぃ、やりすぎた…平気か?」

「口きいてやんないものっ」

つん、とそっぽを向く氷魚。その頭を、瑪瑙はくしゃくしゃとかき混ぜた。

「なにすンのよバカぁ―‐っ!」

瑪瑙の手を叩き落とし、氷魚は、瑪瑙を追いかける。

子猫のようにじゃれ合い、いつの間にか、どちらからともなく、笑い出していた。

「きいてンだろ、口…」

面白そうに、瑪瑙は笑う。

「いじわる…」

「もっと、してやるか?」

「いらないわよっ、もう…」

「もう?」

「子供みたい…」

「悪かったよ、ごめん」

「ん〜、どうしよっかなぁ」

「許せ」

瑪瑙は、こつん、と額と額を合わせて言った。

返事の代わりに、氷魚は、瑪瑙の胸を、拳で軽く叩く。

「散歩してくる」

「俺も行く、いいか?」

「うん」


 畑の側を、村の方へ歩いていく途中に、二人の側を、子供が三人、笑い合いながら走っていく。

「ねえ、瑪瑙」

「ん?」

「ありがとね?あたしを、ここまで連れてきてくれて」

ふわり、と柔らかく笑う彼女に、瑪瑙は一瞬、胸の高鳴りを覚えた。

「お、おう」

風が渡り、彼女の鮮やかな赤い髪を、一頻りなびかせていく。

両腕を広げて、遊ぶ彼女の姿は、まるで、風のようで、いや、風そのものの様に思えて、瑪瑙は、目を見はる。

その場所から、動くことができなかった、瑪瑙は、その時初めて『怖い』と思った。

消えてしまう、なぜかそう思った時、氷魚を、きつく抱き締めていた。

「やだ、どうしたの?怖い顔して」

「どこにも、行くな…」

「ヘンな瑪瑙、行くって、どこに?あたし、まだ右も左も分からないのよ?」

「あのまま、飛んでいきそうだった…」

「え、あたしが?」

不思議そうに首を傾げ、氷魚は笑った。

「もういいよ、なんでもねぇ」

そっと、彼女を放してやる。

「やっぱりヘンなの、ほらほら、早く行こうよ」

「ん…」

無邪気に笑う彼女に、言いしれぬ不安を感じるのは、なぜだろうか?

ひどい、胸騒ぎがする…











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ